大量憑依
 いい思いをさせてやるからと、奥原と南部が連れて来たのはブラスバンド部の女子七人だった。
 一年生から三年生まで、女子部員全員が揃っている。

「どの女子がいいと思う?」
「お前が気に入った女子とセックスさせてやるよ」

 二人は笑いながら俺に問いかけてきた。
 いきなりセックスさせてやるよと言われても、じゃあ彼女と……なんて言えないし、本人達が了承するわけが無い。でも、奥原達の言葉に女子達は怒る様子も無く、俺を見て笑っていた。

「俺と……じゃなくて、私とセックスしようよ」
「いや、私としたいだろ?」
「ちょっと待てよ、勝手に言い出すなって。お前等、女の快感を楽しんでみたいだけだろ」
「そうさ。折角女子に乗り移ったんだから……って、地でしゃべると萎えるから女子らしくしゃべらないとな」
「そうそう。ねえ、アタシと楽しい事しようよ。もうアソコが疼いて仕方ないの」
「お、上手いじゃないか。じゃあ俺も……私ねぇ。この胸を触って欲しいの。まだ誰にも触らせた事が無いのよ。だから……ねっ!」

 彼女達が何を言っているのか分からなかったけど、奥原の話を聞くとその言動が納得出来た。
 というか、そんな事が現実に出来たなんて信じられなかった。

「実はさ、女子達には同じブラスバンド部の男子が乗り移っているんだ。丁度男子も七人いたから、他人に憑依できる薬を飲ませて、それぞれの女子に乗り移らせた訳。だから体は女子でも、体を操っているのは男子なんだ」

 道理で男言葉をしゃべる訳だ。でも……ということは、女子達が言っている事は本当なんだ。目の前にいる七人とセックスできるって事か?

「誰を選ぶ?お前って大人っぽい女子が好きだから吉川くらいがいいんじゃないか?」
「お、ラッキ〜。吉川って俺じゃん。じゃあ、俺と……っていうか、私とセックスしようよ。吉川のアソコを掻き回されるのってどんな感じだろ?今からわくわくするよ」
「お姉さんっぽいなら、僕が乗り移っている西岡さんもそうだよ。僕だって西岡さんの体を楽しみたいんだ。どう?西岡さんって結構胸が大きいんだ。吸ってみたいでしょ?」

 何やら勝手に話が進められている。南部が言うには、男とセックスしなければ、乗り移った体からすぐにはじき出されるらしい。だから女子達は……いや、ブラスバンド部の男子達は俺とセックスして、少しでも長く女子の体に入っていたいんだ。

「ほら、選んでやれよ。皆、女子の体でずっと居たいらしいぞ」
「だったら奥原と南部がしてやればいいじゃないか」
「それが無理なんだよな」
「どうしてさ?」
「俺達、今からちょっと用事があるんだ」
「よ、用事ってなんだよ」
「実はさ、南部が石岡先生に乗り移って俺とセックスするんだ」
「なっ、石岡先生!?」
「ああ。やっぱり子持ちの女性って魅力的だからな。三十過ぎると結構体も熟されているだろうから、同じ女でも全然違うと思って」
「し、信じられない。石岡先生に乗り移るなんて……」

 まさか、生徒じゃなくて先生に乗り移るなんて。
 石岡先生という言葉を聞いて、何故か鼓動が高鳴った。

「なあなあ。そんな話よりも、早く誰とセックスするか決めてくれよ」
「あっ、そうだ。別に一人に決める必要ないじゃん。俺達七人全員とセックスしてくれればいいんだよ」
「おお!お前、頭いいなぁ。そうだよな、全員とセックスしてくれれば俺達もこの体をもっと楽しめるんだ」
「そんな無茶苦茶な……」

 俺は顔を見合わせて頷く女子達に呆れた。

「それなら俺だけじゃなくて、別の男子とセックスすりゃいいのに」
「…………」
「だよな。別にこいつとセックスする必要ないんだ」
「そうだよ。適当な男子を捕まえてセックスすればいいんだ!」

 ふと漏らしてしまった俺の言葉に、女子達は勢いよく教室を出て行った。

「ま……仕方ないな」
「じゃあ俺たちも行くか」

 奥原と南部が苦笑いをして教室を出ると、俺一人になってしまった。
 もしかして、すごく勿体無い事をしたような……。