ライトブラウンの髪から漂う女性の香り。
俺は肩を並べるのではなく、少しだけ後ろに下がって果乃河先生と歩いた。
斜め前に見る先生の後姿。
淡いピンクの背中に下着の線が見えている。そして深緑色のスカートは歩くたびにお尻の動きを表現していて、大人の女性を演出していた。
「ねえ安川君、どうして後ろを歩くの?」
「えっ。あ、いや。別に意味はないですけど」
こうして先生のスタイルを眺めるためではなく、単に恥ずかしいからだ。
それにしても剛司はどうしたんだろうか。連絡くらいよこせばいいのに。
まあ、おかげでこうして果乃河先生と一緒に歩くことが出来たんだから、逆に礼を言わなきゃならないか。
「安川君、今日は帰ってから用事がある?」
「用事ですか?」
「実はね、ちょっとお願いしたいことがあって」
「お願いって……俺にですか?」
「面白いわね。私と話しているの、安川君しかいないのに」
果乃河先生が軽く笑って見せた。何だか恥ずかしい事を言った様な気がして顔が熱くなる。
「いや……。その、俺にお願い事なんてありえないと思って」
「どうして?」
「どうしてって言われても……困るんですけど」
「家まで付き合って欲しいのよ」
「……家まで?」
「最近、誰かに付けられているような気がして。一人で帰るのが怖いの」
「誰かに?ストーカーですか」
「分からないわ。ただ、ずっと視線を感じる気がするの。私の思い違いかもしれないけどね」
「……そうなんですか」
「家の前まででいいの。安川君って野球部で体格もいいし、力がありそうだから一緒に歩いていれば襲われないかな……ってね」
軽く肩をすぼめた先生は、少し不安げな表情で後ろを歩く俺を見た。
「別にいいですよ。家に帰れば飯食って寝るだけですから」
「ご両親は心配しない?」
「今日も剛司とCD返してから遊びに行くつもりだったんで、遅くなっても何とも思わないですよ。……っていうか、このまま家に帰るほうが珍しかったりして」
「そうなんだ。それじゃ、お願いしても大丈夫ね」
「はい。俺なんかでよかったら」
「安川君だから頼んだのよ。ひ弱で頼りにならない生徒には声を掛けないわ」
ボディガードが出来て嬉しいのか、果乃河先生は嬉しそうに笑った。俺も先生の喜ぶ顔を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
こうして親しげに果乃河先生と話せるなんて夢にも思わなかったな。
人生、生きていればこんな事もあるんだ……なんて、まだ十八年しか生きていない俺はそんな風に思いながら改札口を潜ると、家とは反対方向に進む電車に乗った。
俺は肩を並べるのではなく、少しだけ後ろに下がって果乃河先生と歩いた。
斜め前に見る先生の後姿。
淡いピンクの背中に下着の線が見えている。そして深緑色のスカートは歩くたびにお尻の動きを表現していて、大人の女性を演出していた。
「ねえ安川君、どうして後ろを歩くの?」
「えっ。あ、いや。別に意味はないですけど」
こうして先生のスタイルを眺めるためではなく、単に恥ずかしいからだ。
それにしても剛司はどうしたんだろうか。連絡くらいよこせばいいのに。
まあ、おかげでこうして果乃河先生と一緒に歩くことが出来たんだから、逆に礼を言わなきゃならないか。
「安川君、今日は帰ってから用事がある?」
「用事ですか?」
「実はね、ちょっとお願いしたいことがあって」
「お願いって……俺にですか?」
「面白いわね。私と話しているの、安川君しかいないのに」
果乃河先生が軽く笑って見せた。何だか恥ずかしい事を言った様な気がして顔が熱くなる。
「いや……。その、俺にお願い事なんてありえないと思って」
「どうして?」
「どうしてって言われても……困るんですけど」
「家まで付き合って欲しいのよ」
「……家まで?」
「最近、誰かに付けられているような気がして。一人で帰るのが怖いの」
「誰かに?ストーカーですか」
「分からないわ。ただ、ずっと視線を感じる気がするの。私の思い違いかもしれないけどね」
「……そうなんですか」
「家の前まででいいの。安川君って野球部で体格もいいし、力がありそうだから一緒に歩いていれば襲われないかな……ってね」
軽く肩をすぼめた先生は、少し不安げな表情で後ろを歩く俺を見た。
「別にいいですよ。家に帰れば飯食って寝るだけですから」
「ご両親は心配しない?」
「今日も剛司とCD返してから遊びに行くつもりだったんで、遅くなっても何とも思わないですよ。……っていうか、このまま家に帰るほうが珍しかったりして」
「そうなんだ。それじゃ、お願いしても大丈夫ね」
「はい。俺なんかでよかったら」
「安川君だから頼んだのよ。ひ弱で頼りにならない生徒には声を掛けないわ」
ボディガードが出来て嬉しいのか、果乃河先生は嬉しそうに笑った。俺も先生の喜ぶ顔を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
こうして親しげに果乃河先生と話せるなんて夢にも思わなかったな。
人生、生きていればこんな事もあるんだ……なんて、まだ十八年しか生きていない俺はそんな風に思いながら改札口を潜ると、家とは反対方向に進む電車に乗った。
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