新婚生活を営む優紀子に訪れた奇妙な出来事。幸せだった彼女の生活が、ある日を境に一転する――。 ダークなTSF憑依作品になりますので、ご興味のある方のみお読みいただければ幸いです。
 もう一度書きますが、ダークなTSF作品となります。
「ここが竹内君が過ごしている部屋なんだ」

 部屋に案内された優紀子(竹内)が、彼女の目を通して見慣れた室内を見回すと、竹内の身体を操る美代が後ろで恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。

「ほんとに散らかっているんだ」
「そんな事ないよ。男性の部屋にしたら綺麗なんじゃない?」
「そ、そうかな。でも、そんな風に言うって事は、岡神さんは男性の部屋へ入った経験があるんだ」
「男性の部屋って言うか……旦那の部屋だけど」
「旦那? じゃ、結婚したんだ」
「そう、結婚しちゃったの」

 彼女の素っ気無い言い方と、少し曇った表情をビデオカメラが捕らている。

「結婚しちゃったのって……まるでしたくなかったみたいな言い方だね」

 不思議そうに首をかしげた竹内に視線を移した優紀子は、「そう聞こえるかしら? ねえ竹内君、ベッドに座ってもいい?」と、枕のあたりを指差した。

「えっ、いいけど。良かったら椅子もあるよ」
「ううん、ベッドがいいの。仕事帰りの服だから嫌かな?」

 舌を出してウィンクする優紀子に対し、わざと力を入れて顔を赤らめた彼は、「そんな事無いよ。岡神さんなら全然OKさ。君のような美人で素敵な女性なら、どんなに汚れていても好きなだけ座っていていいよ」と応えた。その赤らいだ表情を映像に収めるべく、竹内の顔を軽く背けてみせる。彼の恥ずかしそうな表情にレンズの焦点が合っていた。

「ほんとにそう思ってる?」
「ど、どういう意味? 俺、冗談じゃなくて本心で言ったんだ」
「ねえ、覚えてる? 私が竹内君に出した手紙の事」
「手紙?」
「小学校の卒業式。私、帰りに竹内君へ手紙を渡したでしょ」
「あっ……えっと。そ、そうだったっけ」
「覚えてないのね。勇気を振り絞って書いた手紙だったのに」
「そうだったのか。ごめん、全然覚えてないんだ」
「文章も覚えていないの?」
「あ、ああ。ごめん」
「……そうなんだ。私ね、男の子に告白したの、あれが初めてだった。ううん……あれ以来、告白なんてした事ないもの。竹内君が私の告白に応えてくれると思っていたから、ずっと待ってた。十年以上よ。でも……もう我慢の限界だったの。今の旦那が執拗に迫ってきたから……自分の心を偽って結婚したわ」

 本来とは真逆の虚言を口にする優紀子に、竹内は拳を握り締め、動揺を隠せないと言った表情で受け入れる。重い空気に包まれた部屋の雰囲気を、ビデオカメラは微かな機械音を奏でながら撮り続けた。

「あ、あの……。何て言ったらいいんだろうか。俺、すごく悪い事をしたんだな」
「……そうね。私、竹内君と幸せな人生が送れると思ってた。中学になって、高校になって。そして大学から社会に出て。竹内君の事だけを想っていたのよ。それなのに、手紙を渡した事すら覚えていないなんて酷すぎるよ」

 優紀子を操る竹内の言動は、本人が言っているとしか思えないほど完璧なものであった。美代が操る竹内の姿も、誰が見ても本人だと疑わないであろう。身体に閉じ込められた優紀子は、必死に「もうやめてっ。私に成りすまして嘘を言わないで!」と抵抗するが、その悲痛な叫びが表に出ることは無かった。

「どうしたらいいんだろう。俺、岡神さんの人生を台無しにしてしまったんだな」
「そう思うなら、責任取ってくれる?」
「責任って?」
「私と結婚してよ」
「な、何言い出すんだよ。だって君はもう結婚しているじゃないか」
「離婚すればいいだけじゃない。簡単なことよ」
「か、簡単なことなんて言うなよ。両親や親戚、それに周りの人のことだって考えなければならないのに。それに、俺にだって……か、彼女がいるんだ」

