高校一年の男子生徒二人が高校三年の生徒会長で眼鏡っ子の幹川恵美の体を乗っ取り、エッチな事をするお話になる予定です。 小説の挿絵として、チョウダ店さんの「著作権フリーPSD立ち絵キャラクター素材集」ときまぐれアフターさんのフリー素材を利用させていただいております。
 学校や生徒のため、放課後になっても一生懸命動き回る生徒会長と親しくなる事は難しい。同じクラスの女子生徒や先生という立場ならともかく、知人でもなければ学年も違う尾原と蕗谷には無縁の人であった。
 茶色いストレートの髪に、眼鏡越しに見える緑の瞳。真面目で大人しい雰囲気を持つ彼女は大人しい性格からか少し指導力に欠けるが、先生からの信頼も厚く、周囲の生徒達からも親しまれていた。
 今は一ヵ月後に迫った文化祭のため、毎日生徒会役員と共に会議や調整、そして準備をしており、二人が立ち入る隙は全くなかった。
 彼等は俗に言う「眼鏡っ子」好きだ。眼鏡を掛けた女の子をこよなく愛する人種で、「眼鏡っ子」に「お姉さん」という属性がプラスされると異様に萌えるタイプらしい。更には、彼女が穿くスカートと黒いニーソックスが作り出す絶妙な「絶対領域」は、二人の心を虜にした。
 そんな二歳年上の生徒会長、幹川恵美は尾原と蕗谷にとって理想の女性であり、彼女と親しくなりたかった。いや、極論を言うとセックスをしたかった。もちろん、面識のない彼等が「僕と付き合ってください」と話し掛けたところで相手にされる訳も無く、セックスなどと言う言葉を持ち出そうものなら一生軽蔑されるであろう。軽蔑されるだけならまだしも、真面目な彼女にセクハラ扱いされ、停学や退学なんて事になりかねない。生徒同士でセクハラなんて聞いた事がないが、彼女の立場や先生達との信頼関係があれば何だって通りそうな気がする。
 そこで彼等が考えたのは、彼女の意志に関係なく強引に親しくなる事だった。強引にと言っても、縛ってレイプするわけでもなく、薬で眠らせたところを襲うわけでもない――が、後者の内容は当らずとも遠からずといったところか。
 尾原がネットで手に入れた怪しげな薬は、自分の体から魂を分離する効果を持っている。体と言う器から飛び出した魂は物理的な制限を受けず、自由に飛び回る事が出来るらしい。そして、他の器――即ち他人の体に入り込む事が可能となるのだ。元々体を所有していた魂を眠らせ、代わりに体を操る。そんな奇妙な薬を手に入れた尾原は、蕗谷と共に欲望を満たすための計画を実行しようとしていた。
 生徒会室がある四階建ての校舎。その三階の廊下で二人は話をしていた。

「尾原。そろそろ準備するか」
「そうだな。他の生徒も殆どいなくなったし、保健の有田先生も帰ったみたいだから」
「保健室、開いているのかな?」
「閉まっていたけど、開けといた。職員室から鍵を持ち出したんだ」
「そんな事して、他の先生に何か言われなかったか?」
「保健室に忘れ物をしたから鍵を貸してくださいって頼んだら、すぐに貸してくれたよ」
「ふ〜ん、それなら良かったけど。薬も持っているんだな?」
「当たり前だっつ〜の。忘れるわけないだろ」
「だよな。じゃあ俺は幹川さんを一人にして時間を稼ぐから、その間に頼むぞ」
「蕗谷、失敗するなよ。他人がいると怪しまれるんだから」
「緊張するよ。初めて幹川さんと喋るんだから」
「俺だって緊張してるさ。成功するか分からないんだからな」
「まあ、薬を信用するしかないか。でも、尾原はそれでいいのか? お前は幹川さんとセックスできない事になるけど」
「俺さ、幹川さんとセックスするよりも一緒になる方がいいんだ。想像しただけで勃起するよ」
「お前がそう言うならいいけど。俺だけ楽しむのも何だか申し訳ないと思って」
「いや、多分俺の方が得する事になると思うから構わないって。じゃ、保健室に行ってくる。十分後……それくらいあれば大丈夫だから、上手く幹川さんを誘き出してくれ」
「分かった。はぁ、ドキドキするっ」

 尾原は軽く手を挙げると、一階の保健室に繋がる階段を下りていった。その後ろ姿を見送った蕗谷は、何度も深呼吸しながら腕時計のデジタル表示が一秒ずつ増える様子を確認した。
 廊下の窓からグランドを眺めると、部活を終えた野球部が地面を綺麗に均している。まだ夕焼け空にはなっていないが、西に傾いた太陽がほんの少しだけ赤らいでいるように思えた。
 彼が幹川恵美を初めて見たのは、半年ほど前の入学式だった。体育館で校長先生が話をした後に、生徒会長の彼女が短い歓迎の挨拶をした。演壇で喋る彼女の姿を見た瞬間、蕗谷の鼓動は高鳴った。綺麗な顔立ちに澄んだ声。眼鏡がとても似合っていて、緑の瞳に吸い込まれそうだった。短いスカートの裾が揺れると、黒いニーソックスとの隙間、即ち「絶対領域」が波打っているように見え、蕗谷をときめかせた。そして、彼と同じ感情を持っていたのが同じクラスの尾原だった。彼等はすぐに意気投合し、親友と呼べる仲になったのだ。
 恵美が歩く姿を眺めては、「今日の絶対領域は微妙に狭いな」とか、「眼鏡が少しずれているところもそそられるよな」など、彼女の行動を遠くから眺めて楽しむ毎日。もちろん、同じような容姿を持つ女子高生はたくさんいるのだが、彼等がターゲットにした生徒会長は、ベストツーを大きく引き離したベストワンだった。
 その幹川恵美を間近で見る機会が訪れる。それだけではなく、彼の最終目的を果たす事が出来るのだ。蕗谷は腕時計を見つめ、五分ほど経った事を確認すると大きく深呼吸した。

