新婚生活を営む優紀子に訪れた奇妙な出来事。幸せだった彼女の生活が、ある日を境に一転する――。 ダークなTSF憑依作品になりますので、ご興味のある方のみお読みいただければ幸いです。




 ――身体を酷く汚された感じがする。
 乱れたスーツを整えた優紀子は、同じく身体を操られているであろう敏恵と共にオフィスへと戻ると、普段どおりに椅子へ座らされた。すると、ふっと身体の力が抜け、今日始めて自分の意思で動くようになった。

「あ……」

 顔の前で両手を開いたり閉じたりする。思い通りに動く瞳で敏恵を見ると、彼女は何が起きたのか分からないと言う表情で、椅子の後ろに立ち尽くしていた。恐らく敏恵も身体を開放されたのであろう。しかし、今は何も話しかけたくない。そう思いつつ席を立つと、化粧道具の入ったポシェットを片手に女子トイレへ小走りし、化粧台にある水道で口の中を何度も濯いだ。

「はぁ、はぁ」

 ハンカチで口を拭いた後、乱れた化粧を直す。敏恵とのディープキスで粘ついていた口内が綺麗になると、新鮮な唾液で潤される。それでも敏恵が歯の裏を舐め回り、舌を絡めてきた事を思い浮かべると吐き気を催した。

「敏恵があんな事をするなんて……。でも、彼女は自分がした事を覚えていないんだわ」

 敏恵が悪いのではない。それは十分に理解している。しかし、彼女の手が胸や股間を這い回り、一生したいと思わない同姓のキスを強要された事は紛れもない事実でもあった。

「どうしよう。私……敏恵をまともに見れない」

 鏡に映る自分の顔をしばらく見つめていた優紀子は、大きなため息をつくとオフィスへ戻り、敏恵を視界に入れない様にしながらキーボードを叩いた。
 その後、何事も無く昼休みになり、彼女から昼食の誘いを受けた。優紀子の視線は敏恵の瞳ではなく、普段どおりに喋る口に合っていた。あの口で乳首を舐められたのだ。

「ねえ優紀子。早く行こうよ」
「あの……。わ、私はいい。今日はお腹が空いていないの」
「でも、食べないなんて体調が悪くなるよ。何か買ってきてあげようか?」
「ううん。欲しくなったら自分で買うから」
「遠慮しなくていいよ。パンでも買ってこようか?」
「だ、だからいらないって言ってるでしょ」
「えっ……。そ、そうなんだ。じゃあ……食べてくるね」
「あ……うん」

 普段とは違う、少し強い口調の優紀子に躊躇った敏恵は、椅子に座ったまま俯く彼女を心配そうに見つめながら、他の社員たちと共にオフィスを後にした。

「ごめん敏恵……」

 もう一度心の中で整理する。彼女は何も悪くない。同じように身体を操られていただけなのだと。しかし、あの給湯室での事を思い出すと、また鳥肌が立った。

「はぁ……」

 何故こんな目に遭うのだろう。
 他人に対して、何か悪いことをしたのだろうか。思いを巡らせてみたが、恨まれる様な事をした覚えは無かった――


 本当は残業するはずだったが、また身体の自由を奪われた優紀子は、急用が出来たと嘘を付かされ、後ろめたい気持ちでオフィスを後にした。

(ね、ねえ。一体何を考えているの?)
「うふふ。知りたいでしょ? 私が誰なのか。もうすぐしたら教えてあげるわ」
(……ど、何処に行くの?)
「大人しく操られていれば、すぐに着くわ」

 優紀子の口調を真似る何者かは駅に着くと、いつもとは反対側のホームに立ち、電車に乗り込んだ。少しすると夕日がビルの間に沈み、オレンジ色の空が濃い青色に染まってゆく。
 電車が広い川を跨ぐ橋を渡ると、遠くに高架が見えた。その下には土手があり、濃い緑色に見える。きっと短い雑草が生えているのだろう。そう言えば、小学校の頃はあんな感じの土手で友達とよく遊んだものだ。ふざけあって転んでも、脛を怪我しても泣かなかった。一緒に遊んでいた片思いの男の子に泣き虫だと思われたくなかったからだ。今考えると、あの頃は勉強だけをしていれば良かった。人間関係や社会のしがらみなんて一度も考えたことが無かった。もう一度あの頃に戻りたいな――
 昔の事を思い出していると、徐々に眠気が襲い始める。精神的に随分と疲れたのだろう。優紀子は今、吊り革を持って立っているのだが、乗っ取っている人物によって身体が管理されているので、彼女の意識が眠ったところで倒れるわけではない。
 懐かしさと車内の心地よい揺れで眠りに入ろうとした優紀子だが、お尻に感じた不快な手つきに意識を覚醒させた。誰かが故意に触っている感じだ。振り向こうとしても、頭を動かすことが出来ない。彼女の下半身は痴漢であろう手から逃れようと、左右に動いていた。

