大きな擦りガラスが嵌めこまれた扉を開くと、瞬時に熱気と湿気が体を包み込んだ。そして、銭湯独特の匂いが鼻をついた。

「うわ、銭湯って感じだな」
「そう? 僕はあまり銭湯を利用した事が無いから」
「俺んちは小さい頃によく連れてってもらったからな。妙な懐かしさを感じるよ」
「まだ若いのに?」
「そういう問題じゃないだろ。それよりも見ろよ、結構広い浴槽だぞ」
「ほんとだね。ゆっくりと浸かれそう」
「浸かるだけじゃねえよ。あの中でこの体を好き放題触るんだろ」
「えっ。あ、う……うん」

 見渡すと、隅の方でおばさんらしき女性がニ〜三人、体を洗っている。自分達が出す言葉が、女子高生の声となって銭湯に木霊している。二人は、まるで他人が喋っているような不思議な感覚を覚えた。

「やっぱ掛け湯してから入るよな」
「うん。そうだね」

 二人揃って体に巻いていたタオルを外すと桶を手に取り、乗り移っている女子高生の体に掛ける。滑らかな肌に水滴が弾くような感じがした。俯き、大きな胸の谷間から見える陰毛を見た荻塩華菜がいやらしい笑いを浮かべた。

「へへ。陰毛が張り付いてるぞ。何かエロいよな」
「た、武原君。響くんだからあまり大きな声出さないでよ」
「どうしてさ」
「だって、荻塩さんの声でい……陰毛だなんて」
「何恥ずかしがってんだよ。お前が乗り移っている南丘だってしっかり生えて張り付いてるじゃねぇか。南丘の方がちょっと薄いか?」
「武原君っ」
「いいだろ。別に誰に聞かれても、俺達がどうこうされるわけじゃないんだ。ほら、早く入ろうぜ」
「も、もう……」

 武原はタオルを片手に持ち、荻塩華菜の股間を見せびらかすように蟹股で浴槽へと歩いていった。一人のおばさんが、大きな声を出していた二人の姿を不思議そうに見ている。
 足川は顔を赤くしながら南丘亜貴の体を大事そうにタオルで隠すと、俯きながら華菜の後を歩き、二人してゆっくりと浴槽に使った。
 五十センチほどの深さ。しかし、十二畳ほどの広さがある。

「はぁ〜。広い風呂はいいよなぁ」
「うん。家のお風呂とは全然違うよ」
「なあ足川」
「え、何?」
「何かさ、肩がすごく軽くなった感じがしないか?」
「うん。僕も浸かった瞬間、そう思ったんだ。これって胸が浮いているからだよね」
「だよな。肩の張りが解放されたって感じだよな。女の胸って、こんなに重いんだ」
「荻塩さんの胸、すごく大きいからじゃない? 僕も軽くなったけど、南丘さんは荻塩さんみたいに大きくないから」
「よく言うよ、そんな胸しといてさ」
「あっ!」
「へへっ。柔らかいなぁ、南丘の胸」
「も、もうっ」
「感じているのか? 南丘の体で」
「た、武原君。変なこと言わないでよ」

 不意に胸を揉まれた足川は、亜貴の手で胸を隠した。

「お前って、その体で喋ってるとマジで女みたいだな。しっかりと女座りしてるし」
「あっ。こ、これは足が自然と……」
「やっぱり、元々女になりたいって願望があったんじゃないか? 普通は足を伸ばしたり、胡坐を掻いて座るもんだろ」

 浴槽の中で、亜貴の体に似合う女の子らしい座り方の足川に対し、武原は華菜の股を大きく開き、胡坐を掻いて座っていた。浴槽の中で股間が露になり、陰毛がゆらゆらと揺れている。そんな姿を見た足川は、また亜貴の顔を赤らめた。

「ね、ねえ武原君。他の人が見たら荻塩さんが変に思われるよ。もうちょっと足を閉じて座ったほうがいいと思うんだけど」
「何だ? お前、俺に指図するのかよ」
「そんなつもりで言ったんじゃないよ。ただ僕は荻塩さんが……」
「へぇ〜。そんなに言うなら、もっとエロい事しようかなぁ」
「えっ?」

