未練がましい男の最終話です。
最初から見直して、途中も少し修正しているところがあります。
PDF化したファイルを見ていただくほうがいいかなぁと思います。

新婚生活を営む優紀子に訪れた奇妙な出来事。幸せだった彼女の生活が、ある日を境に一転する――。
ダークなTSF憑依作品になりますので、ご興味のある方のみお読みいただければ幸いです。
もう一度書きますが、ダークなTSF作品となりますので閲覧は自己責任でお願いします。



「はぁ、はぁ。んあぁ〜」

 汗ばんだ体にはオーガズムによってもたらされた至高の快感がまだくすぶっている。膣にはまだ肉棒が突き刺さっていたが、力強さは感じなかった。夫以外の男との性交。自分が寝取られたのだという現実が優紀子の心に重く圧し掛かった。しかし、撮影されたビデオを見た人からは、彼女が夫以外の男を「寝取った」と見えるのだろう。
 優紀子の体が勝手に起き上がり、また騎乗位の体勢を取った。

「んふぅ、私達って体の相性がすごくいいみたいね。竹内君とのセックス、病み付きになっちゃいそう。竹内君はどうだった?」
「……答えられない。俺、彼女がいるのに夫がいる女とセックスさせられたんだな」
「そんな言い方しないでよ。竹内君も気持ち良かったんでしょ。だから私の中に射精したのよね。そして、私と付き合うんじゃなく、子供を作る事を選んだ」
「本意じゃない」
「でもこれが事実。私の子宮には竹内君の精子が泳ぎ始めているわ。それに、これは竹内君が自ら選んだのよ。私のお腹に竹内君の子供が宿るの。もう私達、離れられないわよね。だって……」
「…………」

 彼女は腰を上げて肉棒を抜き、服を着始めた。膣口から太ももにかけて精液が伝い落ち始めたが、そのままパンティを引き上げた。

「今日は帰るわ。順二のために夕食を作らなければならないから。ねえ、竹内君の事、猛って呼んでもいいよね。愛してるわ猛。私の体は順二じゃなくて猛を求めてる。猛の子供を作るための体だからね」

 身なりを整えた優紀子は、上半身を起こした竹内の頬に軽くキスをすると、「それじゃ、明日も来るね。猛のために美味しい料理を作ってあげる。大丈夫よ、順二には仕事で遅くなるって言っておくから。猛も彼女が来ない様にしておいてね」と言い、アパートを出て行く振りをした――



「だだいま。遅くなってごめんな」

 大きく息を吐き、ネクタイを緩めながらリビングに現れた順二は、「優紀子、いないのか?」と声を上げた。返事が無いので、廊下を覗いてみると、脱衣場から灯りが漏れていた。

「風呂に入っているのか」
 キッチンのテーブルには、夕食の準備が整えられていた。見たところ、少し冷めている様に思える。
「ん?」

 スーツの上着を脱いだ彼は、テレビに接続されているビデオカメラに視線を移した。見た事の無いカメラに首を傾げ、手に取ってみる。
 家にある物とは異なるため、優紀子が新たに購入したのかと思った。しかし、外観は少し傷が付いていて使用感がある。誰かから借りて来た物だろうか。
 テレビ画面を見ると、ビデオのチャンネルになっている。恐らく、優紀子が見ていたのであろう。何が撮影されているのか興味があった。

「なあ由紀子。あのビデオカメラはどうしたんだ?」

 バスルームの扉を少し開けて尋ねると、背を向けながら髪を洗っている彼女が「友達から借りたのもよ」と答えた。

「ふ〜ん。何を撮ってるんだ?」
「見たい? 見たいなら構わないわよ。そのまま再生ボタンを押せば始まるから」
「構わないのか?」
「別に見られて困る内容じゃないし」

 優紀子が髪を流しながら答えると、順二は何も言わずリビングに戻っていった。
 その後、しばらくの時が経つと、白い下着姿の彼女がさっぱりとした表情でリビングに現れた。テレビ画面には、彼女が竹内を誘い、跨りながら激しくセックスをしているシーンが流れている。ソファーには、拳を握り締めている順二が肩を震わせながら座っていた。

