書きたいネタとアンケートが一致したということで、次の作品はレースクイーンが登場します。
 ボチボチ書いていきたいと思います〜。

僕だけのレースクイーン1
 夜中の二時半。
 六畳ほどの部屋で万年床となったベッドに座り、高そうな一眼レフカメラを大事そうに磨いているのは高西奥治二十一歳。
 部屋の壁には彼が今まで撮ってきた写真が無造作に貼られていた。
 父親がカメラマンで、風景や電車などの写真をよく撮っていた影響もあり、彼も小さい頃からカメラに興味を持っていた。ただ、父親とは被写体が全く異なっている。
「明日のイベント、優梨子ちゃんはちゃんと来るのかな」
 彼が夢中になっている被写体。それは優梨子という若い女性だった。ハイレグレオタードに身を包んだ彼女は、俗に言う『レースクイーン』。そして、彼女達を被写体として追いかけている彼は『カメラ小僧』と呼ばれていた。
 優梨子が所属するレーシングチームのレース情報等をネットで調べ、毎回の様に追いかけている。
 サーキットで行われるレースの華。体の線を強調するコスチュームに身を包む彼女達に並々ならぬ興奮を覚える奥治は、数え切れないほど写真を撮り、コレクションしていた。
 その中でも、一番好きなのは優梨子だ。他のカメラ小僧は知らないが、彼にとっては最も華のあるレースクイーンなのだ。
 彼女を部屋に連れ込んで、その全てを写真に収めたい。
 彼は常々、そう思っていた。
 優梨子の写真だけで数百枚あり、部屋に貼ってある写真の殆どが彼女を写したものだ。
 自分だけのレースクイーンであって欲しい。そして彼が思うようなポーズを取り、視線を投げかけて欲しい。
 そう思っているものの、他のカメラ小僧に比べると彼の容姿は今一つ――いや、三つほど。
 ろくに運動もしていないし、生活自体も不規則であるから身長が百六十センチに対して体重は九十八キロ。百キロの大台にも時間の問題だ。
 むさ苦しい奥治がレースクイーンに近づくなんておこがましいと感じられてしまう様で、常連のカメラ小僧達からはしょっちゅう撮影の邪魔をされる。更に、レースクイーン達も彼に視線を投げかけてくれるチャンスは少なかった。
 それでも何とかカメラに収めようと、彼は奮闘するのだった。
 望遠レンズもその一つ。近くで撮影できないのなら、邪魔をされない遠くから撮影しようと考えて購入した。
 しかし、思ったようなアングルで撮れないためそれほど活躍していない。
 ――いっそ、彼女を誘拐して自分だけのものにしたい。
 そんな風に考える事もあった。
「さて、準備も出来たし、そろそろ寝るか。朝が早いからな」
 明日は電車で二時間ほど離れたドームで車のイベントが開催される。
 優梨子が所属するレーシングチームも参加するということで、奥治は期待を寄せていた。
 イベント会場はサーキットよりもカメラに収める機会が多くあるし、上手くすれば話をする事が出来るかもしれない。
「楽しみだなぁ。興奮してなかなか寝付けない」
 いつも撮影に行く前夜は眠れない。
 それでも奥治は汗臭い布団に潜り込むと、瞼を閉じてゆっくりと羊を二千頭ほど数えた――。