この作品は、同人誌「入れかえ魂Vol.3」「入れかえ魂Vol.4」に掲載された「どうにもならない(前編)」と「どうにもならない(後編)」となります。
先生が大好きな高校生が、彼女の体を乗っ取り、色々な悪戯を行います。また、その性質上ダークな展開になりますので、読みたいと思われる方のみ、閲覧くださいませ。
先生が大好きな高校生が、彼女の体を乗っ取り、色々な悪戯を行います。また、その性質上ダークな展開になりますので、読みたいと思われる方のみ、閲覧くださいませ。
(ねえ先生、ちょっと遊びすぎて時間がオーバーしたね)
職員室、智恵がカーディガンを着て帰る用意が終ると、頭の中に吾郎の声が聞こえた。
「…………」
その問いかけに答えない智恵は、少し赤くなっている目で職員室を出ると、そのまま帰ろうとした。
(あれ、まだ池上先生が来ていないのに)
「…………」
(なあ先生。もしかして先に帰ろうとしているの?)
「…………」
何も言わず校舎を出て、正門へと向かう智恵。
(そんな事させないって)
ピクンと智恵の体が震える。すると、体が反転してまた校舎の中へと戻ってしまった。そして、職員室に入ると壁に掛けてある行き先掲示板を見て池上先生の居場所を確認した。自分の席に着き、徐に内線電話を掛ける。
「……あ、もしもし。池上先生?村内です」
「あ、村内先生。ごめんなさい、もうこんな時間になってたのね。すぐに戻るから」
「別に急がなくても構わないわよ」
「うん。もう一区切りついたから。待っててね」
「はい」
吾郎が智恵のフリをして池上先生と電話のやり取りを行った。智恵は何も言わず、ただ吾郎の行動を見ているだけだった。
しばらくして、池上先生が職員室に戻ってきた。それを確認した吾郎が、体の主導権を智恵に移す。
「ごめん、待たせちゃって」
池上先生が智恵の前まで歩いてきて、謝った。さすがに返事をしないわけにはいかない智恵は、「う、うん……いいよ」と曖昧な返事をした。
「それじゃ、行きますか!」
「……え、ええ……」
吾郎が仕組んだ池上先生とのイベント。
飲みに行く気分じゃないのに……
池上先生が帰る用意を済ませ、セカンドバックを持って智恵の前に来ると、
「お財布の中身は入ってないからね」と言った。
「……う、うん」
「……もしかして怒ってる?」
智恵が浮かない顔をしているので、池上先生は智恵の耳元でそう囁いた。
「そんな事ないよ」
「そう。でも、雰囲気暗いから」
「そうかな……」
「うん。そうそう」
「……ごめんね」
「どうして謝るのよ。とりあえず出ましょうよ」
池上先生がそっと智恵の腰に手を回し、職員室を出るように促す。智恵は動こうとはしなかった……が、勝手に足が動き始め、池上先生と共に職員室を出てしまう。これも吾郎の仕業だろう。
「ほんとに怒ってない?」
「うん……怒ってないんだけど……」
「何?」
「うん……」
「何かあったの?」
廊下を歩き、校舎を出て正門へ向かう二人。智恵は暗い表情で池上先生と歩いていた。いや、歩かされていた。首から上は動くのに、それ以外は自分の意思で動かすことが出来ない。
「わ、私……」
「え?」
「私は……」
もう一人で耐えるのは嫌。池上先生に真実をしってほしかった。だから、本当のことを池上先生に話したかった。私は藤田吾郎に操られているのだと。藤田吾郎が私の体に乗り移り、好き勝手なことをしているのだと。
でも……
「……お腹が空いたからちょっと機嫌が悪いだけよ。池上先生、早く行きましょ!」
智恵の口から出たのはその言葉だった。そんな事を言いたいのではないのに。
「そうなんだ。それなら駅前のおしゃれな居酒屋でどう?」
「そうね、そこでいいわ。あの居酒屋は雰囲気が良くて女性の客が多いものね」
「そうそう!」