 ニヤリと笑った華菜が立ち上がり、足川と対面になるように浴槽の淵に座った。閉じていた細い足をゆっくりと開いてゆくと、華菜の女性器が露になる。

「た、武原君っ」
「ニヒヒ。どうだ? こんな風にしたらエロいだろ。更に更に〜」

 華菜の両手が股間に添えられると、足川の前で陰唇を左右に大きく開いた。クリトリスや尿道口、そして膣口までが惜しげもなく披露される。足川は亜貴の顔を真っ赤にしながら慌てて横を向いた。

「ちょ、ちょっと。そんな事しちゃダメだよ武原君」
「いいだろ。俺が乗っ取っているんだ。今は俺の体なんだからさ」
「きっと荻原さん、恥ずかしがってるよ。勝手にそんな事までするなんて」
「何だよ。お前、南丘の体でオナニーするんだろ。南丘の手で、南丘のマ○コを弄るんだろ」
「……だ、だって」
「よし。お前は黙って俺のやる事を見ていろ。目を逸らしちゃダメだからな」
「ええっ。そ、そんな……」
「じゃないと、お前が南丘の体に乗り移った事を本人にばらすぞ。俺は別にばらされても構わないけどな」
「ま、待ってよ。南丘さんには言わないで。内緒にするって約束だったじゃない」
「それじゃあ大人しく見てろよ」

 その言葉に、足川は無言で俯くと横に向けていた頭をゆっくりと前に戻した。そして、崩していた足を引き寄せ、体操座りの状態で少し目を細めながら一メートルほど前にある華菜の股間に視線を移した。
 両手で広げられている女性器は何ともリアルでグロテスクだ。陰唇の下で開いている穴に肉棒が入り、赤ちゃんが出てくるのだ。そう考えると神秘的と言うよりは気分が悪くなった。

「よく見てろよ。我らが○○高校で絶大なる人気を誇る荻原華菜がお前の前でオナニーするんだからな」
「そ、そんな事言わなくてもいいから。するなら早くして終わってよ」
「そう慌てるなって」

 顔を赤らめたまま恨めしそうに見る、亜貴の視線の先にある右手の中指が、開かれた陰唇の上部にあるクリトリスに力強く触れた瞬間、華菜の体がビクンと震えた。

「うあっ」
「な、何?」
「ココを触るとすげぇ。体がビクビク震える」
「そ、そう……なの?」
「もう一度……。うっ! はぁ、はぁ……あっ」

 両脇を締め、大きな胸を寄せるようにしながらクリトリスを弄る荻原華菜の姿に、足川はとても興奮した。武原とは思えない、華菜の切ない表情と甘い吐息。
 彼は亜貴の腕で、体操座りしている足をギュッと締め付けた。

「うっ、はぁ、あっ、ああっ。すげぇ気持ちいいっ。女の体ってこんなに気持ちがいいんだ」
「た、武原……君」

 大きく足を開き、右手でクリトリスを弄りつつ、左手で乳首を摘んで悶えている。そんな生徒会長のいやらしいオナニーを見ていると、下腹部が熱く火照ってくる感覚を覚えた。本来なら男の象徴である肉棒が勃起し、閉じている足の間に挟まっているだろうが、そのような物理的な感覚は存在せず、足川は体の内側から湧き出る何かを感じていた。

「ああっ、あっ、はぁ、はぁ、うっ、うくっ」

 顎を上げて体をビクビクと震わせ、浴槽の中で踵を浮かせている。本物の女性がオナニーしていると思うと、鼓動が激しく高鳴った。右手の指が弄るクリトリスの下、膣口からジワリと愛液が漏れ始めている。ヒクヒクと動いているように見え、まるで自ら意志を持った生き物のように思えた。

「武原君。き……気持ちいいの?」
「はぁ、はぁ、ああっ。すげぇんだ、この体っ。乳首もクリトリスも有り得ねぇほど気持ちいいっ」
「そ、そうなんだ」
「お前も弄ってみろよ、南丘の体を。うっ……はぁ。特にクリトリスがたまんないんだ」
「で、でも僕……」
「あっ! はぁ、んんっ!」

