前編の続きです。
なお、TiraのPDF作品では、前編、後編をあわせたファイルとして掲載しています。
表紙_004
「胸が揺れるって不思議な感覚だな。こうやって歩いているだけで肩が引っ張られる様な感じになる」

 秋田は、歩きながら自分の身に付いている大きな胸の感想を言った。その後ろを付いて歩く赤神には、丘蔵紗枝が奇妙な感想を言っているとしか思えなかった。後姿は紗枝そのもの。ただ、歩き方を見ればいつもの彼女では無いと認識出来た。普段ならば真っ直ぐに前に出す足を少々蟹股に開き、斜め前に出している。それは秋田の歩き方と全く同じだった。スリムデニムの細い足で女性らしさを無視した歩き方をされると、何故か興奮してしまう。赤神は中学の時に、ラジオ体操で蟹股に大きく足を開くところを女子生徒がしている姿を見て興奮した事を思い出した。
 彼女の手がTシャツの胸元を這い回り、その弾力を楽しんでいる。

「お、おい秋田。ここじゃ誰かに見られるかもしれないから触らない方がいいって」
「え〜っ。折角手に入れた女の身体なんだ。いつ薬が切れるか分からないからたくさん触っておきたいだろ」
「お前、自分の彼女なんだから何時でも……っていうか、普段から触っているんじゃないのか? 同棲しているんだろ」
「分かってないな。こうやって俺自身が紗枝になった状態で触って、その感触を楽しむのがいいんだ。この、胸を触られた感触って男じゃ絶対に体験できないぞ」
「そ、それはそうだろうけどさ」
「まあ、紗枝が変な目で見られるのも困るから、部室に戻ってからじっくりと楽しむか。じゃあ今から暫くの間、私は赤神君の彼女って事でね!」
「えっ。お、おいっ」

 紗枝の細い腕が彼の腕に絡みつき、身体を密着させてくる。講堂の時の様に、二の腕に当たる彼女の胸から温もりを感じた。

「どう? 友達の彼女を奪った気分は?」
「な、何言ってんだよ」
「こんなところを昇平に見られたら、喧嘩じゃ済まないんじゃない?」
「よ、よく言うよ。自分でそうやっておいて」
「あら? 何の事か分からないわ」

 秋田は紗枝に成りすます事を楽しんでいる様だ。わざとTシャツの胸元を引っ張り、

「あ〜。胸を揉んでいたせいで、ブラジャーがずれて気持ち悪いわ」と、赤神に見せようとする。

 赤神は、「やめとけよ。向こうに居る奴らが見てるだろ」と言いながら、チラリとその胸元を見た。普段の紗枝では当然見る事が出来ない胸の谷間が覗き見え、彼の興奮を沸き立たせる。

「へへ。何か、自分の身体じゃないから大胆になれる気がするよな」
「大事な彼女の身体なんだろ」

 赤神は平静を装いながら、彼の行動を制止した。

「ま、そうだな。じゃ、早く部室に行こうぜ。うふっ……私、この身体を触りたくてたまらないの」

 いちいち興奮する台詞を言う秋田は、組んでいた腕を引っ張り、部室へと急がせた。
 窓から差し込む日差しが、先ほどよりも伸びている。部室に入ると、紗枝は廊下に面した窓と、扉の鍵を閉めた。廊下側の窓は擦りガラスになっており、閉めてしまうと部室を覗け無い。

「よし、これで誰にも邪魔されないだろ。早速、紗枝の身体を楽しませてもらうか」
「な、なあ。勝手にそんな事して、バレたらどうするんだよ」
「何言ってんだよ。俺達、超常現象サークルだぜ。今起こっている事実をしっかりと確認しないとな。お前の前には、あのドリンクを飲んで幽体離脱して、丘蔵紗枝の肉体に憑依した秋田昇平がいるんだぞ。赤神だって、この現象に興味が無いわけ、無いだろ?」
「そりゃそうだけどさ。丘蔵さんの気持ちはどうなんだ? 彼女が同意しているならいいと思うけど」
「俺の彼女なんだから気にするなよ。それとも赤神、お前……私の肉体に興味が無いの?」

