今、書けている内容はここまでです。
千佳が色々と掻き回してくれるかもしれませんが、ここから先はいつになるでしょう(悲



 冬の冷気が窓の隙間から漂ってくる。彼女の華奢な手で白いカーテンを閉めた春斗は、枕元に置いていた千佳のスマートフォンが光った事に気づいた。ベッドに寝転び手に取ると、【伊野崎 春斗とお友達になりました】というSNSのメッセージが届いていた。

「あ、俺のスマホを触ったんだ。まあ……触るよな。俺も今から千佳ちゃんのスマホを触ろうとしていたところだし」

 あの衝撃的なオナニーの後、十分ほどで落ち着いた春斗は彼女に成りすましながら両親と共に夕食を取り、風呂も入り終えていた。

 それからは部屋にあるクローゼット開き、彼女がいつも着ている私服を見たり、タンスに仕舞われていた高校指定のジャージや体操服、そして大量にあるカラフルな下着などを拝見した。とある女子高校生の部屋という感じで、強烈に興奮する事はなかったが、幽体では体験できないリアルな状況が新鮮に思えた。

 彼女の両親はかなり若そうだった。おそらく、まだ三十代後半という年齢ではないだろうか。共働きしているようで、父親はサラリーマンっぽく、母親はパートをしているようだった。必要最低限の事しか分からないので、両親の名前すら知らない。だから彼女が普段から使っているパパとママで通した。別に今夜くらい名前が分からなくても困らないので、いちいち確認する気にならなかったのだ。

 それよりも一番気になったのは、彼女が夕食後に薬を飲む必要があった事だ。何かの病気に罹っているのかもしれないと思い、記憶を覗き見ようとしたが見る事が出来なかった。そもそも、彼女の魂が不在であるため、記憶を覗くという概念すら無いのではと感じるが、実際には全ての事を脳が記憶しており、その脳が持つ情報を魂が制御しているだけでは……と思った。こうして魂の存在で他人の肉体に憑依しても、自分の脳と魂は何らかの形で繋がっており、たとえ肉体から離れたとしても、魂が脳の情報を自由に引き出したり隠したりできるのではないか――。

 だから魂になったとしても、春斗が春斗としての人格を保てているのではないのかと。そして肉体が死ぬと魂と肉体の繋がりが切れ、残った魂は自我を無くしてしまうのかもしれない。

 いや、それなら浮遊霊は全て自我を無くしているはずだけど、テレビなんかじゃ誰々の霊が……なんて言っているから自我が崩壊するわけでもないか――。

 そんな事も考えたが、結局のところは自分の体験が真実であるという事しか分からない。

 ややこしい事はさておき、彼女が飲んでいる薬の名前から病名が分かるかと思い、調べようとしたところにSNSから友達登録の通知が来たのであった。

 アプリを開いてメッセージを見ると、【春斗さん、もう夕食を食べましたか?】という内容だった。

 彼女の指で、【食べ終わった】と返信すると、すぐにテレビ電話が掛かってきた。画面に映る自分の顔に向かって、「何だ?」と問い掛けた。

「春斗さん、夕食を済ませた後に薬を飲みました?」

「ああ、飲んだよ。知らなかったから母親にちゃんと飲めって言われた。あの薬は一体、何だよ」

「あれ、心臓の病に関係する薬なんです」

「えっ? 心臓?」

「はい。私、心臓が弱くて食後に薬を飲んでいるんです」

「……そうだったのか。それってあまり運動とかできないタイプのやつか?」

「そうですね。薬が効いている間は大丈夫ですけど、効き目が弱くなっている時に運動すると胸が痛くなったり、息苦しくなったりします」

「あっ……そういう事か」

「だから私の体でオナニーするのは、薬を飲んでから寝る前くらいまでがいいですよ。じゃないとかなりツラいです。私は中学生の時、薬が切れた状態でオナニーをして病院に運ばれちゃいました」