「ゆ、優紀子……。お、お前は一体……どういうつもりなんだ。ビデオの中で言っていた事は……本心なのか?」

 怒りを必死に堪えた声に聞こえた。

「見たままだけど、何か問題でもある?」
「何っ!」

 声を荒げ、鬼の形相で優紀子を睨み付けた順次に、彼女は「まあ慌てないで最後まで見てよ。話はそれからにして」と、細い腰を捻りながら腕を組み、目を細めて彼を見下ろした。

「さ、最後までだとっ!」
「いいから黙って見てろよっ」

 逆に優紀子が強い口調で話すと、彼は唇を噛み締め、テレビ画面に視線を移した。見たくも無い、最愛の妻が他人とセックスをしている様子。気持ち良さそうに喘ぐ妻の姿に、順二の目頭が熱くなった。

「も、もういいだろっ! 何がどうなっているんだ。あの竹内という男は一体何者なんだっ」

 そう叫んだ瞬間、竹内の精子が優紀子の子宮へと流れ込んで行くシーンが映し出された。幸せそうな表情をしながら男の胸元に上半身を沿えている。

「だ……出したのかっ。アイツッ、お前の中にっ!」
「出したわよ。私はそれを望んでいたし、彼もそれを選んだから」
「……何故だ。何故こんな……」

 頭の整理が付かない。優紀子の行動が理解できなかった。

「何故って。彼の子供が欲しかったからよ。ずっと……。そう、ずっと彼の事が忘れられなかったの。ようやく見つけた彼の家。とても嬉しかった。彼は付き合っている彼女がいたみたいだけど、そんな事は関係ないの。もう離さないわ。誰にも彼を渡さない」
「お前っ! 何、馬鹿な事を言ってるんだよっ。俺達は結婚したんだぞ。互いに愛し合って結ばれたんだろっ。それなのに何故こんな事をするんだっ」

 激しい口調で問い詰める順二に、優紀子は軽く笑うと「結婚したのは保険よ、保険っ。彼を見つけるためにはお金が必要だから。探偵を雇うのも結構なお金が必要でね、私の稼ぎじゃ大変なの。順二と一緒にいればお金の心配もないし、結婚しろって五月蝿い親だって満足するでしょ。セックスもそれなりに上手に出来る様になっていれば、彼も喜んでくれると思って。処女を彼にあげられなかったのは残念だったけど」と言い切った。

「お、お前……俺をそんな風に。愛してた訳じゃないのか」
「気づいてなかったの? あんなの演技に決まってるじゃない。愛撫も下手だしセックスも満足できない。本気でイッた事なんて一度も無かったわよ。それに比べて彼は……もう私の体は彼しか受け入れられないわ。あの長くて太いモノが私の中に入った瞬間……」

 彼女は自分の体を強く抱きしめると、「想像しただけでも子宮が疼いちゃう。早く彼とセックスしたいわ」と頬を赤らめた。
 何をどう言っていいのか分からなかった――
 あまりに衝撃的な結末を目の当たりにした順二は青ざめ、生気を失った。
 そして、震える手で上着を掴み、無言のままフラフラとした足取りで玄関を出て行ってしまった。

「……ま、こんなもんか。優紀子が見ていたら気が狂っていたかもな」

 ニヤリと笑った優紀子が携帯を手に取り、番号を押し始めた。

「もしもし、俺だけど」
「猛ね。女の声だから変な感じ」

 携帯のスピーカーから、竹内の声が聞こえた。少し息が上がっている様に思える。

「ああ、俺だ。上手く行ったよ。実にスッキリした」

 優紀子はソファーに座ると、細くて長い足を組んで微笑んだ。

「そう、それは良かったわね。んっ、はぁ、はぁ」
「何だよ美代。お前、俺の体でやってんのか」
「だって、何もせずに待っているのって退屈じゃない。ねえ、優紀子ちゃん!」