 また途中から紗枝の口調を使った秋田は、Tシャツの裾を引っ張り、彼女の胸を強調した。そして腰をくねらせながら後姿を見せ、スリムデニムに包まれた尻をいやらしく撫で回した。

「私ね、昇平にこのデニムを穿いた状態でチンポを入れられてたのよ。まさに超常現象って感じでしょ?」
「そ、そういえばどうやって丘蔵さんに憑依したんだよ」

 赤神は理性を総動員させながら、自分のペースに持っていこうとした。

「それはだな。講堂で紗枝が二回イッただろ。最後にイッた時、紗枝の身体からスッと力が抜けてさ。その瞬間、紗枝の身体に幽体が減り込んで行ったんだ。何ていうか、イッた事で彼女の気が緩んだって言うか、全身を包んでいたオーラみたいなものが消えたって言うか……。まあ、朦朧としたのかもしれないな。これってもしかしたら乗り移れるんじゃないかって、咄嗟に感じたんだ。そのまま紗枝の身体に入ったら、神経が瞬間的に繋がってさ。この肉体を自由に動かせるようになったってわけ」
「へぇ〜。気分が悪くなったりしなかったのか?」
「全然平気だった……って言うか、イッた後だったから妙に気持ちよくてさ。男のお前じゃ分からないだろうけど。下半身がジンジン痺れて……。男の身体と違って、女って何度でもイケるって言うだろ。この紗枝の肉体を使って、最初から女の快感ってのを味わってみたいんだ」
「そ、それ以外に気付いたことって無いのか?」

 立て続けに質問し、秋田に答えさせる。彼は紗枝の腕を胸の下で組みながら、顔をしかめて見せた。

「そんなのねえよ。ああ、ま……匂いには敏感になってる気がするな。憑依したら、紗枝自身の匂いに気付いた。髪の匂いや若干の香水の匂い。俺の身体で匂うよりも、より鮮明に感じた気がする。俺が鼻炎だからかな」
「なるほどな。やっぱり他人の身体になれば、ある程度の五感の違いが分かるんだ。じゃあ、何かを食べたら余計に違いを感じるかもしれないよな」
「……お前、質問ばかりして時間稼ぎしているのか? 薬が切れて、紗枝の身体から抜け出るのを待っているんじゃないだろうな」

 秋田に心を覗かれた気がした赤神は、ビクリと眉を動かした。

「な、何言ってんだよ。俺は純粋に今の現象を把握したいだけさ。だって、お前にしか分からないんだから」
「そんな事は後でゆっくり話してやるよ。それよりも紗枝の身体を楽しむ方が先決だ。お、そうだ。俺が男の立場で、女の感じ方を説明してやるよ。それもサークルの趣旨としては大切な事だからな」
「い、いや。まあ……それは……」

 そうじゃない――と言えなかった赤神は、恥かしげも無くTシャツを脱いだ紗枝を視線から遠ざける様に、廊下とは反対側の窓に映る景色を眺めた。

「うお〜。やっぱりこのアングルで見る胸って違うよな。ブラジャーの谷間がたまんねぇよ。ほら、お前も見ていいぞ。これが俺の女だ」

 彼女の声で自慢する秋田が、ブラジャーごと胸を掴んで上下に揺らしている。その様子を視線の端で見ていた赤神は、「なあ。もしも今、憑依が解けたら俺達、ただじゃ済まないんじゃないか?」と尋ねた。

「だからその時はその時だって言ってるだろ。紗枝だって超常現象サークルのメンバーなんだ。ちょっと位、自分の肉体を使われたところで文句は言わないだろ」
「いや、言うと思うけど……って!」

 そう言って紗枝を見ると、丁度ブラジャーを外したところだった。形の良い乳房に濃いピンクの乳首。小さめの乳輪は赤神の好みでもあった。その胸に、思わず釘付けになってしまった。