先ほどまでの暗い表情が一転、やけに明るくなる。また意識の奥に追いやられた智恵。何も出来ない、言わせてくれない。それを改めて認識した智恵は、意識の中で泣いていた――
「ねえ智恵、最初はビールにする?」
「私はオレンジジュースでいいわ」
「何それ? 居酒屋にきてオレンジジュースなの?」
「うん。由希恵はビールにしなよ」
「智恵が飲まないなら、私もやめとこうかな」
「そんなのつまらないよ。今日は私のおごりなんだから」
「それじゃあ一緒に飲もうよ」
「う〜ん……でもビールはねぇ……」
「じゃあ一杯だけ付き合ってよ」
「仕方ないなあ。じゃあ一杯だけね」
「うん!」
先生同士の関係から、プライベートな関係に切り替わった二人。学校では苗字で呼んでいるが、こうやって二人きりになったときは下の名前で呼び合っているのだ。
「すいませ〜ん」
池上由希恵が店員を呼んで注文を始める。
「えっと、ビールを二つ」
「生中でよろしいですか?」
「ええ。それから……」
由希恵が続いて食べ物を注文する。
「ねえ智恵、何食べる?」
「私、鳥の唐揚げとポテトフライにウィンナーの盛り合わせがいいわ」
「えっ!? と、鳥の唐揚げ?」
「うん」
「ダイエットしてたんじゃないの?」
「今日は食べたい気分なの」
「カロリーの高いものばかり……」
「たまにはいいでしょ」
「いいけど……」
由希恵が首をかしげながら智恵を見ている。
智恵はニコッと微笑み返すと、
「それと軟骨の唐揚げもね」と追加注文した。
普段は絶対に頼まないものばかりだ。いつもならサラダや魚系の品ばかり注文するはずなのに。もちろんそれは、吾郎が食べたいものを注文しているからで智恵の意思ではない。智恵の体に乗り移って幾らか日数が経ち、ダイエットをしているは分かっているのだが、そんな智恵の努力はまったく考えていないようだ。
「じゃあ後は、トマトサラダを一つ」
「承知いたしました」
店員がその場で携帯端末を押してオーダーを入力すると、二人のテーブルから去って行った。
「ねえ、本当に食べられるの?」
「もちろん。だから頼んだんじゃないの」
「結構頼んだけど……私はそんなに食べないわよ」
「いいのいいの。気にしないでよ」
「それなら……いいけど……」
しばらくすると、二人のテーブルに生ビールの入ったジョッキが運ばれてきた。
「それじゃあお疲れ様」
「お疲れ様」
ジョッキを持ってゴクン、ゴクンと二口ほど飲んだ由希恵。それを見て苦笑いした智恵が、ビールを一口飲んだ。
智恵の記憶からビールの味は分かっていたのだが、実際に飲んでみるとやはり美味しいとは思わなかったようだ。
ビールの苦味が口の中一杯に広がる。
「あ……」
ジョッキを置いた智恵は、ピクッと体を震わせた。
「ん? どうしたの」
「え……あ……な、何でも……ない」
「そう。ねえ聞いて! この前C組の福本さんが……」
由希恵が楽しそうに話を始めた。吾郎によって、表に出された智恵の表情が暗くなる。
「でね……。智恵?」
「……え? な、何?」
「また落ち込んでるの?」
「あ……ううん。ち、違うわ」
「今日の智恵は何かおかしいわね。明るくなったり暗くなったり……」
「…………」
「やっぱり何かあった?」
その言葉に、少しためらいの表情を見せた智恵は、ギュッと拳を握り締めた後、「……た……助けて由希恵っ! 私っ……」と言った。
「えっ!?」
と聞きなおした由希恵。急に何を言い出すのかと、驚いた表情をしている。
「ひっ……ううん。何でもないよ」
「い……今、た、助けてって……」
「ううん、違うのよ。何でもないから気にしないで。それよりさっきの話の続きをしてよ」
「え……で、でも」
「ごめんね、変な事言って」
「……う、うん……」
由希恵は怪訝な顔をしながら智恵を見た。すると、智恵は「んふっ!」と言ってウィンクすると、ペロッと舌を出して笑顔を作った。