「そろそろ行かないと。うわぁ〜、めちゃ緊張するっ!」

 階段を上がる足が震えているのが自分でも分かる。一歩一歩踏みしめながら階段を上りきり、少し廊下を歩いた扉の前で再度深呼吸した。

「よ、よし……」

 手に汗を握り締めながらノックすると、「はい」という女子の返事と共に扉が開いた。幹川恵美が一メートル以内の至近距離で立っている。視線が合うだけで心臓が破裂しそうだ。

「何か用?」
「あ、あ……あの……」

 緊張して上手く言葉が出ない。蛇に睨まれた蛙の様に固まった蕗谷を見て、恵美は優しく微笑みかけてくれた。

「大丈夫? 生徒会に用事があるんでしょ」
「は、はい。そ、その……ぶぶ、文化祭の件で少々……」
「うふふ、少々だなんておかしい。一年生ね、そんなに緊張しなくてもいいのよ。ちょっと散らかっているけど、中に入って」

 彼女は大きく扉を開き、生徒会室に招きいれようとした。部屋には数人の男女生徒がパソコンで資料をまとめていたり、コピー機で印刷したりしていた。

「どうしたの?」
「あ、いや。その……だ、誰にも聞かれたくないんです」
「……そうなの? それなら廊下で聞くけど。ちょっとだけ部屋を開けるけど、作業を続けてて下さい」

 誰に言うでもなく、部屋に言葉を投げかけた恵美は扉を閉めた。

「ここでいい?」
「そ、その……か、階段の下でもいいですか?」
「いいよ。じゃあ三階に下りる? きっと誰もいないと思うから」
「は……い」

 恵美はクスッと笑うと、「付いてきて」と先に歩き始めた。不意に香る彼女の茶色い髪がたまらなく素敵に思えた。緊張した趣で後ろ姿を目で追う。歩くたびに左右に揺れるスカートの裾。そして、ニーソックスとの隙間から見える二センチ程度の白い太もも。今日の絶対領域も完璧だった。
 躓きそうになりながら階段を下り、彼女と向かい合った蕗谷はゴクリと唾を飲み込んだ。鼓動の高鳴りが収まらない。

「ここなら大丈夫よね」
生徒会長乗っ取り0

 蕗谷は何も言わずに頷いた。眼鏡越しに優しく見つめられると、頭の中が真っ白になってしまう。何かを言わなければ彼女は呆れて生徒会室に戻ってしまうだろう。拳を握り締めた手に、更なる汗が滲み出てきた。彼女に視線を合わせ、すぐに俯く。それを三度ほど繰り返した後、もう一度顔を上げた彼は、恵美に異変が起きていることに気が付いた。
 顔から血の気が引き、眉を歪めながら苦しそうな表情をしている。何かを言いたいのか、口をパクパクと開いているが、言葉は出てこなかった。体を硬直させ、時折ビクンと震えている。
生徒会長乗っ取り05

「だ、大丈夫ですか?」と声を掛けたかったが、極度の緊張で言葉を発する事が出来なかった。途切れ途切れの息は、しゃっくりをしているように思える。しかし、彼女の表情から察するに、そんなに生易しい事が起こっている状況でない事は明らかだ。
 視線が定まっていない。まるで立ったまま気を失っているように見えた。実際に彼女は胸に当てていた手を体の横にだらりと垂らし、いつ倒れてもおかしくない状態になっている。そして数秒後、指先がピクピクと震え、体がゆっくりと後ろへ傾いていった。

「あ……危ないっ!」

 危険を感じた蕗谷が緊張を破り、咄嗟に声を荒げると、恵美は大きく体を震わせ、後ずさりするような感じで体勢を整えた。
 顔を見ると、先ほどまで虚ろだった視線がしっかりと蕗谷を捉えている。開いていた唇が閉じられ、生気が戻っていた。先ほどまで苦しそうな表情をしていたのが嘘のようだ。

「だ、大丈夫……ですか?」

 鼓動を高ぶらせ、肩で息をする蕗谷が問いかけると恵美は一度俯き、自分の体をしばらく眺めていた。その後、彼を見つめながらゆっくりとスカートの裾を掴んだ。そして、イタズラっぽくウィンクしながら恥かしげもなく捲り上げたのだ。

「なっ!」
「んふっ! じゃあ保健室に行きましょうか。蕗谷クン!」
生徒会長乗っ取り2

 全く面識のなかったはずの彼女に名前を呼ばれた蕗谷は唖然としながらも、その視線はスカートから見えた白いパンティに釘付けとなっていた。

「何、突っ立ってるの? いつまでもここにいると、他の生徒会役員が探しに来るわよ。ほら、早く行こうよ」
「えっ、えっ……」
「成功したんだ。俺だよ俺、尾原だよ。幹川さんの体を乗っ取ったんだって」
「……あっ!」
「ようやく分かったか。ほら、早く行くぞっ!」

 不意に手首を掴まれた蕗谷の顔が真っ赤に染まった。

「何赤くなってんだよ」
「だ、だって……」
「いいから早く来いって」
「は、はい」

 まだ頭の中が整理できていない蕗谷は、妙に元気な恵美に引っ張られながら保健室へと下りて行ったのであった。