「へへ。俺、この乳首をいつも舐めているんだ。お前も舐めたいか?」
「や、やめろよ。本気で言ってるのか?」
「ああ。俺はこの身体を楽しみたいからな。いつも乳首を愛撫するけど、紗枝は一体どんな風に感じているのか知りたいんだ」

 秋田は赤神が立っている方にパイプ椅子を向けると、ゆっくりと腰掛けた。そして、デニムに包まれた足を蟹股に開き、滑らかな股間をいやらしく撫で始めた。

「すごいな。この、のっぺりとした感じ。俺の身体ならチンポが勃起してもっこりと膨れているだろうにさ」

 その仕草は、普段の紗枝からは想像出来ないほどセクシーで大人びていた。赤神は勃起した肉棒を隠すため、ズボンのポケットに手を突っ込み、いやらしい膨らみを隠した。

「勃ってんだろ。隠さなくてもいいって。ズボンとパンツを脱げよ」
「そう言うけどさ。丘蔵さんに見られていると思うと恥かしいって」
「だから俺が憑依している間は本人の意識は無いんだ。お前のチンポなんてプールや銭湯で何度も見たことあるんだからさ」
「そりゃそうだけど、容姿は丘蔵さんだから……」

 赤神が躊躇っていると、紗枝の手がデニムのボタンを外し、ファスナーを引き下ろし始めた。その隙間から見える白いパンティに目を奪われていると、彼女の右手がゆっくりと生地の中に入ってゆく。指先に陰毛の縮れを感じながら、更に奥へと侵入を続ける。

「うっ……。ここがクリトリスだな。小さいのに、少し触れただけで体中に電気が走るみたいだ」

 パイプ椅子に浅く座りなおした紗枝が白いパンティに手を潜らせ、興味深そうな表情で肉体が発する快感を探索している。まるで丘蔵紗枝本人がオナニーをしているかの様に思えた。

「し、刺激したら丘蔵さんが気付くんじゃないのか?」
「さあな。でもその様子は全く無い。うっ、ふうっ。すごいな、さっき幽体でセックスしてたから洪水になってる」

 パンティから手を引き抜いた秋田は、細い指の先端についている愛液を赤神に見せ付けた。親指と人差し指を閉じたり開いたりすると、その間に粘り気のある愛液のアーチが出来る。紗枝の顔でニヤリと笑った秋田がピンクの唇を開き、指先を舐め回した。
 秋田は、「相変わらず紗枝のマン汁は上手いな。なあ赤神、早く脱げよ」と言って立ち上がり、スリムデニムとパンティをゆっくりと引き下ろし始めた。股間を覆っていた白い生地が徐々に離れ始めると、先ほど手に付いていた愛液が膣口とパンティの間で糸を引いているのが見てとれた。

「足に密着しているから脱ぎにくいな。でもこうやって……」

 両手で片足ずつ引き下ろし、足元から抜いた秋田は、デニムをテーブルの上に置くと、あわせて靴下まで脱ぎ、裸足で床に立った。

「どうだ? これが俺の彼女の全てさ。綺麗だろ?」

 紗枝の手が胸から下腹部、そして太ももをいやらしく撫でると、今度は背を向けて生尻を掴み、左右に開いて見せた。捻れたウェストの細さが男心をくすぐる。

「ねえ、聞いてるじゃない。私の身体、綺麗でしょ? 綺麗って言ってくれないの?」

 彼女の声、そして彼女の肉体に理性を崩された赤神は、「マジで綺麗だ。丘蔵さんの裸を見れるなんて有り得ないよ」と言い、ズボンとパンツを脱ぎ捨てた。

「ようやくその気になったか。じゃ、紗枝を寝取らせてやるよ。好きに触っていいぞ」

 女性特有の、滑らかな曲線を持つ肉体を曝け出す紗枝は、魂の抜けた秋田の鞄からピンク色のコンドームを取り出した。

「そんなの、大学に持って来ていたのか?」
「大学じゃなくて、いつも持ち歩いているけど。お互いにムラムラっと来た時になっ!」

 その言葉に、彼は様々な場所で二人がセックスをするシーンを思い浮かべた。赤神の前では、そんな素振りや雰囲気を全く見せない秋田と紗枝だが、実は同じ大学で過ごす間にも、知らないところでセックスを楽しんでいるのかもしれない。秋田はともかく、紗枝がそこまでやっているなんて想像も出来なかった。
 秋田は紗枝の指でコンドームのパッケージを破ると、「俺が付けてやろうか?」と赤神の前まで歩いてきた。ニヤニヤと笑いながら、丸まったコンドームを目の前でちらつかせる。