「…………」
今日の智恵はよく分からない。そう思った由希恵は、先ほどの続きを話し始めた。
しばらくすると、テーブルの上に注文した料理が並ぶ。その脂っこい料理を美味しそうにほおばる智恵を見ながら、由希恵はふぅとため息をついた。
「そんなに脂っこい物をよく食べるわねぇ。まるで別人みたい」
「そうかしら? 本当はいつもこんな料理を食べたかったのよ」
「そうなの?」
「そうよ。クスッ」
智恵は口紅が落ちるのをまったく気にしない様子で、唐揚げの油を口の周りにつけながらパクパクと食べていた。
(やめて……そんなに食べたら……)
智恵が意識の奥で悲痛な声を上げている。しかし吾郎はその声を無視し、智恵の体の中に脂っこい食べ物をどんどん詰め込んでいった。
その後、十五分ほど経過し、お腹も徐々に大きくなってくると、オレンジジュースを二杯ほど飲み干した智恵の体が尿意を催し始める。そのタイミングを見て、吾郎は智恵に体の主導権を移した。ただ、主導権を移したのは首から上だけ。頭以外はまだ吾郎の支配下にあるようだ。
「あ……ごめん由希恵。ちょっとトイレに行って来るわ」
「うん」
智恵は由希恵に断りを入れると、椅子から立ち上がろうとした。でも、その体は智恵の思い通りに動かない。
「そんな……」
「どうしたの?」
「……え……」
「トイレ、行かないの?」
「……そ、それが……」
どうやら吾郎がトイレに行かせない様にしているようだ。今はまだ我慢出来るが、もう少し時間が経てば我慢出来なくなるかもしれない。
「いいよ別に。早く行って来たら」
「……う、うん……でも……あ、後にするわ」
「え? 我慢してるんじゃないの?」
「そ、そんな事……ない」
智恵は半笑いしながら由希恵に答えた。すると、右手が勝手に動いて水の入ったグラスを取り、智恵の飲まそうと口元に運び始める。
「も、もう……」
「え?」
「あ……ううん。な、何でも……ない……ゴクン……ゴクン……」
無理矢理唇をこじ開けたグラス。そのグラスが傾き、智恵の口の中に水を流し込み始めた。こぼすわけにいかない智恵は、苦しそうに飲んでいる。
「そんなに無理に飲まなくても」
「ゴクン……ゴクン……うっ……ふ、ふぅ……」
オレンジジュースを二杯、そして水を一杯飲み干した智恵。意識しているせいもあるのか、先ほどより更に尿意を催している。
早くトイレに行きたいのに……
焦る智恵だったが、吾郎は更に悪戯を続けた。
「うっ……」
「何?」
「う、ううん……」
「変な智恵」
「…………」
智恵の左手が、テーブルの下でジーンズ越しに下腹部をグイグイ押し始めた。
膀胱が押されるたびに、尿意が大きくなる。
「あぅっ……だ、だめ……」
「な、何が?」
ギュッと太ももを閉めて耐えたいのだが、その足は吾郎によって左右に大きく開かれてしまった。ここで小便を漏らせといわんばかりに。
「いや……」
顔をしかめてひたすら我慢している智恵。今にも漏らしてしまいそうだ。
「どうしたの? と、智恵??」
「……うぅ……」
俯いてじっと我慢している。額に汗が滲みはじめ、もう無理だと思った瞬間、急に体の自由が利くようになった。
「あっ……」
「え?」
「うくっ……」
智恵は苦しそうな表情で何も言わないまま椅子から立ち上がると、少し前かがみになって店内の突き当たりにあるトイレに駆け込んだ。
「やだっ、もうだめっ!」
トイレのドアを閉めるのと同時に、ジーンズを足首まで下ろす。そして、洋式トイレの便座に座ろうとしたとき、またしても体が動かなくなってしまったのだ。
「え……やだっ!」
便座に座るために腰を下ろそうとしていた智恵の体が立ち上がり、両手で便座を上げると、男が小便をするように便器の前で蟹股になったのだ。
「だ、だめっ。こんな格好でなんかできないっ。藤田君っ!」
