先生ボンテージ1
「幹丘君。今日はご両親、旅行に行っているんだって?」
「あ、赤岸先生。どうして知っているんですか?」
「美濃君から聞いたの。ねえ、ちょっと今、時間取れる?」
「は、はぁ」

 帰ろうとしていたところを、赤岸先生に突然呼び止められた。先生はいつ見ても綺麗だ。一ヶ月もすれば結婚して先生を辞めてしまうのがとても残念だと、友人の美濃と話していたところだった。優しくて俺達の事をいつも前向きに考えてくれる。だから、その容姿を含めて男子生徒の間では憧れの的だった。もちろん、俺達みたいな子供は元々、相手にしてくれないけれど。

「幹丘君って、もしかしてドMっていうか、マゾなの?」
「は?」
「言ってたわよ、美濃君が」

 あいつ、赤岸先生に何て事を話すんだよ。俺は一気に赤面した。

「あらら。そんなに真っ赤にならなくてもいいのに。誰にでも、他人に知られなくない秘密ってあるよね。先生ね、いつもふざけてばかりいる幹丘君に、そんな性癖があるなんて知らなかったの。ちょっと驚きだな」
「や、やめて下さいよ。他の奴に聞かれるじゃないですか」
「ごめんごめん。皆にバラすつもりで話したんじゃないのよ。それより、さっきも聞いたけど、今日はご両親いないんでしょ」
「そ、そうですけど……」
「家庭訪問しに行くわ」
「……はっ?」
「家庭訪問よ。分からない?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。急にそんな事言われても……。それに親は居ないって話したじゃないですか」
「だから行くのよ。幹丘君の家で、ゆっくりと話したい事があるの」
「そんな事言われても……。が、学校で話すのは駄目なんですか?」
「そう、駄目なの。幹丘君に、本当の私を知ってもらいたいから」
「本当の私って……先生の?」
「そうよ。だから今日は真っ直ぐに家に帰って。カラオケボックスは無しよ」
「なっ! あいつ、そんな事まで話したんですか」
「ええ。美濃君と行くつもりだったんでしょ。でも彼は来ないから」
「どうしてですか?」
「美濃君には私から話しておいたから。とりあえず家に帰るの。分かったわね」
「……は、はぁ。でも、学校で話せないなんて、どんな事なんですか?」
「だからそれは家に帰ってからって言ってるだろっ」
「えっ?」
「あっ。ううん、何でもないの。早く家に帰ってね。先生も後からすぐに伺うから。じゃあね」
「あっ……」

 赤岸先生は話すだけ話して、職員室に戻ってしまった。学校で話せない内容って、一体何何だろう――って言うか、Mだって話からどうして家庭訪問に繋がるのかが全く分からない。
 兎に角、赤岸先生から話をしてくれるのは滅多に無い事だし、先生と二人きりで話すなんてワクワクする。普段はふざけているけど、別に悪い事をしている訳でもないし、先生に迷惑を掛けた事もないから怒られる事は無いだろう。
 そう思いながら、俺は家に帰った。

 一応部屋を片付けておこう。
 家に帰った俺は、赤岸先生が来ても変な顔をされないように自分の部屋を掃除した。エロ本は本棚の奥に隠しておこう。それなりに勉強しているように、机の上に教科書を開いておくか。
 そんな事をしているうちに、インターホンが鳴った。

「はい」
「幹丘君、いる?」
「赤岸先生。ちょっと待ってください」

 急いで一階まで駆け下りて玄関の扉を開けた俺は、一瞬言葉を失った。

「ごめんね、遅くなっちゃって」
「は、はぁ……。先生、髪……」
「うん。短く切ってきたの」
「どうしてですか?」
「だってこの方がそれらしいから」
「そ、それらしい?」
「上がってもいい?」
「あ、はい」

 何がそれらしいのか分からないが、赤岸先生はいつも後ろで束ねていた髪をバッサリと切っていた。結婚前に短くしたかったのかもしれないけど、突然髪を切られると雰囲気が変わる。

「あの、俺の部屋は二階……」
「知ってるわ」

 自分の部屋に案内しようと声を掛けたが、先生は躊躇いも無く二階へ上がっていった。これも美濃から聞いたのだろうか?
 少し涼しくなって来たとはいえ、まだ夏の暑さが残っている九月。でも先生は何故か茶色いコートを着ていた。それだけじゃない。首にネックレスをしているのかと思ったけど、そのネックレスの先は胸の間に挟まっていた。何より違和感を感じたのは、コートの裾から見えた真っ赤な足。
 いつもはナチュラルな服装の先生が、真っ赤な網タイツというか、ボンテージって言うんだろうか。そんなものを穿いていた。
先生ボンテージ2
「ふ〜ん。今日は綺麗に片付いているじゃない」
「それも美濃から聞いたんですか?」
「聞いたって言うか何ていうか……」