「い、いいよ。自分で付けるからさ」
「遠慮するなよ。お前、コンドーム付けた事無いんだろ」
「ま、まあ……そうだけど」
「へへ。そうだな、コンドーム越しなら構わないか。なあ赤神、俺がいつも紗枝に付けさせている方法で付けてやろうか」
「……クルクル伸ばしながら付けるんじゃないのか?」
「付け方はそうさ。折角だから紗枝の雰囲気を出してやるよ」
「えっ?」

 秋田は紗枝の髪を軽く払い、いつもの優しい笑顔を作り出した。

「赤神君、コンドーム付けた事無いよね。それなら私がいつも昇平にしている付け方で付けてあげるわ。初めてのコンドームがこんな付け方だなんてラッキーだね」
「ど、どんな付け方するんだよ」
「いいから見てて」

 紗枝の口調を真似る秋田は、コンドームの先端を唇で挟み、ウィンクした。そして彼の前にしゃがむと、勃起した肉棒を右手で握り締めた。

「うっ」

 彼女の温かい掌で握られた赤神は、思わず声を漏らした。紗枝は何度か軽く肉棒を扱くと、コンドームを咥えた唇を、ガマン汁が滲み出ている亀頭に触れさせた。その行為に、赤神はビクンと身体を震わせた。女性と付き合った事はあるものの、キスまで発展した事は無かった。そんな彼が、異性と最初に体験したキスの場所が肉棒だったなんて――。
 嬉しさと情けなさが交差する中、紗枝が唇をゆっくりと開きながら亀頭を飲み込み始めた。丸まったコンドームを唇で器用に伸ばしながら、カリ首まで口に含んでしまう。

「ううっ!」

 その感触が気持ち良すぎた赤神は、たまらず腰を引いた。

「んふ。どう? 口でコンドームを付けられる気分は」

 亀頭を包み込んだところで、彼女は見上げながら問い掛けた。

「す、すごく気持ちいいっ。お前、いつも丘蔵さんにこんな事させているのか?」
「まあ、いつもじゃないけど。大学のトイレでする時は、よくこうして付けてあげてるわ」

 秋田は紗枝に成りすましたまま、もう一度亀頭を咥え込んだ。そして、またコンドームを伸ばしながらゆっくりと根元まで肉棒を咥えていった。ゴム越しに感じる彼女の口内はとても温かかった。

「はぁ、はぁ。こ、こんな付け方してもらえるなんて、秋田が羨ましいよ」

 肉棒を飲み込んだ紗枝に向かって話し掛けると、彼女の頭がゆっくりと肉棒から離れていった。しかし、亀頭を解放するかと思いきや、またゆっくりと飲み込み始める。

「ううっ! あ、秋田っ」
「んっ、んんっ、んふっ」

 紗枝の舌が肉棒に絡みつき、コンドーム越しに刺激してくる。彼女の頭が一定のリズムで前後に動き、口内で肉棒を扱いている。

「うっ、うっ、はっ、はぁ、はあっ」
「んくっ、んっ、んっ、んっ、んんっ、んんん……」

 彼女の篭った声が鼻から漏れ、より一層セクシーに思えた。コンドームが外れないように、右手の人差し指と親指で根元を持ち、口を窄めながらフェラチオされる気持ちよさは、体験した事の無い極上の快感であった。

「すごっ……。うっ、ううっ、丘蔵さんの口でそんなにされたらっ」
「んっ、んふぅ。気持ちいいでしょ。でも、出すなら口じゃなくてマンコに出してよね。この肉体の快感を味わうのが目的なんだから」

