※このお話はTSではなく、OD(女の子同士)を取り扱った作品ですので、その様な内容に不快感を持たれる方はお読みにならないようお願いします。



【OD】女子高生1
「あ、有吉先輩。こんにちは」
「広永じゃないか。三年の教室に何か用事があったのか?」
「ちょっと部長に話があったんです。もう終わりましたけど」
「そうか」
「今日も放課後、練習するんですよね」
「ああ」
「頑張ってくださいね。来週の試合、私も応援席から一生懸命応援しますから」
「うん。ありがとな」
「それじゃ、失礼します」
「ああ」

 広永貴菜は軽く会釈すると、笑顔で廊下を歩いていった。有吉鉄則が、ツインテールの揺れる後ろ姿をしばらく眺めていると、チャイムが構内に響いた。

「チアリーディング部期待の星か。可愛いよな、広永って」
「いつまでも見てるのよ。チャイムが鳴ったんだから、早く教室に戻らないとセンセーが来るよっ」
「わっ! 秋田か」

 背後から不意に話しかけられた有吉は、驚いて肩をすくめた。

「秋田かじゃないって。アタシが声掛けなきゃ、いつまでも彼女の背中を見てたんじゃないの?」
「い、いいじゃないか。別に」
「彼女、チアリーディング部一年の広永さんでしょ。可愛いよね。アタシと違って健康的な小麦色の肌だし、性格も素直そうだし」
「そうだな。秋田みたいに男っぽいところも全然ないし」
「何よそれ。アタシのどこが男っぽいってのよ」

 二人は顔を見合わせながら、ざわめきの残る教室に入った。

【OD】女子高生2
「まずはそのしゃべり方かな。そして、遠慮の無いとこ」
「言ってくれるじゃない。あ〜あ。折角、鉄則にイイ事させてあげようと思ったのに。や〜めた」
「イイ事ってなんだよ。イイ事って。あ、そうか! 明日はバレンタインだからチョコくれるって?」
「何でチョコあげなきゃならないのよ。あげる様な仲じゃないでしょ」
「幼馴染の関係って、あげる様な仲じゃないのか? そういえば中学の時からもらってないよな」
「何? チョコが欲しいわけ?」
「別に欲しいわけじゃないけど。じゃあ何さ、イイ事って」
「へへ〜ん。アタシね、面白い薬を手に入れたんだぁ。だからちょっと試してみようかと思ってね」
「面白い薬? それが俺にイイ事させてくれるのと関係あるのか?」
「大アリだったりして。でも、アタシに対してそんな態度を取っているようじゃ、使ってあげる気にならないなぁ。折角、幼馴染の好みで使ってあげようと思ったのに。まあ、仕方ないよね」
「おいおい、どういう意味だよ。その薬って何の効果があるんだ」
「知りたい?」
「そこまで言っておいて、言わないつもりか?」
「あ、センセーだっ。じゃあ授業が終わったら教えてあげる」
「なっ……。ま、まあいいか」

 先生の姿が見えると、秋田美野里は意味深な笑みを浮かべ、急いで座った。

「こらっ! いつまで騒いでいるんだ。授業を始めるぞっ」

 数人の男子生徒と同じく、有吉も席に着いた。
 美野里が座る背中を見ながら、彼女が言っていた薬の事を想像する。まさか麻薬のように気分がハイになる危ない薬ではないだろうか。しかし、そんな危ない物に手を出すような性格ではない事は分かっている。

「もしかして……。惚れ薬か」

 ふと呟いた。そうかもしれない。使ってくれるという事は、惚れ薬を誰かに飲ませ、自分に惚れるよう仕向けてくれるんだ。ということは、その相手は先程見ていた広永貴菜の可能性が高い。

「そうか、そういう事か。秋田もイイとこあるよな。バレンタインチョコよりも嬉しいかもっ」
「おいっ、有吉! お前、さっきから何をブツブツ言ってるんだ。ちゃんと授業を聞いているのかっ」
「あっ……。は、はい。すみません」
「じゃあ続きの一ページを読んでみろ」
「えっ、続きって……」
「全然聞いていないじゃないか。お前だけ宿題を増やすぞ」
「わ〜っ。すいませんすいません」

 周りの生徒に笑われた有吉は、頬を赤らめながら俯いた――。