 華菜の指が、勃起した乳首を一際強く掴み、前に引っ張った。その裏返った喘ぎ声と表情は、足川の背徳感や羞恥心の壁を崩すに十分だったようだ。
 周りを気にしながら、抱きかかえていた膝を解放し、両手でそっと乳房を包み込んでみる。丁度掌には勃起した乳首を感じる事ができた。自分が興奮しているから亜貴の乳首が勃起しているんだ。そう考えると、尚更興奮する。
 乳房にゆっくりと指を減り込ませ、そっと円を描くように揉んでみる。指先に感じる乳房の柔らかさ。そして、胸を揉まれているという不思議な感覚。更に乳首を摘んでみると、一瞬にして体の芯に電気が走ったような感覚を覚えた。

「あっ!」

 思わず出してしまったのは、好意を抱いている南丘亜貴の喘ぎ声。その声を聞いた瞬間、足川は彼女の顔を真っ赤にした。それでも、初めて感じた乳首の感覚を求めようと、また指で弄ってしまう。

「あ……。あんっ。はぁ、はぁ、はぁ」

 武原が言っている事がよく分かった。乳首ってこんなに気持ちがいいんだと。自分が出している声は、すべて亜貴の可愛い声になって漏れている。自分が彼女を汚している。でも――きっと嫌がっていないんだ。
 頭の中ではダメだと思っていた。そして、武原が華菜の体を弄る行為に嫌悪感を抱いていた。
 でも、足川の理性は性的な欲望に抑えられた。目の前で悶える華菜と同じように、右手を下ろしてゆき、足の間から股間へと滑らせる。お湯の中で揺らめく股間に指が減り込むと、亜貴の顔が跳ねるように上を向いた。

「んああっ!」

 お湯とは違う、粘り気のある液体が陰唇の中に溢れていた。
 武原が操る華菜の指と同じ場所を弄ると、信じられない快感が体中を駆け巡ったのだ。ぷっくりと膨れているその突起は、足川の精神を蕩けさせた。
 一瞬にして力強く閉じた足の力が抜け、また指が弄り始める。今までに感じた事の無い気持ちよさは、病み付きになるという表現が最も正しいと思えた。
 亜貴の指を使って、亜貴のクリトリスを弄る。目の前では、華菜が同じ事をしながらいやらしく身悶えていた。風呂場に響く女子高生の喘ぎ声は異様さをかもし出し、他のおばさん達に不信感を与えているようだ。何度も浴槽を見ながら、眉間に皺を寄せている。
 まさか、公衆の面前でオナニーまでする女子高生がいるなんて。皆がそう思っていたに違いない。

「うっ、はぁ。ど、どうだ足川。南丘のアソコ……き、気持ちいいだろ」
「うん。あんっ、すごく気持ちいいっ」
「俺みたいに膣の中に指を入れてみろよ」
「えっ」

 見ると、いつの間にか華菜の指が二本、膣口から入り込んでいた。いやらしい愛液が溢れ出て、クチュクチュという音がとても官能的だった。

「膣の中を掻き回したら、またクリトリスと違った快感が味わえるぞ。ううっ、すげぇっ」

 女の子の声で下品な言葉を並べる武原は、お湯に浸かりながらこっそりと亜貴の体を弄る足川に膣から抜き取った指を見せた。粘り気のある液体が指の間でアーチを作っている。これが女の愛液だと見せびらかしているようだった。
 あの愛液は、今弄っている亜貴の膣口からも溢れている。足川はそう感じた。言われたとおり、クリトリスを弄っていた指を下に移動させ、膣口の中に忍ばせてみる。粘り気と、得体の知れないものに指を包まれた感触。そして、もう少し指を入れると痛みを感じた。

「あっ……。い、痛いよ。南丘さんの中に指を入れたら痛いんだ」
「じゃあ処女だな。処女膜があるんだ。残念だったなぁ、処女じゃなかったらこんなにズボズボ入るし、痛みもなくて気持ちいいのに。んっ、はぁ、はぁ、ああ」