 肉棒に軽くキスをした紗枝がゆらりと立ち上がり、形の良い乳房を両手で持ち上げた。

「はい。この胸を愛撫して。昇平よりも上手かな?」

 その言葉に興奮した赤神は、勢いよく彼女の乳首を頬張った。右の乳首を吸い上げ、左の胸を鷲掴んで揉みしだく。

「ふあっ! あっ、すごいっ。そうやって吸われると乳首がジンジンするっ」

 秋田は紗枝の肉体が発する現象を、彼女の声で伝えた。更に赤神の手首を掴み、愛液で濡れた股間へと誘う。
 理性の欠片も無くなった赤神は、指先に滑り気を感じると、陰唇に指を減り込ませ激しく擦った。

「んあああっ! そ、そこっ……クリトリスっ。あっ、た、たまんねぇっ!」

 紗枝の膝が、ガクガクと震えた。胸とクリトリス、そして膣に入り込んだ指に翻弄される秋田は、肉体から湧き出る快感を彼女の脳を使って感じていた。
 すでに講堂でオーガズムを迎えていた身体は――勃起した乳首を甘噛みされ、クリトリスと膣を同時に攻められると、たやすく絶頂を迎えた。

「うはっ。あっ、ああっ、あ、あ、あっ。イ、イクッ! 紗枝の身体っ……すっ……んはぁっ!

 太ももから滴る透明な液体が、女としての喜びを表現していた。腰に力が入らない紗枝が赤神に凭れ掛かり、そのまま床へと崩れ落ちる。秋田は彼女の肉体から、男では味わったことの無い快感を得たのだった。

「はぁ、はぁ、あはぁ……」
「あ、秋田なのか? 丘蔵さんに戻ったりしてないだろうな?」
「ううっ……はぁ〜。だ、大丈夫だ。これが紗枝の……女のイクって感じなんだ。やっぱり男のイクのとは全然違う」
「そうなんだ……」

 へたり込んだ彼女を見つめる赤神の肉棒は、これ以上無い程、いきり立っていた。秋田に憑依されていても、丘蔵紗枝の肉体は本物なのだ。その膣に肉棒を捻じ込みたい。初めてのセックスを彼女の肉体で体験したい――。
 そんな欲望が心の奥底から湧き出ていた。

「あ、秋田。あのさ……」
「分かってるって。入れさせてやるから」

 彼女は床に膝を付きながら立ち上がると、テーブルの前まで歩いた。そして、背を向けたまま前屈みになると、両手で滑らかな曲線を描く尻を掴み、左右に開いた。

「ほら、紗枝のマンコに入れていいぞ。もう少し足を開いた方がいいか?」

 細い足が肩幅よりも少し広いくらいに開かれると、紗枝の艶かしい陰唇が覗き見える。裸体の後姿、しかも尻を突き出し、恥かしげも無く女性器を曝け出す姿に更なる興奮を覚えた赤神は、彼女に素早く近づくと、いきり立った肉棒を柔らかい尻の割れ目に宛がった。

「い、入れるぞ。いいんだな?」
「いいって言ってるだろ。ああ……入れられるのって、何かドキドキするな」
「じゃあ、入れるからな」

 右手で肉棒を掴み、亀頭で膣口を探しながらゆっくりと腰を前に進める。すると、ヌルンという感触と共に、生温かい空間に包まれた。

「うはっ……」
「うう……」

 互いに小さく声を漏らした後、紗枝の両手がテーブルに添えられた。徐々に下腹部が満たされてゆく感覚に、秋田は眉を歪めながら「んはぁ〜」と、溜息にも似た吐息を漏らした。
 赤神の下腹部と紗枝の尻が密着する。コンドーム越しに感じる紗枝の膣内。肉棒の形に添って、隙間無く密着する肉襞は、口で咥えられた感覚とはまた違っていた。まさに、肉棒を入れるために作られた性器であると思った。

