ファスナーが見える胸元を片手で隠しながら文男の家に向かう北斗は、しきりに周りを気にしながら歩いた。

「俺って今、皆に女子高生だと思われているんだよな。あ、近所のオバサンだ……。いつもは挨拶してくれるけど、今日はシカトだな」

 彼が近所に住む中年女性に視線を送っても、彼女は瑞菜の容姿を持つ北斗とは視線を合わさない。自分の体ではない事を改めて認識しつつ最寄の駅に着くと、スカートのポケットに入れていた財布から定期を取り出し、自動改札口を通った。特に不審がられる事は無く、初めての女性専用車両の乗り込む。
 周りには北斗と同じセーラー服を着た女子高生達が数人乗っていた。興奮しながらドア付近に立ち、動き出した車窓を眺める。

「たまんないよなぁ。俺、堂々と女性専用車両に乗っているんだ。しかも周りには同じ制服を着た女子高生がいるなんて」

 怪しまれないように女子高生達を見ながら、彼女達が話している会話を聞く。先生の悪口や彼氏の話が殆どだ。さり気なく胸元を隠しながら乗っていると、人が近づいてくる気配がした。

「あ、やっぱり瑞菜じゃない。部活、どうしたの?」
「えっ!」

 肩を叩かれ振り向くと、同じ制服を着た女子高生が不思議そうな表情をして立っていた。面識の無い彼女に何と答えればよいのか分からない。

「サボったの?」
「あっ……え、えっと……」
「ん? 今日は試合に向けた練習があるから遅くなるって言ってたのに」

 彼女は首をかしげている。恐らく、喋り方からして友達か先輩だろう。

「あ、あの……」

 面白い事に、慌てた彼が着ているタイツの額から冷や汗が出ている。まさに自分の皮膚と同化している感じだ。手にも汗が滲み出ているのが分かる。額の汗を見て「どうしたの? 気分でも悪い?」と声を掛けてくれるものの、彼が口にした精一杯の言葉は「そ、その……ひ、人違いです」だった。

「えっ……うそ?」
「わ、私……瑞菜っていう名前じゃありません」
「うそでしょ。私達と同じ制服着てるし、その顔ってどう見ても瑞菜じゃない。声だって同じだし。からかってるの?」
「そうじゃなくて、俺……っていうか私、ほんとにそんな名前じゃないし、人違いなんです」

 目を見開き、信じられないといった表情をする彼女は「冗談でしょ。私が分からないっていうの?」と問いかけてきた。

「は、はい……」
「溝柿だよ。溝柿幸恵だよ」
「は……はじめまして」
「うそうそっ。何年何組なの?」
「えっ?」
「瑞菜じゃないなら……あなた、私達と同じ高校でしょ。何年何組?」
「え、えっと……」

 徐々に追い詰められてゆく感覚がとても嫌だった。素直に瑞菜として接していれば、適当に誤魔化せただろうか。そんな事を思っていると、何とか文男の家がある最寄の駅に辿り着いた。

「あの。ここで降りるから」
「えっ! ちょ、ちょっと……」

 自動ドアが開いた瞬間、一目散に階段を下りた北斗は改札口を出ると、ようやく振り向いた。先程の女子高生は追いかけては来ていない。

「焦ったぁ。まさか瑞菜ちゃんの知り合いに会うなんて。でも、この時間は高校から帰ってくる生徒が多かったんだな。まあ、ここまで来れば大丈夫だと思うけど」

 額の汗を袖で軽く拭き取った北斗は、また胸元を隠しながら文男の家に向かった。歩き始めてから十分ほどだろうか。住宅街にある彼の家に辿り着くと、周囲に人影が無い事を確認してからインターホンを鳴らした。
 文男は北斗と同じ大学のサークル仲間だ。背丈は北斗と殆ど変わらないが、相撲が好きな彼は小学生の頃からどっしりとした体格で、体重は標準の子供よりも一.五倍ほど重かった。そんな文男は、高校に入ってから怪しげな研究を始めた。そして、実験が好きな彼は人が思いつかないような道具や薬などを自分の力だけで生み出した。夜中に菓子を食べながら寝る間も惜しんで実験していたため、本来は披露でやつれるべき体も、今では百キロに迫る勢いだ。
 暑苦しい男。いつも汗を掻いていて、体臭が臭そうな男。そんなイメージの彼が出迎えてくれると思っていた北斗は、玄関の扉を開いた人物に言葉を失った。