 耳を澄ますと、携帯から美代の喘ぐ声が聞こえてくる。

「彼女。私の体、気に入ってくれてるみたい。猛のチンコで膣を掻き回されて、こんなに悦んでる」
「へぇ〜、そうなのか。しかし不思議な感じだな。三人がぞれぞれ違う体に入っているんだからさ」
「ねえ猛、ちょっといい考えがあるんだけど」
「何だ? いい考えって」
「とりあえずこっちに戻ってきてよ。それから話すから」
「……ああ。分かった」

 携帯を切った優紀子――竹内は、服を着ると美代が待つアパートへと戻った。



「どう猛、ナイスアイデアじゃない?」
「そうだな。俺達に取ってはベストな選択かも知れない。でも、美代はそれで構わないのか?」
「私は全然未練ないし……っていうか、こっちの方が断然いいから」

 竹内は、背後から彼女の胸を揉みつつ、首筋にキスをした。

「くすぐったいよ。良かったね、大好きだった女性を手に入れられて」

 そんな二人の様子を、両手と両足を縛られた美代が、ベッドの上から睨み付けていた。

「美代の顔でそんなに睨み付けるなよ。全ては優紀子、お前が悪いんだからさ」
「どうしてよっ! どうしてこんな事……こんな酷い事が出来るのよっ。私の体を返してっ。それは私の体なのっ! 私の体なんだからっ」

 胸を揉まれていた優紀子は竹内と激しくキスをした後、目の前にいる美代に笑いながら答えた。

「フフッ。いいじゃない。この体は私が使わせてもらうわ。やっぱりこれくらいスタイルがいいと心もワクワクしちゃう。今日から私が岡神優紀子
で、アンタが今城美代よ。私の体も気持ち良かったでしょ。あんなに喘いでたし。それに、アナルも開発してるから好きに使っていいわよ」
「こんなの絶対に嫌っ! 私が優紀子なのっ。岡神優紀子なのっ!」

 耳が痛くなるほどの甲高い声で泣きじゃくる彼女に、竹内が話しかけた。

「なあ優紀子、よく聞けよ。どっちみち岡神優紀子じゃ、順二と元の鞘に戻る事は出来ないんだ。でも、その体なら可能性があるだろ。互いにフラれたもの同士だ。傷を舐め合いながら生きていく事も出来るだろよ。その体でアイツの傷ついた心に飛び込めば、コロッと騙せるって」
「そんな事が出来る訳無いじゃない!」
「そうかしら? 私ならやっちゃうけどね。髪を切って岡神優紀子と同じようなメイクをすれば、アイツの心も傾くと思うけど」
「だ、だからって……」
「もう俺達には関係ない事だ。自由にしてやるから、お前の好きにすればいいさ。なあ優紀子」
「そうね、猛。早く私達の子供を作りたいわ!」

 美代は優紀子の口調を真似しながら、彼女の手を使って竹内の股間をいやらしく撫で回した。
 自分の全てを盗まれた優紀子は、ただ恨めしく二人を睨みつけるしか出来なかった――。