(や、やだ。痴漢じゃないの。早く止めさせて)

 一応、彼女の身体は痴漢に対して抵抗を見せているようだ。お尻に触れた手を後ろ手で遠ざけている。しかし、その仕草は単に痴漢を喜ばせるだけのような――逆に言えば、誘っているようにも感じた。もし自分なら振り向いて相手の顔を睨み付けるのに。
 そう思っていると、痴漢の手がゆっくりとタイトスカートの裾を捲り始めた。

(ちょっと! 早く抵抗してよ。スカートが捲られちゃう)

 優紀子の手が、タイトスカートを捲る痴漢の手首を握り締めた。その手首の太さから、男性だと確信する。男の行動を、彼女のか弱い力で防ごうとするには無理があった。いや、本当なら抵抗できるのに、わざと手を抜いている様にも思える。手首を握り締めた男の手がタイトスカートを腰の下まで捲くり上げ、パンストに包まれたお尻を露にする。恥ずかしくて顔から火が噴出す思いの優紀子だが、彼女の表情は至って冷静であった。片手で吊り革を握ったまま、お尻をいやらしく這い回る手の動きを身体全体で感じている。男の手首を握っていた彼女の手が、捲れ挙がったタイトスカートを引き下ろそうとした。しかし、男の空いている手がスカートの裾を掴み、優紀子の抵抗を防いだ。そして、一度お尻に食いついた大きな手がその柔らかさを楽しみつつ、下へと降りていった。
 耳元に、男の荒い息が聞こえてくる。

(ダメっ! 触られちゃうっ)

 そう思った矢先、男の手が股の間へ入り込み、パンストの上から膣口を、そしてクリトリスの辺りを執拗に弄り始めたのだ。

(嫌よ。早くやめさせてっ)

 必死に叫ぶ優紀子だが、その口から出た言葉は彼女の意思とは正反対の内容であった。

「あっ……ん。駄目よ、そんなに弄っちゃ気持ちよくなっちゃう」
(なっ! 何言ってるのっ)

 鼻に掛かった甘い声が男の耳に届くと、後ろから更に激しい息遣いが聞こえた。太い指が滑らかなパンストの表面を這い回る。その、気持ちよいとは到底思えない愛撫から一刻も早く逃れたいと思い、声にならない声で必死に叫んだ。

(何してるのっ。気持ち悪いから早く痴漢の手を止めて。聞いてるのっ?)

 しかし、彼女の身体はその場から離れようとはせず、男を素直に受け入れ始めた。逃げるように動かしていたお尻を止め、男の手が触りやすい様に後ろへ突き出すと、足を肩幅ほどに開いた。

「んふ。触るだけならいいわよ。あなた、もう硬くなっているんでしょ。私がこの手で触ってあげる」

 信じられないことを口にした優紀子が、後ろ手で男の股間を探り、ズボンの上から硬くなった肉棒を摩り始める。その行為に驚いた男だが、優紀子を痴女だと思ったのだろうか、細い指達に股間を押し付け始めた。

(い、嫌っ! 私がこんな事するなんて)
「待って。そんな風に触るんじゃなくて、直接触って欲しいの。ほら……」

 横顔を見せる程度に軽く振り向き囁いた彼女の手が、捲れたスカートの下、パンストのゴムを引っ張った。無言の男が、その中に手を忍ばせる。何ともおぞましい感覚に身の毛がよだつ思いだったが、実際の彼女は至って普通であり、その表情にはいやらしい笑みさえ浮かんでいた。太い手がパンストの中、そしてパンティの中に侵入し、お尻の割れ目に沿って降りてゆく。窮屈な空間を押し広げるように指を動かし、手首を捻りながら侵入される様子を感じながら、優紀子の手が再度男の股間を撫で始めた。

(そんな……。さ、触られちゃう。直接触られちゃう……)
「そう。もっと奥まで手を入れて。んふ……オマンコに届いちゃった。あ……指を入れる前に、クリトリスを触って」

 男の中指の第一関節が膣内へ入り込むと、優紀子の口からそんな言葉が囁かれた。興奮する男は、更にパンストの中に腕を潜り込ませ、彼女の言うとおりクリトリスを弄り始めた。まだ濡れていないクリトリスを弄られると少し痛みを感じる。だがそれはほんのしばらくの事で、男の指は快感を覚え始めた彼女の膣から溢れ出る愛液でいやらしく汚れた。その潤滑剤によって、男の指が滑らかに動き、クリトリスを執拗に擦り上げる。