 至極当然な事をいう彼を、優紀子は軽く鼻で笑った。

「ふ〜ん、そうなんだ。両親や親戚なんて綺麗事を言ってるけど、本心は彼女がいるからなんでしょ。ずっと私が待っていたのに、竹内君は他の女と付き合ってたんだ。それなら尚更、許せないわっ」
「ま、待ってくれよ。許せないって……どうしようもないだろ」
「そうやって逃げるんだ。竹内君ってほんとに卑怯な男だね」
「卑怯な男って、そういう言い方は無いだろっ。俺だって手紙の事が分かってたら、きっと付き合ってたさ」
「そんなの、後からなら何とでも言えるわっ!」
「お、おい。何しているんだっ」

 声を荒げ、ベッドから立ち上がった優紀子はスーツのボタンを外すと足元に落とした。更に白いブラウスのボタンを手早く外し、括れたウェストが魅力的な上半身を露にする。ブラジャーに包まれた胸の谷間がとてもセクシーで、男なら誰だって飛びつきたくなる白くて滑らかな乳房が覗き見えていた。

「岡神さんっ!」
「悪いと思うなら、私を抱いてよ。私の身体に竹内君を刻み込んで」
「そ、そんな事出来るわけないだろっ。落ち着いてくれよっ」
「あら、私は至って冷静よ。動揺しているのは竹内君の方じゃない」

 薄ら笑いする彼女に、美代は竹内の身体を芝居がかった風に、わざとらしくたじろかせた。

「ど、動揺なんて……」
「私を抱くのは嫌? この身体、普通の男なら結構そそられると思うんだけど。それとも竹内君って変わった性癖の持ち主なの?」
「そういう問題じゃないだろ。君は人妻なんだ。それに、さっきも言っただろ。俺には大切な彼女がいるんだ。だから岡神さんを抱くわけにはいかないよ」
「どうしようかな。このまま表に出て、犯されたって叫んでもいいんだけど」
「そ、そんな事、出来るはずないだろ」
「出来るわ、今の私なら。証拠を見せてあげる」

 躊躇いもなくブラジャーを外した彼女は部屋の窓際に立つと、勢いよくカーテンを開いた。小さなベランダの向こうに細い道路が見え、人影がまばらにある。

(い、嫌っ! 早くカーテンを閉めてっ)

 自分の身体に閉じ込められている優紀子は、支配権を持つ竹内に激しく抵抗した。

「ほら。あの若い男性、私に気づいたんじゃない? 顔を上げたままニヤけているわ」
(やめてやめて! 竹内君、早く胸を隠してっ)
「んふふ、じっと見てるわ。この胸が気に入ったのかしら?」

 わざとらしく両手で胸を持ち上げ、外から見えるように揺らす。その様子を見ていた美代が、竹内の声で「も、もう分かった」と呟いた。

「どう? 抱く気になった?」
「だ、だから……」
「竹内君に選択権なんて無いと思うんだけど」

 カーテンを閉め、ゆっくりと竹内に詰め寄った優紀子の牝狐の様な表情が印象的だ。男ならば、この状況で手を出さない筈はない――と思えるほど、彼女はセクシーに見えた。しかし、竹内の身体を操る美代にとっては何の魅力も感じない。同姓として「キモい女」としか映らないのであろう。
 竹内の身体が一歩後ずさると、優紀子は二歩前に進み、豊かな乳房を彼の胸元に密着させた。

「どうしたの? 女性からこんなに迫っているのに、竹内君はそそらないの?」
「お、岡神さん……」
「見てよ、この乳首。勃起してるでしょ。私、竹内君の事を考えると下半身が疼いて、オマンコがジュンと濡れちゃうの。ほんと、いやらしい身体よね」
「な、何言ってんだよ。そんな言葉……岡神さんらしくないだろ」
「私らしくないって、私の何を知っているの? もう子供じゃないの。大人の【雌】なんだから。ほんとは竹内君に捧げたかった処女も、今の旦那にあげちゃって。まあ、おかげでセックス慣れできたから、そういう意味では感謝しているかしら」
「そんな言い方したら、旦那さんが可哀想じゃないか」
「他人のこと、気にしてる状況じゃないんじゃない? ねえ、キスして。竹内君の舌で、私の口内を掻き回して」

 優紀子が彼の脇から両手を差し伸べ、大きな背中を抱きしめた。二つの乳房が押しつぶされ、ポロシャツ越しに胸に弾力が伝わってくる。
 美代がさほど意識しなくても、竹内の下半身は反応しているようだ。ズボンの前が大きく膨らみ、優紀子の下半身と密着している。

「竹内君も興奮しているのね。後で慰めてあげる。だから……」

 顔を上げ、顎を突き出した優紀子がゆっくりと目を閉じた。結構自然な状態で芝居が出来たと感じた美代も、竹内の顔を優紀子に近づけ、その唇を合わせた。