 そして一ヵ月後。

「やっと落ち着いたみたいよ。優紀子の親や友達、それに会社の連中からの鬱陶しい連絡がね!」
「親から勘当されたんだろ。そりゃ、順二からあのビデオの内容を話されちゃ、ただじゃ済まないだろうからな。ビデオカメラを回収しておいて良かったよ」
「そうね。これでゆっくり出来るけど……。岡神優紀子として生きるのは面倒かもしれないわ」
「そうだな。でも、子供が出来れば何らかの証明が必要になるから、やはり岡神優紀子じゃなきゃ大変だろ」
「それはそうかも。実際に、もう出来てるかもしれないしね。優紀子の両親、勘当したって言いながら、子供が出来たら見せろなんて面倒な事を言い出さなければいいんだけど」
「ああ。また引越し先で考えればいいさ。しかし――美代。お前の事、もう優紀子にしか見えなくなったよ」
「……っていうかぁ、そうする様にしてるし。猛も岡神優紀子の喋り方の方がいいって言ったじゃん。折角手に入れた美貌も崩したくないから、ちゃんと栄養バランスを考えて食べてるしさ。ま、すぐに男が寄ってくるのは面倒だけど」
「そうやって喋ると、美代だなぁと思うよ」
「うふっ。そうかしら? 本当はどっちの私がいいの? 猛の好きな私を演じてあげるわ。その代わり、毎日セックスしなきゃだめよ。私の子宮を悦ばせてくれなきゃ、他の男と浮気するかもしれないわよ」
「ははは。好きなだけセックスしてやるよ……っていうか、今だってずっと入れっぱなしじゃないか」
「だって、猛のオチンチンでいつでも満たされていたいもの。こうして二人でテレビを見ている時も、ベッドで寝ている時も、ずっと入れていたいの」
「優紀子も随分といやらしい女になったもんだな」
「そんな事ないわ。元々私はいやらしい女だったのよ。猛が気づいてなかっただけ。そうでしょ?」
「……ああ。そうだな」
「あっ……ん。そんなに抱きしめたら、また子宮に入りそうよ」
「じゃあ入れてやるよ」

 ベッドの上、裸の優紀子を太腿の上に乗せていた竹内は、膣に入れたままの彼女の肩を下に押さえ、肉棒を更に奥へと押し込んだ。

「あはっ! すご……い」
「このまま中に出すぞ」
「いいわよ。猛の精子、私の子宮に泳がせて!」

 こうして二人は、手に入れた優紀子の肉体を存分に楽しんだ――。



「あの……。本当にいいのかい?」
「ええ。私、寂しいの。順二さんに心の傷を癒して欲しい」
「お、俺もなんだ。実は俺、言ってなかったんだけど、最近まで結婚してたんだ。でも、離婚する事になって。この家も二人で住むために買ったんだけど……」
「いいの。それ以上は言わないで。だから……私の過去も聞かないで欲しいの」
「……わ、分かった。聞かない。聞かないよ」

 順二は仕事帰りに一人の女性に声を掛けられた。セミロングの髪はダークブラウンに染められていて、顔つきは異なるものの、口紅の色や眉の書き方は優紀子にとても似ていた。ただ、彼女に比べると随分と華奢で、白いスカートから見える足は折れそうな程、細く思えた。
 そんな彼女は少し前から順二の事を見ていたと言い、思い切って声を掛けたらしい。人の温かみを欲していた二人は急激に惹かれ合い、数日後の今、優紀子がいなくなった家のベッドで抱きしめ合っていた。

「ねえ順二さん。もし私がずっとこの家にいたいって言ったら、どう思う?」
「えっ。そ、それって……」
「家事の事は全部私がします。料理にも自信があるのよ。その……順二さんが嫌じゃなかったら、私をこの家において欲しい……」
「お、おいて欲しいって……。き、急な事だから何て言ったらいいのか分からないけど。あの、俺は……ずっと一人でこの家に過ごす事を考えていたから、とても寂かったんだ。帰っても出迎えてくれる人はいない。一緒に夕食を食べて、テレビを見て笑い合う。そんな人はもう現れないと思っていた。でも……君と出会った」
「……ねえ順二さん。キスして……。別れた奥さんと同じ様に愛して欲しい。私も順二さんを愛したいの」
「み、美代さん……」
「来て、順二。あなたの妻にして欲しいっ。愛したいのっ。心の底からあなたを愛したいのっ」
「美代っ。俺、お前がいるならっ!」

 順二は美代の唇を激しく奪い、全身を愛撫した。

「あああっ。順二っ……愛してる。愛してるわっ」

(騙してごめんなさい。でも、一緒に居たかったの。私の体じゃなくなったけど、順二を精一杯、愛したい。岡神美代でいいから、もう一度、順二の妻にして欲しいの)

 美代の体で、順二の大きな包容を受けた優紀子は、一年後に彼の子供を授かり、岡神美代としての暮らしを始めた。
 大切な体。そして両親や親しい人達との繋がりも全て失ったが、今の幸せは絶対にを失いたくない――そう願って生きてゆくのであった。




未練がましい男――おわり