 その様子が手に取るように分かる。

「……あのさ。そういう事は最初に言っておいてもらわないと。知らなかったし、記憶を覗こうと思っても見れないしさ」

「ごめんなさい。プライベートな事は全て隠していました。でもよく考えたら伝えておかなければならないと思って電話したんです。でも……そういう言い方をするって事は、夕食の前にしちゃったんですか?」

「するに決まってるだろっ。由香利さんの体以外に初めて憑依できたんだから。もう……かなりヤバかったよ。胸が痛くて締め付けられる感じがするし、息も苦しかったし」

「ごめんなさい。でも、病気に関してはそれ以外、隠していませんので」

「じゃあ、今からオナニーしても問題ないって事か?」

「はい。大丈夫だと思います」

「そ、そっか……。で、そっちはどうなんだ? うまくやってるのか?」

「はい。全く問題ないですよ。春斗さんとしてご両親にも接していますし。それより……春斗さんってすごくエッチだったんですね。見ましたよ、スマホとパソコンに保存されていた義姉……由香利さんの映像を」

 その言葉に、彼は千佳の眉を歪めた。

「はっ? 見たって全部?」

「はい。その映像を見ながら、春斗さんの体でオナニーしました。もう……すごく興奮して。こんな世界って漫画やドラマだけだと思っていましたけど、現実にあったんですね。何か大人の世界ってすごいなって思いました」

「ちょっと待てよ。何で勝手に見たんだよっ!」

 強い口調で訴えると、「約束した通りですよ。不必要にタンスや引き出しは開けていません。でも、スマホやパソコンを見ちゃいけないって言われませんでした」と答えてきた。そりゃこっちも彼女のスマホを開いて薬を調べようとしたけど、大事な部分は見ないでおこうと思ったし、見てしまっても知らぬふりをするつもりだったのに――。

 まさかそんなプライベートの核心的なところまで見られ、堂々と話されるとは思ってもみなかった春斗は、苛立ちを隠せなかった。

「だ、だからってそこは思い切りプライベートな場所じゃないか!」

「でも、仮にスマホとか見なくても、春斗さんの魂が強く拒否していなければ見れてしまうんです」

「見れる? 俺の記憶を……全部なのか?」

「春斗さんの魂が拒否していないなら……。例えば由香利さんには見られたくなくても、他人に見られる事をそれ程、気にしてないなら見れると思います。その……相思相愛じゃないですけど……普通の記憶として」

 その言葉に表情が強張った。要は、今の状態だと彼女には何も隠せないという事だ。いや、隠せるのかもしれないが、どうすれば出来るのか分からない――と言うより、現時点では遅すぎだ。

 とんだ失敗を犯してしまった。自分の全てを人質に取られたのだ。彼女に逆らえば、必要な情報を春斗の脳から自由に引き出し、家族や茂……そして由香利に全てバラすぞと言われているような感覚に陥った。

「おいっ! お前は何がしたいんだ? 俺の秘密を全部見て、その情報で俺を脅そうとしているのか?」

 瞬間的に怒りが込み上げた春斗は、思わず乱暴な言葉を口にした。

「えっ! えっ……。ちょ、ちょっと待ってください春斗さんっ。私、別に春斗さんの事を知ったからって、ご迷惑を掛ける様な事は考えていませんっ」

 春斗の怒りが千佳の鼓動を高ぶらせ、更に彼女が見ているスマートフォンの画面に険しい表情となって映し出されていた。こんな表情、自分でも見せた事がないと思った千佳は、必死に弁解した。

「し、信じてください! 私、同じ事が出来る春斗さんと親しくなりたいだけなんです。私、こんなに話が出来る男性が初めてで……ごめんなさい。ああ……こんなの……なんで……」

 スマートフォンがベッドに置かれたようで、見慣れた天井が映っていた。そしてスピーカーから男のすすり泣く声が聞こえた。彼女の言っている事が本当なのか、それとも演技をしているのかは分からない。彼女の様子を伺いながら、何度か深く呼吸をして気持ちを整えた春斗は、「あのさ。かなり不公平感があるんだよ。俺の事は全部筒抜けだけど、千佳ちゃんの事は制限されてるだろ。自分が言っている事を信じてほしいなら、対等であってほしいんだけど。それって当たり前の事じゃないか?」と、天井が映るスマホに話し掛けた。