 武原は華菜の体を好き放題弄っていた。大きな胸を掬い上げ、顔を俯けながら乳首を咥え込んでいる。余程気持ちがいいのか、咥えてもすぐに喘いで口から離していた。
 そんな華菜のセクシーな姿を見ながら、足川はまたクリトリスを弄り始めた。本当に例えようの無い気持ちよさだ。ここまで快感が違うと、女性の体に嫉妬してしまう。

「ううっ、あっ。あはっ。す、すごく気持ちいいよ。南丘さんの体っ。こうして毎日オナニーしてるのかな?」

 彼女の声で独り言を呟きながら、指の動きを速めてゆく。男のオーガズムとは違った、なだらかな快感が続いているが、徐々に高まっているような感じだった。 現に武原は膣とクリトリスを同時に弄りながら、華菜の体でオーガズムを迎えようとしている。人目を気にせず大きな喘ぎ声を出しながら高速に股間を擦る様は、薬か何かで狂った女を想像させた。

「ああっ! たまんねぇっ。気持ちよすぎてっ……あっ。はぁ、はぁ、あっ、あっ。お、俺っ。もうイキそうだっ」
「イ、イキそうって……」
「はぁ、はぁっ。あっ、あっ、あふっ、イイッ! あっ、イクッ……うああっ!」

 まるで小便をしているみたいに、華菜の膣から愛液が噴出した。その様子を見ていた足川も自然と指の動きが早くなり、亜貴の体でオーガズムを迎えようとする。ビクビクと震えた華菜が浴槽の中に身を沈めると、足川は一人で亜貴のクリトリスを弄り続け、武原と同じく女性としてのオーガズムを迎えたのであった――。




「気持ちよかったよなぁ。女の体って」
「うん。でも……大丈夫かな」
「お前がずっと浸かったままだったからだろ」
「だって……」

 二人は、自分の体に戻って家路についているところだった。
 亜貴の体でオーガズムを迎えた足川は、その快感と逆上せた事で意識を失ってしまったのだ。浴槽の中に沈みつつある亜貴を見た武原が慌てて抱きかかえ、不信感を抱いていたおばさん一人と共に何とか外へ運び出したのだ。
 腰に力が入らないわ、おばさんには文句を言われるわで武原は大変だったが、足川は全然知らなかったらしい。
 しばらしくして薬の効果が切れると、二人は自然と彼女達の体から離れ、自分の体へと戻ったのだ。
 銭湯に残された二人の意識が戻ったのは、彼らが抜け出てからほんのしばらく後だったようで、なぜ銭湯にいるのか。またどうして二人で一緒にいたのか分からなかった。
 全ては、乗り移っていた二人にしか分からない、秘密の出来事だった。

「またやるだろ」
「ええっ。またやるの?」
「今度はしっかりとレズらないとな」
「もう止めようよ。勝手に人の体を使うなんて」
「何言ってんだよ。しっかりと南丘の体を楽しんだくせに」
「だ、だからもう止めようって……」
「お前、またあの快感を味わいたくないのか?」
「それは……」
「だろ! だったら今度は別の女に乗り移ろうぜ」
「別の女?」
「ああ。やっぱり大人の女ってのもいいと思わないか?」
「誰?」
「いや、別に決めてないけど。例えば田中先生とか」
「た、田中先生……」
「お前の姉貴とかさ」
「なっ! ダ、ダメだよっ。詩織姉ちゃんは絶対にダメっ」
「そう言われると、余計に乗っ取って見たくなるんだよなぁ」
「だからダメだって言ってるでしょっ」
「俺がお前の姉貴に乗り移って、お前が田中先生に乗り移るってのはどうだ?」
「だからダメだって言ってるでしょっ!」
「まあいいや。とりあえず今日は大人しく家に帰るって事で」
「もう……。絶対詩織姉ちゃんはダメだからね」
「分かってるって。じゃあな」
「うん。じゃあ……」

 こうして二人は、女子高生の体をしっかりと堪能し、次のターゲットを探すのであった――。

おしまい。