半透明お尻が久美子の下腹部に着地したかと思うと、そのままズブズブとめり込んでゆく。それはまるで久美子の体に飲み込まれてゆくように見えた。
 完全に座り込むと、下腹部を中心にして足が四本、上半身が二つあるように見える。敦司は両手をベッドについて上半身を起こしたまま、半透明な足を片方ずつ彼女の足に重ねていった。その足も、太ももから膝、そして脹脛から足先までめり込んでゆく。不思議なことに足の長さが違うにも拘らず、敦司の足は久美子の足に吸収されてしまったのだ。
 そして今、彼の目の前にあるのは久美子の足だけだ。

(……なじんできた)

 久美子の両足を見ながら自分の足を動かすようにイメージすると、まっすぐに伸びた細い両足がゆっくりと動き始めた。もちろん久美子の意識はなく、ずっと眠ったまま。

(思ったよりも早く動かせるようになったな)

 久美子の足が独りでにM字に開いたり、絡めたりしている。その様子を見て、敦司はニヤリと笑った。

(これで久美子さんの下半身は俺のものだ。すげぇ……)

 どうやら彼は、幽体を重ねた部分を自分の体と同じように操れるようだ。彼女の蟹股に足を開いて、俯きながら股間を眺める。

(このままじゃ触れないから……手を借りるか)

 視線を横に移すと、彼女の手がある。敦司は久美子の手の甲に掌を押し付けるように重ねた。すると、足を重ねた時の様に彼女の手の中にめり込み、見えなくなってしまう。そしてしばらくすると、開いていた久美子の指が彼の意識によって滑らかに動き始めたのだ。
 手首までが共通で、片側に腕が二本ずつという奇妙な状況。敦司は振り向き、まだ眠り続ける彼女を確認すると両手を股間に近づけた。幽体が入り込んでいる下腹部に触れると、手で触れられたという感触が伝わってくる。もちろん、掌からも下腹部を触ったという感触が伝わってきた。
 彼女自身が仰向けに寝ているのでそれほど手を伸ばすことが出来ないが、股間には十分に届く。久美子の手を使い、陰毛を優しく撫でてみる。少しコシのある陰毛を指に絡めると、生え際が引っ張られて痛いという感覚があった。

(こんな中途半端な状態で弄るのも面白いな。久美子さん、目を覚ますかな?)

 マニキュアの付いていない、ほっそりとした中指が陰毛を掻き分け、陰唇の中にめり込んでゆく。先ほど悪戯していたので、膣口から溢れ出した愛液が指の腹にネットリと絡み付いてきた。

(どんな感じかな?ドキドキする……)

 自分の体の時に弄ると、彼女の体がピクンと動いたクリトリスにそっと触れてみる。

(うはっ!)

 蟹股に開いていた足が急激に閉じられた。

(な、何だこれ……。す、すげぇ敏感。これがクリトリスの感覚なのか……)

 ゆっくりと足を開いてもう一度触ってみると、先ほどと同じ敏感な刺激が幽体である敦司にもひしひしと伝わってきた。肉棒をしごいている状況とはまるで違う。初めての刺激を、言葉で上手く表現するのは難しかった。
 彼女の指が、自らクリトリスを弄っている。足がビクビクと激しく震えるのは、久美子ではなく敦司が感じているからであろう。

「ぁ……」

 目を閉じている久美子の唇の隙間から小さな吐息が漏れた。他人が見れば、彼女がベッドに仰向けに寝転び、オナニーをしているようにしか映らないはすだ。

(これ、マジで気持ちいいよ。女の体ってこんなに気持ちがいいんだ……)

 いつの間にか、彼女の指は膣の中に入り込んでいた。肉壁がいやらしく指にまとわり付いてくる。初めて体の中に指を入れる感覚を知った敦司は、その快感に酔いしれながら久美子の表情を見ていた。
 頭が何度か左右に動き、眉が悩ましげに歪んでいる。息も少し乱れているようで、口で息をしながら切ない吐息を継続して漏らしていた。

「ぁ……ん。んっ……んん」

 睫毛がピクピクと震え、今にも目を覚ましそうだ。それでも敦司は快感を求め、彼女の手を使って股間を弄り続けた。

「あっ……あはぁん。……んん?えっ!」

 薄っすらと瞼が開いた久美子が下半身から発する快感に驚いて頭を上げた。

「えっ!?な、何?わ、私……。手、手が勝手に動いて……ど、どうなってるの?」

 彼女には敦司の幽体が見えないので、他人と同じように自ら股間を弄っているようにしか映らない。

「や、やだっ。どうしてこんな……あ、あんっ!」

 自分の指にクリトリスを摘まれた久美子は、喘ぎながら背中を仰け反らせた。股間から手を離そうと腕を動かすが、手首から先に力が入らない。そして両足の神経も切断されたように動かすことが出来なかった。

(目を覚ましちゃったか。まだ横に寝ている俺の体には気付いていないみたいだな。それなら先に上半身も乗っ取らせてもらうか)

 隣に寝ている自分の顔を見られるのはまずいと思った敦司は、股間を弄って彼女の意識を逸らせたまま、幽体の上半身を一気に倒した。

「ああっ!?」

 彼の背中が久美子の胸にめり込み、驚く顔に後頭部が埋もれた。

「あぐっ!あっ、ああっ、あうっ、はぁあっ!うぐっ、うううっ……」

 膝を立て、お尻を浮かしながら苦しそうな表情で目を見開き天井を見つめていた久美子だが、ある瞬間を境に落ち着きを取り戻した。何度か瞬きしながら、乱れた息を整える。そして浮いていたお尻をベッドに着地させると、股間から両手を開放し、上半身を起こした。

「はぁ、はぁ、ふぅ〜。苦しがる声が廊下に漏れなかったかな?」

 久美子はベッドから立ち上がり、見事なプロポーションの裸体を窓に映し出した。

「……もう少し久美子さんの意識がある状態で楽しみたかったけど、仕方ないよな。入院した時からずっと自分の物にしたいと思ってたんだ。これで久美子さんの全ては俺のもの……」

 薄っすらと窓に映る久美子の体は、敦司の幽体によって完全に乗っ取られた。彼女の小さな細胞の一つまでが彼のものとなったのだ。セミロングの茶色い髪を両手で後ろに掃い、ニヤリと笑う。その表情は、普段彼女が見せる笑顔とは違い、随分といやらしい笑みに見えた。