 ほんの少しすると、涙でくしゃくしゃになった春斗の顔がスマートフォンの画面に映し出された。

「……ごめんなさい。春斗さんと出会えた事、すごく嬉しかった半面、同じ能力を持っている春斗さんが怖かったんです。だって私は誰にでも憑依出来るのに、由香利さんにしか憑依出来ないって言うのが本当かどうか分からなかったし、まだ春斗さんがどんな人か分からない状態で私の全てを委ねるには抵抗がありました。もし、春斗さんが悪い人で、私よりもすごい能力を隠していて、私の体を乗っ取ったまま成りすまされて……両親や友達に酷い事をされたら……。その状態でまた私の体に戻されたら……。春斗さん、大人の男性だから子供の私なんかよりも色々考えているかもしれないって。そんな事を考え始めたら急に怖くなって。本当は学校で春斗さんの幽体を見るまでは私の情報も全部渡そうと思ったんですけど、男の人の幽体を見たら臆病になってしまって。それでも会いに来てくれて嬉しいという気持ちが強かったので、私の体に入れるか試してもらいました。学校ではあんな風に話していましたけど、すごく……迷いました。だからもう少し春斗さんを知ってから……そう思ってしまったんです」

「……なんだよそれ。その言葉、そっくり返すよ。俺の見られたくないプライベートを全部見られている状態で、お前が俺の親や由香利さんに話さないって保証があるのか? お前が俺の事を信用出来ないって思ってる時点で、俺もお前が信用出来ないんだよっ。なのに何で俺だけ全部晒されなきゃならないんだっ! 今だって、俺に成りすまして母親に由香里さんとの事を話そうと思ったら話せるんだろっ。そんな事してみろっ。俺はお前を絶対に許さないからな。この体で好き放題してやるよっ!」

 ――そう言った瞬間、魂の片割れが由香利の肉体に憑依していた時の事を思い出した。あの時、魂の片割れが由香利に成りすまして春斗に言った事。由香利が事実を知ったら感じていたであろう、勝手に体を操られ、プライベートを須らく覗かれた腹立たしい感覚。そして犯罪者呼ばわりされた、あの思い出したくもない出来事。それを今、春斗自身が逆の立場で体験しているのだ。

「あ……お、俺……」

「そう……ですよね。きっと私も春斗さんの立場だったら、同じ事を思います。ごめんなさい。今から戻ります。もう……春斗さんには会わないようにします。本当にごめんなさい……」

「ち、千佳ちゃん。ちょっと待ってよ。ちゃんと話をしようっ」

 テレビ電話が切れた――。

 直に春斗の肉体から抜け出た千佳の幽体が戻ってくるだろう。

「お、俺……。また最低な事を……。相手はまだ高校生の女の子なのに、あんなに泣かせるなんて……」

 由香利の肉体を弄んでいた事を見られ、これまで築いてきた彼女との関係を裂かれるかもしれない――。 

 その気持ちが先走ってしまった。今はそこまで思わないが、あの時は由香利の肉体が持つ快感を貪り、彼女を自分のモノにしたいという欲望があった。思えば最低な行為だ。

 そして芦川 千佳。大人の男に……しかもまだ殆ど知らない相手に、自分の全てを曝け出すなんて出来るはずが無い。普通なら肉体を交換するだけでも考えられない行為だが、それでも彼女が自分から入れ替わる話を持ち出したのは、それだけ春斗と親しくなりたいと思ったからに違いない。

 彼女は小さいころから能力について友達に話してしまい、気持ち悪がられて上手く友達を作れなかった。そして虐められたと言っていた。子供だから得意げに言いたいだろうし、周囲の人も興味を持ってくれると思ってしまったのだろう。その気持ちは、同じ能力を持つ春斗にも良く分かった。

