学校の帰り、俺の家に夕香が上がりこんできた。今までずっと隠していた事があるから、今日教えてやるという。
 夕香は同級生であり、幼馴染でもあった。高校生になると、茶色の長い髪に優しい顔立ちが大人びた雰囲気をかもし出していた。でも、数ヶ月前から目つきがきつくなり、男の様な言葉をしゃべるようになった。それは俺の前だけであり、普段はそれ程変わりが無いように思える。
 彼女の雰囲気が変わった原因。それは彼女自身では無くなってしまったこと。俺は夕香の性格が変わる瞬間を見てしまったんだ。たまたま宿題を写させてもらおうと夕香の家に行った時の事。玄関扉の鍵が開いていたので家の中に入ってみると、リビングのソファーに座っている夕香を見つけた。しかし、彼女の後ろには人影のようなものが見えた。よく見ると俺と同じくらいの歳の男だ。不思議な事に、彼の体は透けていた。
 そして、彼の下半身が夕香の背中にめり込んでいる。俺は一体何が起こっているのか分からず、ただその様子を見ているしか出来なかった。
 半透明の男が俺のを見てニヤリと笑い、そのまま体を夕香の背中にめり込ませてゆく。夕香が俺に視線を合わせ、苦しそうな表情で口をパクパクと開けている。助けなければならないと思った。でも、俺の足は何故か前に進もうとしなかった。
 男の体が夕香の中に入り込み、頭までスッとめり込んだ。男の存在が消えると、夕香は白目を剥いてソファーに頭を預け、気を失ったまま体をビクビクと震わせた。でも、彼女はほんのしばらくすると目を覚まし、俺の顔を見てニヤリと笑った。まるで、さっき男が笑った時と同じような顔つきだ。

「見たな。体を乗っ取るところ」
「えっ……」
「お前、俺がこの体を乗っ取るところをずっと見てただろ」
「の、乗っ取るって……。ゆ、夕香?」

 今まで見た事が無い表情で俺を睨みつけてくる。その雰囲気に圧倒され、思わず後ずさりした。

「今からこの体も知識も全てが俺のものだ。お前……神丘順次だな」
「な、何言ってんだよ夕香。お前……おかしいぞ」
「まだ分からないのか?馬鹿な奴だな。俺が乗っ取ったって言ってるだろ」

 その後、夕香は信じられない事を口にした。今、夕香を動かしているのは一時間ほど前に交通事故に遭って死んだ譲伍という男。彼が夕香に乗り移り、体を支配しているという。夕香の記憶も簡単に手に入れることが出来、彼女を演じる事だって造作も無い事だと。

「分かってるだろうな。俺が乗り移った事をばらしてみろ。こいつの命は無いと思えよ」
「ゆ、夕香を返してくれよ。俺の大事な幼馴染なんだっ!」
「嫌だね。俺はこの体が気に入っているんだ。まさか女になれるなんて思っても見なかったな。しかも、俺好みの女に」

 そして譲伍は夕香の真似をしながら俺に迫ってきた。

「ねえ順次。私ね、前から順次とセックスしたいと思ってたの。今日はお父さんもお母さんも帰りが遅いから、私の部屋でセックスしようよ」
「や、やめてくれよっ!夕香はそんな事するわけが無いっ」
「いいじゃない。小さい頃からずっと遊んできた仲でしょ。順次の事を考えると体が疼くの。ほら、早く早くっ」

 ズボンの上から肉棒を握り、ニヤニヤしながら上下にしごいている。俺は譲伍という幽霊が乗り移っている事が分かっていながら、夕香とセックスをしてしまった。しかも、殆ど毎日の様に。
 その後、親に怪しまれたためしばらくセックスしていなかったんだけど、こんな状況になっているなんて思っても見なかった。
 俺の部屋で恥かしげもなくセーラー服を脱ぎ捨て、下着も脱いでしまう。そこで見た夕香の体に言葉を失ってしまった。
妊娠
「さあ、どうする?お前のせいで俺の腹がこんなに大きくなったんだ。責任、取るんだろうな?」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。まさか……妊娠してるのか?」
「食いすぎだと思うか?見れば分かるだろ」
「そ、そんな……」
「そりゃコンドームもつけずに中出しを繰り返してたんだ。子供が出来るくらい分かってただろ」
「それはお前が付けるなって言ったからだろっ」
「さあね。それよりもこの子供、お前が育てろよ。お前が犯して作った子供なんだからな」
「む、無責任な言い方をするなよっ。元はと言えばお前が夕香に乗り移ったりしたから悪いんだろ」
「へぇ〜。俺はこの体でお前を誘惑したけど、お前は俺以上にやる気だったじゃないか」
「ち、違うっ!俺はお前が……」
「ま、どっちでもいいけどさ。こうしてお前に見せてやったのは、そろそろこの体に飽きてきたからだ。妊娠したら面倒だし、別の体に乗り移って楽しもうと思ってな」
「な……なんて奴だっ」
「何とでも言え。俺が体から抜け出たら、この女はどう思うだろうな?気付けば何ヶ月も経っていて、しかも妊娠しているんだ。そりゃ気が狂って死ぬかも」
「…………」

 その後、譲伍は夕香の体から出て行った。気付いた夕香は気が動転し、気を失ってしまった。俺は彼女にどう説明すればいいんだろう。いっそ、知らぬフリをしてしまおうか。そんな卑怯な考えが頭の中に浮かんだけど――。

「目を覚ましたか?夕香が今までどうしていたのか、俺が全て教えてやるよ」

 俺は意識が朦朧としている夕香に、ゆっくりと話を始めた。



……う〜ん。暗いお話でございます(^^
気付けばダークな展開になっていましたw