 部屋を見渡した先生は、徐に本棚から幾つかの本を引き出すと、その奥に隠していたエロ本を取り出した。

「やっぱりここに隠してたの」
「なっ! そ、それは……」
「いいのいいの。ふ〜ん、今月号は結構キワドイ写真が載っていたんだ。丁度いいかも」

 先生はコートを着たまま、エロ本をペラペラと捲った。今月号はサド特集って事で、いやらしい衣装に身を包んだお姉さんが鞭を持って立っているシーンがたくさん掲載されている。俺はそんな女性を見ながら、一度でいいからあの鞭で叩かれてみたい――なんて思っていたのだ。

「せ、先生。そんな事よりも、話って何ですか?」

 あまりに恥ずかしかったので、先生の手からエロ本を奪うように取り、ベッドに下に隠した。

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいわよ。ねえ、先生が着ているコートの下って、どうなっているか分かる?」
「コートの下……ですか」
「そうよ。この足、見覚えあるでしょ」
「あるっていうか、まるで……」
「見せてあげようか」

 先生は悪戯っぽい目をしながらコートのボタンに手を掛けると、一つずつ外していった。そして全て外し終えた後、コートを足元に落とした。
 俺の鼓動が急激に加速する。先生の顔からつま先まで、ゆっくりと目で追った後、ようやく言葉が出た。
先生ボンテージ3
「せ、先生……。そ、その格好……」
「そそるでしょ。この姿」
「ど、どうしてそんな格好を……」
「決まってるじゃない。この姿で幹丘君を苛めてあげようと思って」
「も、もしかして……それも美濃が?」
「っていうか、俺がやらせちまってるんだけどな」
「へっ?」
「へへ。赤岸先生の体、奪っちまった」

 俺は先生が何を言っているのか分からなかった。ニヤニヤしながら腕を組み、恥ずかしげも無く胸を見せ付けている。まさか赤岸先生の胸を――乳首を見る事が出来るなんて想像もしていなかった俺は、頗る興奮した。いや、胸よりも先生が着ているボンテージに。

「俺、美濃だよ。信じられないだろうけどさ。でも、ある薬を飲めばこうして他人の体に乗り移る事が出来るんだ」
「他人の体に乗り移るって……」
「実は、学校にいるときから先生の体に乗り移ってたんだ。全然気付かなかっただろ?」
「…………」

 その後、赤岸先生は美濃の口調で話を続けた。ネットで売っていた幽体離脱が出来る薬を使って先生の体に乗り移った事。そしてサドの女性を演出するため、美容院に行って勝手に髪を切った事。更には、先生の金を使い、いやらしいボンテージとコートを購入した事。
 全ては美濃がやったというんだ。これだけ聞いても半信半疑だけど、赤岸先生がこんな事をするなんて絶対に有り得ないし、先生の口から出てくる口調は美濃としか思えない。

「マ、マジで……美濃なのか」
「そういうこと。乗り移るなら女が良かったし、女なら絶対に赤岸先生がいいと思って。そして、折角だからこの体を使ってお前も楽しませてやろうかなって」
「……い、いいのかよ。赤岸先生の体を勝手に使ったりして」
「いいのいいの。どっちみち、もうすぐ先生はいなくなるんだし。その前に思い出作りをしようぜ」
「髪、切ったのはマズイんじゃないか?」
「まあ……。いいんじゃない? 短くても似合ってるし。それにほら、前に先生が話してたじゃなか。髪の毛が長いのって洗うのが大変だって。だったら短くして洗いやすくしてやった方が、先生も喜ぶってもんさ」
「……そ、そうかな。ちょっと違うような気がするけど」
「いいからいいから。そんな事より、折角先生の体でボンテージを着てやったんだ。このまま叩かれたいだろ?」
「……ま、まあな」
「と思って、これも買ってきたんだ」
「なっ!」
「どうだ? 嬉しいだろ」

 紙袋に何を入れてきたのかと思っていたけど――。
 先生が取り出したのは、黒い鞭だった。

「そんな物、何処で手に入れたんだよ」
「もちろん、ボンテージを買うときにさ。ロウソクとかも売ってたけど、これで十分だろ?」
「……すげぇな。そうやって先生が赤いボンテージ姿で鞭を持っているなんて」
「裸になれよ。俺が先生に代わって鞭で叩いてやるから。ちゃんと先生の真似もしてやるよ」