「す、すごい……。これがマンコなんだ」
「この、入れられた感じって男じゃ経験できないな。ケツに入れられるんじゃなくて、何ていうか分からないけど……腹の中に入ってくる感じだ」
「動いていいか?」
「お前の好きにしていいぞ。また紗枝の真似をしてやろうか?」
「べ、別にいいって」
「俺と分かってやるよりも興奮するだろ? ねえ、アカガミクンッ!」
「そういう訳じゃ……」
「何してるの? 早く動いてよ。昇平が私の身体で女の快感を堪能したいって言ってるのよ。こんな調子じゃ、私の身体は気持ちよくならないわ」

 今度は紗枝が、秋田に自分の身体を楽しませてやっている様な言い方で話し掛けて来た。

「それじゃ、動くから」

 そう言うと、彼女の腰を持って下半身を振り始めた。ニチャニチャという音が結合部から聞こえると、紗枝が「あっ、あっ、あんっ」と喘ぎ声を漏らし始めた。その声がまた女性らしくセクシーで、赤神の鼓動を高ぶらせる。
 シミ一つ無い背中。そして背骨が真っ直ぐに腰まで伸びている。突き出された尻の丸さと、ウェストの窪みが大人びた雰囲気をかもし出していた。

「うっ、あっ、あっ、はあっ、あふんっ。す、すごっ……いぃ」

 身体を前後に揺さぶられる紗枝が悶え喘いでいる。相当気持ちがいいのか、テーブルに両肘を付くと、拳を作って頭を乗せ、膝をガクガクと震わせ始めた。すでに何度もオーガズムを迎えている肉体は、先程と同じく、簡単に絶頂へと登りつめるのだろう。

「はぁ、はぁ。あっん! あっ、あ、あっ、はぁっ、あんっ、あ、あんっ」

 紗枝の声を裏返らせ、膣を突かれる秋田は、細い腰をくねらせながら快感に酔いしれていた。赤神もコンドームをしているとは言え、絡みつく肉襞が織り成す極上の刺激で、あっという間に我慢の限界が来た。セックスを始めてまだ三分程しか経っていない。

「あっ、あっ。気持ちよすぎるっ。ああっ、んはっ」
「お、俺も気持ちいいっ。セックスってこんなに気持ちいいんだっ。うっ、はぁっ」

 赤神は夢中になって腰を振り、蕩ける様な紗枝の膣を堪能した。二十歳を過ぎて初めて体験したセックスの相手は連れの彼女。しかも、本人の気持ちを無視し、肉体を操られた状態であった。

「あっ、あっ。そんなに突かれたら……イ、イクッ! あああっ、ああっ、あんんっ」
「はあっ、はあっ、はあっ。うっ、うっ。俺もっ……出るっ!」

 ゴツゴツした指で彼女の腰を強く掴み、深く捻じ込む。そしてコンドームの中に大量の精液を出した。

「ううっ!」
「んあああ〜っ!」

 秋田も紗枝の肉体でオーガズムを迎えたのか、膣で肉棒をギュッと締め付けながらビクビクと全身を震わせた。膣口から溢れた愛液が太ももを伝い、膝辺りまで垂れている。

「はあ、はあ、はあ、ううう」

 何度か腰を打ちつけた赤神は、ゆっくりと肉棒を引きぬいた。急速に萎む肉棒と、コンドームの先端に溜まった大量の白濁液が赤神の満足感を表現している。暫くの間、肩で大きく息をしていた紗枝が机に手を突き、上半身を持ち上げた。

「はぁ、はぁ、はぁ……。紗枝の身体、マジで気持ちいいよ。病み付きになりそうだ」
「そんなに気持ちいいのか? 俺、丘蔵さんの身体が初めてですごく良かったよ」
「じゃあさ。もう一回やろうぜ」
「……でも、コンドームはもう使えないだろ」
「まだあるから」

 紗枝が先程と同様、秋田の鞄から新しいコンドームを取り出した。

「何個持ってるんだよ」
「いいだろ、何個でも。早く付け替えろよ」
「わ、分かったよ。なあ秋田、丘蔵さんの意識は戻らないだろうな」
「ああ、まだそんな気配は無いし、紗枝の肉体から抜け出るような感じはしない」
「……ならいいけど」