 そんな辛い思いを繰り返す事で、能力については話す事を止め、ずっと隠し続けてきたのだ。そんな負の経験を積み重ねる事で、臆病になった彼女にとっては春斗を心から信用、そして信頼するために時間が必要だったのだろう。

 こんな能力を持っていなければ、普通の女の子として過ごしていたはずなのに――。

 彼女は性的な理由で他人に憑依すると言っていたが、本当は荒んでゆく気持ちを紛らわせるための行為だったのかもしれない。

 春斗にとってはプラスにしか思わない憑依能力だが、幼い頃からこの能力と付き合ってきた千佳にとってはマイナスの能力――この誰にもまともに話せない秘密を、春斗には話してくれていたのだ。

「うわ……マジで俺、最悪な男だ。クズだよな……」

 仰向けにベッドに寝転んだ彼は、千佳の目を通して天井を眺めた。

「謝らなきゃ。上手く説明できるか分からないけど……」

 そう思っていると、千佳の肉体にもう一つの魂が入ってきた感じがした。彼女の……千佳の魂が帰ってきたのだ。

「あっ……。ち、千佳ちゃん」

 彼女の魂が肉体に接続されたとたん、大量の涙が溢れ出し、脈拍が上がった。歯を食いしばる千佳から嗚咽の声が漏れる。

(ご、ごめん。俺の方が自分の事しか考えてなかったよ。俺は幽体離脱出来る事を軽く考えていたけど、千佳ちゃんは小さい頃から出来ていたから、色々な苦労があったんだな)

 敷布団を握りしめた千佳は、体を丸めて枕に顔を押し付けた。「ううっ……。はぁ、ううっ」と小さく我慢して泣いているようだった。

(ねえ千佳ちゃん。上手く言葉で伝えられないから、俺の魂を直接見てくれないか。千佳ちゃんの魂に取り込んで。きっと魂同士で触れ合った方が分かると思うんだ。今、言える事は……酷い言葉で傷つけてごめん。俺、千佳ちゃんの事を信頼するよっ)

 その言葉を告げた後、暫くして彼女の魂が春斗の魂に触れた。そして、徐々に融合を始め、一つの魂になった。

(……千佳ちゃんの記憶が全部流れ込んでくる)

 彼女の魂が彼を受け入れたのか、手に取るように千佳の事が分かる。春斗も拒否をする、しないというやり方が良く分かっていないが、何も拒まず、千佳が見たいだけ見られるように意識した。

 千佳の頬に、ポロポロと涙が伝い落ちている。相変わらずむせび泣いていた彼女だが、徐々に落ち着いてきたようで、鼓動もゆっくりとしたものになった。

(千佳ちゃん。俺の言いたい事が分かったかな?)

「……春斗さん。春斗さんって……やっぱり由香利さんが好きなんですか?」

(えっ? な、何で?)

「由香利さんはお兄さんの奥さんだし、樹里ちゃんって言う可愛い子供もいるんでしょ?」

(あ、ああ。そうだけどさ……)

 そこを覗いてほしいわけでは無かったのだが、そのまま彼女の言葉を聞いた。

「一葉さんの事もあまり興味が無いんですね」

(ま、まあな。でもどうしてそんな事を聞くんだよ?)

「私の魂、見ました?」

(えっ。ま、まあな)

「それなら私が言いたい事、分かりますよね?」

(分かるって言うか……)

 春斗は言葉に迷い、曖昧な返事をした。

「きっと、春斗さんは損してますよ。損しているって言うか、由香利さん以外の女性は、男を見る目が無いんですよ。一葉さんは……ちょっとありますけど」

(な、何だよ急に)

「私、決めました。春斗さんの彼女になります! 彼女にしてくださいっ」

(は……はぁっ?)