でも、吾郎の声は聞こえなかった。智恵の両手の指が割れ目を左右に開いて、智恵が小便するのを待っている。
もう我慢の限界。智恵は「うう……」と低いうめき声を上げながら、男のように立小便を始めた。
勢いよく飛び足す小便が円弧を描いて便器に落ちてゆく。
「いやぁ……」
かなり長い間飛び続けた小便も徐々に勢いがなくなると、智恵の太ももを伝い、生暖かい感触が膝から足首に流れていった。
「ううっ……」
こんな格好で小便をさせられるなんて。智恵は顔をくしゃくしゃにしながら泣いてしまった。足首まで伝っていった小便を拭くことなく、智恵の手がジーンズを引き上げる。
「ひどい……こんなのひどすぎるわ……ううっ……」
涙が後から後から湧き出てきて、どうにも止めることが出来ない。
コンコンッ
誰かがトイレのドアを叩く音がした。
「ねえ智恵? 大丈夫?」
それは由希恵の声だった。どうやら由希恵が心配してトイレまで来てくれたようだ。吾郎もちょっと悪戯が過ぎたと思ったのか、智恵の体を支配しようとはしなかった。
「智恵?」
「ううっ、うう……グスンッ……」
手の甲で涙をふき取り、トイレを流した智恵がゆっくりとドアを開ける。
「ど、どうしたのっ!?」
「ゆ、由希恵……」
「と、智恵……な、泣いて……るの?」
「…………」
ヒクヒクと声を殺して泣いている智恵を見た由希恵が、心配そうに「もうここ、出ようよ」というと、智恵は何も言わずコクンと頷いた。
やむなく支払いを済ませた由希恵。今日はおごってもらえるはずだったのに――
「私の部屋に来る?」
「……うん……」
身も心もボロボロになった智恵は、震える肩を支えられながら、由希恵の住んでいるマンションへと歩いて行った――
職員室、智恵がカーディガンを着て帰る用意が終ると、頭の中に吾郎の声が聞こえた。
「…………」
その問いかけに答えない智恵は、少し赤くなっている目で職員室を出ると、そのまま帰ろうとした。
(あれ、まだ池上先生が来ていないのに)
「…………」
(なあ先生。もしかして先に帰ろうとしているの?)
「…………」
何も言わず校舎を出て、正門へと向かう智恵。
(そんな事させないって)
ピクンと智恵の体が震える。すると、体が反転してまた校舎の中へと戻ってしまった。そして、職員室に入ると壁に掛けてある行き先掲示板を見て池上先生の居場所を確認した。自分の席に着き、徐に内線電話を掛ける。
「……あ、もしもし。池上先生?村内です」
「あ、村内先生。ごめんなさい、もうこんな時間になってたのね。すぐに戻るから」
「別に急がなくても構わないわよ」
「うん。もう一区切りついたから。待っててね」
「はい」
吾郎が智恵のフリをして池上先生と電話のやり取りを行った。智恵は何も言わず、ただ吾郎の行動を見ているだけだった。
しばらくして、池上先生が職員室に戻ってきた。それを確認した吾郎が、体の主導権を智恵に移す。
「ごめん、待たせちゃって」
池上先生が智恵の前まで歩いてきて、謝った。さすがに返事をしないわけにはいかない智恵は、「う、うん……いいよ」と曖昧な返事をした。
「それじゃ、行きますか!」
「……え、ええ……」
吾郎が仕組んだ池上先生とのイベント。
飲みに行く気分じゃないのに……
池上先生が帰る用意を済ませ、セカンドバックを持って智恵の前に来ると、
「お財布の中身は入ってないからね」と言った。
「……う、うん」
「……もしかして怒ってる?」
智恵が浮かない顔をしているので、池上先生は智恵の耳元でそう囁いた。
「そんな事ないよ」
「そう。でも、雰囲気暗いから」
「そうかな……」
「うん。そうそう」
「……ごめんね」
「どうして謝るのよ。とりあえず出ましょうよ」