 赤神は精液の溜まったコンドームを外すと、軽く肉棒を扱き、新たなコンドームを装着した。

「ちょっと萎えてるんじゃないか?」
「そりゃ、出したばかりだからな」
「じゃあ俺が勃たせてやるよ」

 ニヤリと笑った紗枝が肉棒を掴み、いやらしく扱き始める。

「まだ昇平は物足りないみたいよ。私の身体でイッたのにね。ほんと、何回赤神君に寝取らせるつもりなのよ。まあ、赤神君も私のマンコ、好きだもんね! 普段の私よりも、今の方がエロくて好きじゃない?」
「……マジでお前、役者になれるよ」と言った彼の肉棒は、あっという間に固さを取り戻した。

 紗枝が「何言ってるのよ。私って本当はエロい女なのよ。ほら、その椅子に座って」と言い、パイプ椅子に赤神を座らせると、大きく股を開きながら彼を跨いだ。

「今度は私が動いてあげるわ。そのまま座ってて」

 目の前ある、彼女の胸が下りて行く。不意に肉棒を掴まれたかと思うと、また生温かい空間へと導かれていった。

「んふぅ〜」

 太ももに彼女の柔らかい尻の感触。そして、彼女の顔が目の前に現れた。

「また私のマンコに入っちゃったね。すごくたくましく感じるわ。じゃあ、乳首を弄ってくれる? この肉体で、赤神君と昇平に女の快感を楽しませてあげるわ」

 秋田は彼女にそう言わせると、膝のバネを利用して上下に腰を動かし始めた。

「んっ、んっ、あっ、ああっ。赤神君のチンポがマンコの奥まで届いてるわ」
「そんなにエロい言い方するなよな。うっ、はぁ」

 上下に、そして円を描くように揺れる乳房に手を添え、勃起した乳首を摘みあげると、紗枝の口から「んあああっ!」と裏返った喘ぎ声が漏れた。それでも彼女の腰は止まることなく、上下に動き続けていた。滑ったピンクのザラザラとした襞に扱かれ、肉棒がより硬く勃起する。そんな肉棒に子宮口を何度もノックされると、彼女の身体は全身が性感帯になった様にビクビクと震えた。

「あっ、あっ、あはぁっ! 蕩けるっ、はぁ、はぁ、気持ちよすぎっ」
「俺も気持ちいいよ。丘蔵さんが俺の上で喘いでいるなんてたまんないっ」

 紗枝の息が顔にかかり、髪から漂ういい香りが鼻をくすぐる。下半身から聞こえるグジュグジュといういやらしい水音。そして太ももにリズム良く圧し掛かる尻の温もり。
 極上の時間がいつまでも続いて欲しい。赤神はそんな風に思った。

「ああっ、あっ、あんっ、あ、あっ、はぁっ、い、いいっ。すごいっ」

 秋田は、彼女の声を使ってセクシーに喘ぎつつ、赤神の首に両腕を巻きつけてきた。腰も、跳ねる様な動きから前後に擦るような感じになり、スピードが増した。
 赤神も紗枝の華奢な背中を抱きしめると、彼女の動きに合わせて腰を動かした。

「うっ、うっ、はぁっ、はああっ。や、やばい。秋田っ……俺、またイキそうだっ」
「はぁ、あっ、あ、あっ、あっ、ああっ、ん、んっ、んっ。んはあっ」

 秋田も紗枝の肉体から得る快感を貪るのに必死のようだ。クリトリスを赤神の下腹部に擦り付ける様に腰を動かし、彼の肩に顎を乗せて激しく息を乱している。彼の太ももにも愛液が滴り、椅子へと落ちていた。

「イクッ! イクッ! ああっ、あっ、んんっ。はぁ、はぁ、あっ、あああっ!」

 紗枝の腕が赤神を強烈に抱きしめた。膣が収縮し、肉棒を絞り上げる。すると赤神も、「うああっ!」という情け無い声を出しながら、コンドームの中に射精したのであった。
 ビクン、ビクンと足を振るわせ、オーガズムを迎えた紗枝は、赤神に覆いかぶさる様に体を預けた。背中に薄っすらと汗を掻いており、抱きしめた手に湿り気を感じる。