 今まで泣きじゃくっていた千佳から出た突拍子もない言葉に唖然とする。

「きっと私ほど、春斗さんの事が分かっている女子はいないと思います。そして私は春斗さんが好きです。今、自分の気持ちに確信が持てました。でも、とりあえず高校を卒業するまでは待っていてください。卒業したら春斗さんの好む大人の女性っぽく振舞いますので」

(な、な……何を言い出すんだよっ)

「春斗さんは優しすぎですよ。私の事、あんな風に思ってくれたなんて。それに由香利さんの事もすごく愛情をもって接しています。それは……エッチな事をしすぎていましたけどね。でも、由香利さんはきっと春斗さんの事を茂さんよりも愛しています。私、まだ高校生ですけど女子だから分かるんです。春斗さんだって気づいていますよね。でも、茂さんと離婚して春斗さんと一緒になるにはハードルが高すぎるし、樹里ちゃんも可哀想です。だから……怒らないでくださいね。春斗さんと由香利さんの間には恋愛感情を抱かない方が、お互いのためだと思います」

 千佳は頬に涙の後をつけたまま、彼女しかいない部屋で熱のこもった気持ちを独り言の様に話した。

(俺の記憶を全部見た上で、言ってくれてるんだよな。俺だって千佳ちゃんの言っている事が正だと分かっているよ。でもさ、由香利さんは俺にとって唯一無二の女性なんだ。魂で触れ合い、魂同士が惹かれ合う仲なんだ。だから、今はまだ諦めきれないんだよ)

「……私だって由香利さんと同じだと思います。ねえ春斗さん、私を抱いてください」

(はっ?)

「私も春斗さんに愛されたい。今だって、魂同士で触れ合っているじゃないですか。条件は同じでしょ? 私、自分でも信じられないです。人を好きになるのって、ほんの一瞬なんですね。こんな病弱な体だけど、春斗さんが愛してくれるなら全てを捧げたい。春斗さんの魂、とても温かいです。これまでに乗り移ったどんな男性よりも一際温かくて心が落ち着きます。ずっと一緒にいたいんです」

(い、いや。そう簡単なものじゃないだろ。それに千佳ちゃんは処女なんだし)

「だから初めては春斗さんがいいんです。ううん、春斗さんじゃなきゃダメなんです。私を春斗さんのものにしてください」

(ちょっと待ってくれよ。そんなの無理だって!)

 好きという感情を抱いていない女性を抱くなんて……。それにどうしても由香利が頭に浮かぶ。

「じゃあ……すぐにとは言いません。でも、私の最初の相手は春斗さんしかいませんから。由香利さんよりも私の方が好きだって思ってもらえるように頑張ります」

 そう言うと彼女は涙で濡れた頬を掌で拭き取ると、その手を胸に添えた。そして白いパジャマの生地ごとゆっくりと揉み始めた。

(ちょ、ちょっと千佳ちゃん?)

「んっ……春斗さん。こうして私の体に春斗さんがいて、感覚を共有できるんですよ。私の体をもっと知ってほしいし、私も春斗さんと一緒に……したいです」

 パジャマのボタンが外され、ブラジャーの中で勃起した乳首が弄られる。そして空いている右手がズボンの中に入っていった。

「んふっ! 春斗さん」

(ち、千佳ちゃん……ううっ!)

 パンティに潜り込んだ華奢な指が充血したクリトリスを優しく労わる様に撫で始めると、彼女の腰がビクンと震えた。

「はっ…あっ。春斗さんが私の中にいるのにこんな事してるなんて。まるで春斗さんの前でオナニーしてるみたいで……あんっ」

 千佳は左手の指が乳首を捩じる様に摘まみながら甘い吐息を漏らした。いつものオナニーと変わらないのに、異常に感じてしまう。一瞬で恋に落ちた乙女心に、ゼロセンチの距離間で大好きな男性が寄り添っている。これこそアニメやドラマの展開だと思った。

(待ってくれよ千佳ちゃん。ちょっと展開が早すぎてっ)

「乙女心は待ったなしです! ああっ、春斗さんっ。春斗さんっ……んんっ!」

 こうして春斗は千佳の愛情がこもった強引なオナニーに付き合わされたのであった――。