(ううっ。知らない男に触れたなんて……お願いだから止めさせて。い、嫌……ぁ)
「はぁ、はぁ。あっん……。この身体、随分と感じてきちゃったみたい。そんなに擦っちゃ、エッチなお汁が一杯出ちゃうわ。ねえ、あなたもガマン汁が出ているんじゃない?」

 後ろ手のまま、ズボンのファスナーを下ろした優紀子は、トランクスの中から器用に肉棒を引きずり出すと、直接握りながらゆっくりとしごいた。男の「うっ」という小さなうめき声が聞こえ、クリトリスを弄る指の動きが鈍くなる。男はむき出しとなった肉棒を他人に見られないよう、優紀子の背後に密着した。細くしなやかな指が肉茎を上下にゆっくりと、しかし力強く擦りあげる。その快感に、男の指が完全に止まった。

「んふふ。ガマン汁で私の手がヌルヌルしてるわ。私にしごかれるの、そんなに気持ちいいの? イキたいならイッてもいいのよ。その代わり、あなたももっと、この身体を弄ってよ」

 優紀子の手が、他人に悟られない程度に少し早く動き始める。男の指がビクンと震えた後、先ほどよりも激しくクリトリスを弄り始めた。指の腹を押し付けるように、前後左右に動いている。

「はぁ、はぁ、あ……ん。す、すごいわ。感じすぎてオマンコがぐちょぐちょになってる」

 その言葉に、男の中指が膣内へと減り込んだ。更には薬指までもが入り込み、二本の指で掻き回される。その動きに合わせ、いやらしい水音がパンストの中から聞こえて来そうだった。

(やっ……。あっ、そんなっ……だ、駄目よ。中……掻き回して……んんっ!)
「イ、イイッ! 知らない男の指がオマンコに入っているなんて。私って、ほんとは順二以外の男に弄られても感じるいやらしい女なの」
(なっ……そ、そんな風に言わないで。あなたが身体を操っているから……)
「ううん。この身体は快感に素直なだけ。別に相手が誰でも欲情できる身体なのよ」

 独り言のように呟いた優紀子の手は亀頭を撫で回し、カリ首を引っ掛けるようにしながら肉棒全体をしごいていた。目の前にいる美人がここまでするなんて。おそらく、男の人生の中で、もっとも興奮する時を過ごしているのだろう。背後から「イ、イクッ」と言う小さなうめき声が聞こえた。

「あっ、んん……」

 彼女は一度肉棒を開放すると、後ろ手のまま亀頭を紺色のスーツの袖口に入れた。そして亀頭が袖口に隠れた状態でより一層強くしごいてやった。

「どう? これなら精液が飛び散らないでしょ。思い切り出してもいいわ」

 そう囁いた瞬間、男の身体がビクビクと震え、短く「うっ、うっ……」と呻いた。袖の中で精液がほとばしり、スーツの裏生地と白いブラウスに染み込んでゆく。
 彼女は後ろで朽ち果てた男の荒い息を聞きながら肉棒を下から絞るように握り、開放した手を目の前で眺めた。

「うわ、ネバネバして気持ち悪いな」

 更に袖口を覗き込み、いやらしく染み付いた精液と生臭い匂いに顔をしかめる。しかし、その表情はすぐに笑顔へと変わった。下腹部に力を入れ、まだ膣の中に入り込んだままの指を軽く締め付ける。

「うふふ。気持ちよかったでしょ? 私、次の駅で降りるからそろそろオマンコから指を抜いてくれない?」

 半ば放心状態だった男が、パンストの中からゆっくりと手を引き抜く。すると彼女は捲れあがったタイトスカートを元通りにし、身なりを整えた。一度も男の顔を見なかったのは、どんな男に弄られたのかを優紀子自身にわざと教えないためだろう。
 名残惜しいのか、肉棒を仕舞った男がタイトスカート越しにお尻を撫で回してくる。その手を払うことなく、しばらく電車に揺られていた彼女は、駅に着くと無言で電車を降り、改札口をくぐった。

「どうしたんだ? ショックで言葉もでないのか?」
(……こんな酷い事。どうして平気で出来るの?)
「酷い事? 別に大した事じゃないだろ。それとも、最後までイケなかった事に腹を立てているのか?」
(なっ……。だ、誰が……)
「あと一分も弄られていたら、この身体はオーガズムを迎えていたのになぁ。ま、後で何度でもさせてやるよ」
(も、もうやめて。私の身体、返して)
「返してやるさ。事がすべて終わったらな。ふふふ……」

 優紀子は不敵な笑みを浮かべると、女性らしい歩き方で繁華街を抜け、細い路地に入っていった。