池上先生がそっと智恵の腰に手を回し、職員室を出るように促す。智恵は動こうとはしなかった……が、勝手に足が動き始め、池上先生と共に職員室を出てしまう。これも吾郎の仕業だろう。
「ほんとに怒ってない?」
「うん……怒ってないんだけど……」
「何?」
「うん……」
「何かあったの?」
廊下を歩き、校舎を出て正門へ向かう二人。智恵は暗い表情で池上先生と歩いていた。いや、歩かされていた。首から上は動くのに、それ以外は自分の意思で動かすことが出来ない。
「わ、私……」
「え?」
「私は……」
もう一人で耐えるのは嫌。池上先生に真実をしってほしかった。だから、本当のことを池上先生に話したかった。私は藤田吾郎に操られているのだと。藤田吾郎が私の体に乗り移り、好き勝手なことをしているのだと。
でも……
「……お腹が空いたからちょっと機嫌が悪いだけよ。池上先生、早く行きましょ!」
智恵の口から出たのはその言葉だった。そんな事を言いたいのではないのに。
「そうなんだ。それなら駅前のおしゃれな居酒屋でどう?」
「そうね、そこでいいわ。あの居酒屋は雰囲気が良くて女性の客が多いものね」
「そうそう!」
先ほどまでの暗い表情が一転、やけに明るくなる。また意識の奥に追いやられた智恵。何も出来ない、言わせてくれない。それを改めて認識した智恵は、意識の中で泣いていた――
「ねえ智恵、最初はビールにする?」
「私はオレンジジュースでいいわ」
「何それ? 居酒屋にきてオレンジジュースなの?」
「うん。由希恵はビールにしなよ」
「智恵が飲まないなら、私もやめとこうかな」
「そんなのつまらないよ。今日は私のおごりなんだから」
「それじゃあ一緒に飲もうよ」
「う〜ん……でもビールはねぇ……」
「じゃあ一杯だけ付き合ってよ」
「仕方ないなあ。じゃあ一杯だけね」
「うん!」
先生同士の関係から、プライベートな関係に切り替わった二人。学校では苗字で呼んでいるが、こうやって二人きりになったときは下の名前で呼び合っているのだ。
「すいませ〜ん」
池上由希恵が店員を呼んで注文を始める。
「えっと、ビールを二つ」
「生中でよろしいですか?」
「ええ。それから……」
由希恵が続いて食べ物を注文する。
「ねえ智恵、何食べる?」
「私、鳥の唐揚げとポテトフライにウィンナーの盛り合わせがいいわ」
「えっ!? と、鳥の唐揚げ?」
「うん」
「ダイエットしてたんじゃないの?」
「今日は食べたい気分なの」
「カロリーの高いものばかり……」
「たまにはいいでしょ」
「いいけど……」
由希恵が首をかしげながら智恵を見ている。
智恵はニコッと微笑み返すと、
「それと軟骨の唐揚げもね」と追加注文した。
普段は絶対に頼まないものばかりだ。いつもならサラダや魚系の品ばかり注文するはずなのに。もちろんそれは、吾郎が食べたいものを注文しているからで智恵の意思ではない。智恵の体に乗り移って幾らか日数が経ち、ダイエットをしているは分かっているのだが、そんな智恵の努力はまったく考えていないようだ。
「じゃあ後は、トマトサラダを一つ」
「承知いたしました」
店員がその場で携帯端末を押してオーダーを入力すると、二人のテーブルから去って行った。
「ねえ、本当に食べられるの?」
「もちろん。だから頼んだんじゃないの」
「結構頼んだけど……私はそんなに食べないわよ」
「いいのいいの。気にしないでよ」
「それなら……いいけど……」
しばらくすると、二人のテーブルに生ビールの入ったジョッキが運ばれてきた。
「それじゃあお疲れ様」
「お疲れ様」
ジョッキを持ってゴクン、ゴクンと二口ほど飲んだ由希恵。それを見て苦笑いした智恵が、ビールを一口飲んだ。
智恵の記憶からビールの味は分かっていたのだが、実際に飲んでみるとやはり美味しいとは思わなかったようだ。
ビールの苦味が口の中一杯に広がる。
「あ……」
