この作品は「新入れかえ魂Vo.1」に掲載されたものです。
全編終了までに、「超能力」「MC(マインドコントロール)」「事実誤認」「憑依」が含まれます。
また、一部ダークな内容が含まれますので、読みたいと思われる方のみお読みください。
 次の日も一階のロビーでは、色々な女性が利和の餌食になっていた。その反応は十人十色。いきなり叫び声をあげる女性もいれば、先日のように何も言えずにただ耐えるという女性もいる。
 相手の感覚が分かるのは手だけではない。昨日の女子高生でその他の部分も使えることが分かった利和は、口や肉棒を使って悪戯を続けた。
 ただ、ずっと悪戯していると頭が痛くなることがあるので、たまに休憩をしにベッドに戻るのだった。
 そして――一通り遊び終えた利和が病室に戻った時、一人の女子高生がベッドの前に立っていた。
 後姿で分かる。彼女は夏香。事故から助けた彼女が見舞いにやってきたのだ。

「あっ……」
「あっ。南さん」
「重河君……も、もう大丈夫なの?」
「う、うん。車椅子と松葉杖さえあれば結構自由に動けるし」
「そう、よかった。あの、助けてもらったのにお礼も言えてなかったね」
「えっ……い、いいよ別に。お礼なんて。俺が勝手にしたことだし」
「重河君が入院した日、私も一緒に来ていたの。重河君、全然意識が戻らないから、このまま死んじゃったのかと思った……」

 彼女の瞳は涙で濡れていた。

「し、死ぬなんて……そんなに柔じゃないし」
「だって……私のせいで死んじゃったら……」

 そこまで話して、彼女は頬に涙を流した。

「み、南さん。泣かないでよ」
「ごめんね。私のせいでそんなになっちゃって」
「だ、だからいいって。それよりそこの椅子に座ってよ。何も出せないけど、コーヒーくらいなら作れるから」

 利和は松葉杖をベッドの下に隠すと、テレビ台のテーブルに置いてあったポットでインスタントコーヒーを作ろうとした。

「あ……私、これを渡しに来ただけだから。すぐに帰るわ」
「ん?」

 ちょっと恥ずかしそうな表情をした夏香がカバンから出したのは、数冊のノートだった。

「これ、重河君のクラスの女の子にノート見せてもらって写したの。もうすぐ試験があるけど学校に出られないでしょ」
「わ、わざわざ?」
「このくらいはしないと……ほんとにごめんなさい」

 利和は受け取ったノートをペラペラと捲った。
 女の子らしい字で丁寧に書かれている。今時、コピーでもすればいいものを、わざわざ手書きで書いているところは、それだけ申し訳なかったという気持ちでいるのか、或いは利和に恋愛感情を抱いたのか?
 それは分からないが、とにかく嬉しかった。
 想いを寄せていた夏香にこんな事をしてもらえるなんて。

「ね、ねえ。少しゆっくりと話せない?」
「えっ……でも……」

 夏香は少し躊躇しているようだ。すぐに帰らなければならないのなら、無理には止められない。
 でも、利和はもう少し夏香と話をしたかった。

「ちょっとだけでいいんだ。コーヒー飲む間だけ」

 じっと夏香を見つめる。すると夏香は、「……いいよ」と言ってパイプ椅子に腰を下ろした。

「良かった」

 紙コップに入れたコーヒーを夏香に手渡し、自分も一つ持つと、ベッドに足を投げ出して座る。

「わざわざ来てもらってありがとう」
「ううん。別に私は……」
「一人で来てくれたの?」
「一階のロビーで友達が待っているの」
「……それじゃあ早く戻ってあげないといけないな……」
「そ、そうなんだけど……コーヒーを飲み終わらないといけないから」
「えっ?」
「急いでコーヒーを飲みたいんだけど、私って猫舌だからなかなか飲めなくて」
「い、いいよ。そんなに無理しなくても。友達が待っているんだから」
「だって……コーヒーを飲み終えてないから」

 夏香はしきりにコーヒーの事を気にしていた。
 頑張って飲もうとしているのだが、よほど熱いのか上手く口に入れられない。もういいって言っているのに。そんな彼女が健気で可愛いと思った利和。
 ふぅふぅと冷ましながら飲む夏香の表情を見ながら、彼女とキスが出来たらいいなぁ――なんて心の中で呟いた。
 すると、夏香は足元に紙コップを置いた後、利和の顔をじっと見つめた。

「な、何?」
「……何でもないけど……何でもないんだけど……」

 そう言ってパイプ椅子から立ち上がった。
 そして――

「んっ!」
「んん……」

 あらぬことか、夏香が利和の唇を奪ったのだ。柔らかい夏香の唇が利和の唇に触れると、利和は鳥肌が立った。

「……ご、ごめんね重河君。急にこんな恥ずかしいことをして」
「…………」
「私も何故か分からないんだけど、重河君にキスしなければいけないと思って……」
「……そ、そうなんだ……」

 まだ心臓がドキドキしている。あの夏香が、自ら唇を寄せてくるなんて。いや、その事にドキドキしているのではない。利和が夏香をじっと見つめながら願った行為が、現実になった事にドキドキしているのだ。
 どうして夏香がコーヒーを飲み終わるまで帰らないと言ったのか。それは、利和が夏香を見つめながら『コーヒーを飲む間だけ』と願ったからだ。
 そうに違いない。
 これって俗に言う催眠術に近い能力ではないだろうか?
 利和はそう思った。
 それならば――

「南さん」
「何?」

 利和はじっと夏香を見つめながら言葉を口にした。

「もうコーヒーを飲まなくてもいいから友達のところに戻ってもいいよ」と。

 すると夏香は「……うん」と言って、足元から手に取っていた紙コップを利和に手渡した。

「じゃあ、また時間が取れたら来るね」
「うん。楽しみにしてる」

 そう言って病室を出て行ったのだ。

「やっぱり……やっぱりそうだったんだ。俺が見つめて念じた行為を相手はしてしまうんだ。それを言葉に出そうが出すまいが」

 超能力の次は催眠術。
 信じられない能力が次々に現れる。やはり頭の打ち所が悪かったのだろうか?
 いや、打ち所が悪くても、こんな能力が使えるようになったのだ。まるで神様にでもなった気分。きっと命がけで良いことをした利和への、神様の贈り物なのだ。

「すげぇ……こんな事できるなんて、マジで自分が怖いな」

 利和は面白いことを思いついたようだ。今日は仕掛けをするだけ。明日になれば面白いことになる。

「よし、早速仕掛けておくかな! 明日の朝が楽しみだよ。すんなり眠れたらいいけど」

 ターゲットはもちろん果乃だ。ナースコールで果乃を呼び出し、彼女が気づかないようにその意識の中に行動を埋め込んでゆく。
 そして何事もなかったかのように帰すと、後の時間は大人しくすることにした――