 やばい。
 これは非常にそそられる状況だ。先生の体を勝手に使うなんて許されない事だけど、俺の理性は欲望に蝕まれてしまった。急いで服を脱ぎ、トランクス一枚になる。

「さて、それじゃあ始めるとするか。優しく叩かれるほうがいいか? それともきつい方がいいか?」
「最初は優しく叩いてくれよ。痛すぎると辛いからさ」
「じゃあ……。ほら、幹丘君っ。四つん這いになりなさいっ」
「は、はいっ」

 笑っていた先生が急に険しい顔になり、俺に命令した。慌てて四つん這いになると、先生は鞭を振り上げ、俺の背中を軽く叩いた。

「うっ!」
「どう? 痛くて気持ちいいかしら」
「は、はい」
「もっと叩いて欲しいんでしょ」
「お、お願いします」
「じゃあ先生が幹丘君の体、もっと叩いてあげるわ」

 ニヤリと笑った赤岸先生がボンテージ姿で俺の背中を何度も何度も鞭で叩いてくれる。

「うっ、あっ、あっ。はぁ、はぁ、あうっ」
「いい声出すわね。先生も興奮しちゃうわ。もっと叫んで頂戴」
「はうっ! あっ、せ、先生っ」
「んふふ。もっと強く叩いてあげようか?」
「は、はい。もっと強くお願いします」

 鞭が撓り、背中の肉を叩く音が部屋に響く。俺は今、赤岸先生に鞭を入れられているんだ。この痛みがたまらないっ。

「あうっ、あうっ。はぁ、はぁ、うあっ」
「ほら、だんだん背中が赤くなってきた。今度はお尻を叩くわよ」
「はいっ! 先生っ」

 先生は左足で背中を踏みながら、トランクスのお尻を何度も叩いてくれた。大人の女性に虐げられている感覚が俺を欲情させる。しごかれてもいないのに、肉棒が破裂しそうだ。

「もっと声を上げてブタみたいに鳴きなさいよ。先生に鞭で叩かれるのが嬉しいんでしょ」
「ひいっ! ひいっ!」

 更に強く叩かれた俺は、悲鳴のような声を上げた。かかとで背中をグイグイ押され、お尻を容赦なく叩かれる。

「もっともっと鳴きなさいっ。先生は幹丘君の喘ぐ声が聞きたいのよ」
「あひっ、あひっ。あっ、先生っ……すごいっ」
「そうよ。そうやって、もっともっと声を出すの。はぁ〜、先生。ゾクゾクしちゃうっ」

 普段の先生では有り得ない言動に、性的欲求が満たされた。

「あうっ! あっ、ああっ!」

 体をビクビクと震わせながら、イってしまったんだ。

「え〜。もうイッちゃったの? 早すぎるんじゃない」
「はぁ、はぁ、はぁ。だ、だって……こんなのすごすぎるよ」
「気持ちよかったか?」
「ああ。すごく気持ちよかった。痛みが……快感に変わるんだ」
「へぇ〜。でもこれ、風呂に入ったら相当沁みるだろうな」
「……いいんだ。そんな事は」
「さすがドMの幹丘君。俺にもSっ気があるのかな。叩くのって結構快感だったりするんだ」
「……じゃあ、もっと叩いてくれよ。先生の真似をしてさ」
「知らないぞ。体中が赤く脹れ上がっても」
「いいから頼むよ」
「分かった。じゃあ……もっと叩いてあげるわ。幹丘君が気の済むまでね!」

 こうして俺は、気が済むまで赤岸先生に鞭を入れてもらった。先生の腕が疲れてしまう程に。
 しごいていないのに、三回もイッてしまい大満足だ。俺の肉棒が当てにならなくなった美濃は、鞭の持ち手を使って先生の体を楽しんでいた。ボンテージ姿のまま膣の中を掻き回す先生の姿はとてもそそられた。聞いた事の無い先生の喘ぎ声も、また興奮させられる。

「あっ、あっ、すげっ。膣ってこんなに気持ちいいんだ。あっ、あっ、ああっ」
「ほんとに先生がオナニーしているみたいにしか見えないな」
「あんっ。はぁ、はぁ。そうよ、私がオナニーしているのっ。あんんっ」

 また先生の真似をして喘いでいる。俺は美濃が操る先生のオナニーを見ながら、背中とお尻の痛みを至福に感じていた。