ジョッキを置いた智恵は、ピクッと体を震わせた。
「ん? どうしたの」
「え……あ……な、何でも……ない」
「そう。ねえ聞いて! この前C組の福本さんが……」
由希恵が楽しそうに話を始めた。吾郎によって、表に出された智恵の表情が暗くなる。
「でね……。智恵?」
「……え? な、何?」
「また落ち込んでるの?」
「あ……ううん。ち、違うわ」
「今日の智恵は何かおかしいわね。明るくなったり暗くなったり……」
「…………」
「やっぱり何かあった?」
その言葉に、少しためらいの表情を見せた智恵は、ギュッと拳を握り締めた後、「……た……助けて由希恵っ! 私っ……」と言った。
「えっ!?」
と聞きなおした由希恵。急に何を言い出すのかと、驚いた表情をしている。
「ひっ……ううん。何でもないよ」
「い……今、た、助けてって……」
「ううん、違うのよ。何でもないから気にしないで。それよりさっきの話の続きをしてよ」
「え……で、でも」
「ごめんね、変な事言って」
「……う、うん……」
由希恵は怪訝な顔をしながら智恵を見た。すると、智恵は「んふっ!」と言ってウィンクすると、ペロッと舌を出して笑顔を作った。
「…………」
今日の智恵はよく分からない。そう思った由希恵は、先ほどの続きを話し始めた。
しばらくすると、テーブルの上に注文した料理が並ぶ。その脂っこい料理を美味しそうにほおばる智恵を見ながら、由希恵はふぅとため息をついた。
「そんなに脂っこい物をよく食べるわねぇ。まるで別人みたい」
「そうかしら? 本当はいつもこんな料理を食べたかったのよ」
「そうなの?」
「そうよ。クスッ」
智恵は口紅が落ちるのをまったく気にしない様子で、唐揚げの油を口の周りにつけながらパクパクと食べていた。
(やめて……そんなに食べたら……)
智恵が意識の奥で悲痛な声を上げている。しかし吾郎はその声を無視し、智恵の体の中に脂っこい食べ物をどんどん詰め込んでいった。
その後、十五分ほど経過し、お腹も徐々に大きくなってくると、オレンジジュースを二杯ほど飲み干した智恵の体が尿意を催し始める。そのタイミングを見て、吾郎は智恵に体の主導権を移した。ただ、主導権を移したのは首から上だけ。頭以外はまだ吾郎の支配下にあるようだ。
「あ……ごめん由希恵。ちょっとトイレに行って来るわ」
「うん」
智恵は由希恵に断りを入れると、椅子から立ち上がろうとした。でも、その体は智恵の思い通りに動かない。
「そんな……」
「どうしたの?」
「……え……」
「トイレ、行かないの?」
「……そ、それが……」
どうやら吾郎がトイレに行かせない様にしているようだ。今はまだ我慢出来るが、もう少し時間が経てば我慢出来なくなるかもしれない。
「いいよ別に。早く行って来たら」
「……う、うん……でも……あ、後にするわ」
「え? 我慢してるんじゃないの?」
「そ、そんな事……ない」
智恵は半笑いしながら由希恵に答えた。すると、右手が勝手に動いて水の入ったグラスを取り、智恵の飲まそうと口元に運び始める。
「も、もう……」
「え?」
「あ……ううん。な、何でも……ない……ゴクン……ゴクン……」
無理矢理唇をこじ開けたグラス。そのグラスが傾き、智恵の口の中に水を流し込み始めた。こぼすわけにいかない智恵は、苦しそうに飲んでいる。
「そんなに無理に飲まなくても」
「ゴクン……ゴクン……うっ……ふ、ふぅ……」
オレンジジュースを二杯、そして水を一杯飲み干した智恵。意識しているせいもあるのか、先ほどより更に尿意を催している。
早くトイレに行きたいのに……
焦る智恵だったが、吾郎は更に悪戯を続けた。
「うっ……」
「何?」
「う、ううん……」
「変な智恵」
「…………」
智恵の左手が、テーブルの下でジーンズ越しに下腹部をグイグイ押し始めた。