「はぁ、はぁ、はぁ……。すごかったな。丘蔵さんが俺の上で悶えるなんて信じられないよ」

 丘蔵紗枝と、人生で初めてのセックスを堪能した赤神は、満足そうに彼女の背中を優しく撫でた。

「秋田、お前も相当気持ち良さそうだったな。今度は俺も女の快感ってのを味わってみたいよ。やっぱり想像だけじゃ良く分からないからさ。はは……まだマンコがヒクヒクしてるぞ。もう一回やるか?」

 上機嫌の赤神は、背中を撫でていた手を下に移動させ、尻をいやらしく撫で回した。しかし、彼女は大きく息をするだけで、答えてくれない。

「どうしたんだよ秋田。やりたいんだろ?」

 もう一度問い掛けると、横からガタンと言う音が聞こえた。見ると、秋田がカバンを持って椅子から立ち上がったところだった。

「あ、あれ?」
「後は頼んだ。じゃ!」

 秋田は、言葉を吐き捨てながら扉の鍵を開けると、一目散に逃げていった。

「お、おいっ! 秋田っ……。な、何だよあいつ。自分の肉体に戻ったのか」

 半開きになった扉を見ながら呟いた彼は、尻を撫でていた手を止めた。

「え……。って事は……」

 赤神の顔から血の気が引いた。彼の肩に顔を埋めている紗枝の呼吸が聞こえる。そして、ほんの暫く、沈黙が続いた後、「ねえ赤神君、今の状況を説明してくれるかしら」と、これまでに聞いた事の無い、とてつもなく不気味な声で紗枝が呟いたのであった。



 ――次の日。
 赤神の頬はまだ赤く腫れ上がっていた。あの後、紗枝にしこたま頬を叩かれたのだ。まあ、彼はそれだけで済んだが、彼女の肉体を弄んだ秋田は、そんな生易しい事では許してもらえなかったようだ。

「だ、大丈夫だったか?」
「ま……まあな。まさか紗枝があんな事してくるなんて思わなかったから……」
「あんな事って? 何されたんだよ」
「いや、絶対に言えない。誰にも言えない事なんだ」

 かなり落ち込んでいる様子。赤神は講義が終わった後、紗枝に聞いてみた。

「な、なあ丘蔵さん。あれから秋田の元気が無いんだけど、あいつに何をしたんだ?」
「二度とあんな事をしないように、きつくお灸を据えてやったのよ」
「……どんな事?」
「それは彼に聞いてみれば分かるわ」
「教えてくれないんだ。誰にも言えない事だって」
「それはそうよね。バレたら大変だろうから」
「なあ、それってもしかして、俺が渡したもう一本の青いドリンクが関係しているのか?」
「まあね。肉体的って言うよりは、精神的に仕返ししたからね!」
「って事は……秋田に憑依して誰かと?」
「ううん。昇平には憑依していないわ。昇平にはね!」

 紗枝は軽くウィンクすると、「今日はサークルを休むから帰るね。明日は参加するから」と言って、次の講義がある講堂へ歩いていった。

「精神的な仕返しって……誰に憑依したんだろう?」

 色々と想像した赤神だったが、結局分からないままだった。その後、秋田は元気を取り戻し、また三人でサークル活動を始めたが、未だ詳しい事は教えてもらえない。

「なあ秋田、丘蔵さんは誰に憑依したんだよ。で、何をされたんだ?」
「今更そんな事、どうだっていいだろ。それよりも、また別の物を調達してきてくれよ。なあ紗枝」
「そうね。昇平は思い出したくないだろうから、そっとしておいてあげたら?」
「う〜ん……。気になって仕方が無いなぁ」

 そう言われると、余計に知りたくなる赤神だった。


超常現象サークル(後編) おわり


表紙_007