「来たか、入れよ」
「えっ……」

 目の前に現れたのは、北斗が着ている制服と同じセーラー服を着た女子高生だったからだ。肩ほどまである青い髪に茶色い瞳がとても印象的に見えた。

「早く扉を閉めろって」
「えっ、えっ……。き、君は?」
「いいから早く閉めろよ」
「あ……はい。分かりました」

 彼女に急かされ、思わず敬語で喋った北斗は急いで家に入ると玄関の扉を閉めた。

「俺の部屋に行こう」
「お、俺の部屋って……」
「いいからいいから」

 彼女は早足に階段を上ってゆく。訳が分からない北斗も靴を脱ぐと、彼女の後を追って階段を上った。

「やっぱり胸元からファスナーが見えるんだな」
「あっ。こ、これは……」

 文男の部屋に入った北斗が慌てて胸元を隠すと、彼女は「へへ。隠さなくてもいいって。俺だよ、文男だよ」と笑いながら答えた。

「ふ、文男?」
「ああ」
「マ、マジ……で?」
「そうだよ。お前と同じように、タイツを着ているんだ」
「だ、だって……胸元にファスナーが付いていないじゃないか」
「ああ。俺が着ているタイツは最新バージョンだから、ファスナーを見えなく出来るんだ」
「……ほんとに文男なのか?」
「そうだって。信じないならタイツを脱いでやるけど、むさ苦しい裸なんて見たくないだろ?」
「そんな台詞を口にするって事は、やっぱり文男なのか」
「信じたか?」
「ま、まあな。しかし、声としゃべり方がアンバランスで気持ち悪いな」
「それはお互い様だろ」
「……で、お前が着ているその女子高生は誰なんだ?」
「ああ。これ、俺の妹だよ」
「へっ?」
「唯香って言うんだ。なかなか可愛いだろ。たまたま北斗の従妹と同じ高校だって分かったから、その制服も用意できたんだぜ。唯香の名前を借りてこっそり買ってたんだ」
「か、確信犯だな。でも、瑞菜ちゃんと文男の妹が同じ高校だとは全然知らなかったよ……っていうか、妹がいたこと自体、知らなかったし」
「言ってなかったっけ」
「聞いてないぞ。一言も」
「あっそ。ま、そんな事はどうでもいいじゃないか。それよりもどうだ? そのタイツの着心地は」
皮モノ女子高生4
「ああ。これってすげぇよな。随分と背丈の違う俺の体がすっぽりと入っちまうんだから。それに、自分の皮膚と同じような感覚なんだ。神経が繋がっていて、まるで同化しているみたいだよ」
「へへ。我ながら素晴らしいタイツを開発したもんだよ」
「でも、こんなタイツをどうやって作るんだ?」
「お前が持ってきた髪の毛と写真から情報を得たんだよ」
「髪の毛と写真って……あれだけで?」
「そうさ。髪の毛からはDNAが取れるし、写真からは今の彼女の容姿が分かる。それらの情報があれば、このタイツを作る事が出来るんだ」
「じゃ、じゃあさ。アイドルのタイツを作る事もできるのか?」
「本人の髪の毛さえあればな」
「へ、へぇ〜。お前ってすげぇな」
「幾らでも褒めてくれて構わないぜ。へっへっへ」

 妹である唯香のタイツを着た文男は、彼女の容姿には似合わない笑い方をした。

「でも、どうして俺にもファスナーが消えるタイツを貸してくれなかったんだよ」
「そりゃ、今はこの二着しかないからさ。作るためには金と時間が必要なんだ」
「……そうなんだ」
「いいだろ。お前が希望していた従妹の体になれたんだから。そのタイツ、女のオーガズムだって味わえるんだ」
「あっ! そうそう、びっくりしたよ。タイツを着る時にちょっとクリトリスに触ってみたんだけど、俺の体じゃ感じる事が出来ない快感っていうか、感覚があったんだ」
「女のオーガズムはそんな程度じゃないぜ。気が狂いそうになるほど気持ちいいんだ。まるで麻薬みたいにさ」
「文男は体験したのか?」
「ああ、何度も何度も体験したさ。唯香や、唯香が連れてきた友達の体をコピーしてさ! ああ、それから大学の女子達の体も楽しんだよ。足元に落ちている長い髪の毛を片っ端から拾い集めて、分析結果が俺好みの女性ならタイツにしてオナるんだ」
「す、すげぇや……」
「それだけじゃないぞ。例えば唯香で説明すると、髪の毛の情報から中学生の唯香や、大人に成った唯香を作り出す事が出来るんだ。兄が言うのもなんだけど、大人になった唯香の体はなかなかセクシーだったな」
「そんな事まで出来るのか。じゃ、じゃあ瑞菜ちゃんが大人になった状態のタイツも作れるって事か」
「簡単に作れるぞ」
「やっぱりすげぇや。お前って天才だよ」
「だから、何度でも褒めていいぞ」

 唯香の顔で嬉しそうに笑う文男を見て感心しっぱなしの北斗は、制服の胸元を引っ張り、改めてタイツの存在を確認した。

「これってタイツなんだよなぁ。自分で着ていても信じられないよ」
「へへへ。折角だからこの姿のままでレズろうぜ」
「えっ……」
「女の体については俺の方が先輩だから、気持ちいいように弄ってやるよ。バイブも持っているから、膣の快感も味あわせてやるぞ。そのセーラー服を脱げよ」
「こ、ここでやるのか?」
「俺の部屋だから安心だろ? 妹は友達の家で試験勉強をしているから最近は帰りが遅いんだ。だから今日を選んだのさ」
「そうか。それなら……でも、すげぇドキドキする。興奮するよ」
「俺もオナニーしかやった事が無いから、こうして女同士で弄り合うのはドキドキするよ。ほら、早く脱げよ」
「あ、ああ。分かった」

 こうして北斗はセーラー服に手を掛け、唯香の姿をした文男の前で全裸になった。