膀胱が押されるたびに、尿意が大きくなる。
「あぅっ……だ、だめ……」
「な、何が?」
ギュッと太ももを閉めて耐えたいのだが、その足は吾郎によって左右に大きく開かれてしまった。ここで小便を漏らせといわんばかりに。
「いや……」
顔をしかめてひたすら我慢している智恵。今にも漏らしてしまいそうだ。
「どうしたの? と、智恵??」
「……うぅ……」
俯いてじっと我慢している。額に汗が滲みはじめ、もう無理だと思った瞬間、急に体の自由が利くようになった。
「あっ……」
「え?」
「うくっ……」
智恵は苦しそうな表情で何も言わないまま椅子から立ち上がると、少し前かがみになって店内の突き当たりにあるトイレに駆け込んだ。
「やだっ、もうだめっ!」
トイレのドアを閉めるのと同時に、ジーンズを足首まで下ろす。そして、洋式トイレの便座に座ろうとしたとき、またしても体が動かなくなってしまったのだ。
「え……やだっ!」
便座に座るために腰を下ろそうとしていた智恵の体が立ち上がり、両手で便座を上げると、男が小便をするように便器の前で蟹股になったのだ。
「だ、だめっ。こんな格好でなんかできないっ。藤田君っ!」
でも、吾郎の声は聞こえなかった。智恵の両手の指が割れ目を左右に開いて、智恵が小便するのを待っている。
もう我慢の限界。智恵は「うう……」と低いうめき声を上げながら、男のように立小便を始めた。
勢いよく飛び足す小便が円弧を描いて便器に落ちてゆく。
「いやぁ……」
かなり長い間飛び続けた小便も徐々に勢いがなくなると、智恵の太ももを伝い、生暖かい感触が膝から足首に流れていった。
「ううっ……」
こんな格好で小便をさせられるなんて。智恵は顔をくしゃくしゃにしながら泣いてしまった。足首まで伝っていった小便を拭くことなく、智恵の手がジーンズを引き上げる。
「ひどい……こんなのひどすぎるわ……ううっ……」
涙が後から後から湧き出てきて、どうにも止めることが出来ない。
コンコンッ
誰かがトイレのドアを叩く音がした。
「ねえ智恵? 大丈夫?」
それは由希恵の声だった。どうやら由希恵が心配してトイレまで来てくれたようだ。吾郎もちょっと悪戯が過ぎたと思ったのか、智恵の体を支配しようとはしなかった。
「智恵?」
「ううっ、うう……グスンッ……」
手の甲で涙をふき取り、トイレを流した智恵がゆっくりとドアを開ける。
「ど、どうしたのっ!?」
「ゆ、由希恵……」
「と、智恵……な、泣いて……るの?」
「…………」
ヒクヒクと声を殺して泣いている智恵を見た由希恵が、心配そうに「もうここ、出ようよ」というと、智恵は何も言わずコクンと頷いた。
やむなく支払いを済ませた由希恵。今日はおごってもらえるはずだったのに――
「私の部屋に来る?」
「……うん……」
身も心もボロボロになった智恵は、震える肩を支えられながら、由希恵の住んでいるマンションへと歩いて行った――
コメント
コメント一覧 (6)
最後はハッピーエンドですか?それとも やはりバッド…
ちなみに あと何話くらいですか?
コメント、ありがとうございます!
このお話はあと2話分ありますが、最初から書いておりますようにダークな展開なのでハッピーエンドではありません(^^
そういう意味では、これ以上の内容は読まない方がよいかもしれないですね。
読むと辛くなるかも……です。
智恵さんがどんなになっても、見届けなければ智恵さんが報われない気がするから読みます
そうですか。
くら〜くなっちゃいますので、ダメな時はサッとディスプレイから目を離してくださいね(^^;
ご指摘、どうもありがとうございます!
彼女は朝からノーブラ、ノーパンで学校に行かされているのでパンティは穿いていないですね(苦笑
文章を修正しておきました。
詳しく読んでいただき、嬉しいですよ。