瑶子3
「う……ううっ」
 少し苦しそうな表情の瑶子だが、ほんのしばらくすると彼女の容姿に変化が現れた。

瑶子4
 まるでモーフィングを見ているような感覚だ。
 彼女の黒いショートカットの髪が徐々に伸び始め、明るい茶色のロングヘアーに変化する。
 そして、来ている制服も隆也と瑶子が通っている制服ではなく、全く違う白い制服になった。
瑶子5
瑶子5b
瑶子5c
 今までいた瑶子が別の女性となって目の前に立っている。
瑶子6
「ふぅ。どう?これが今の夏美の姿」
「すげぇ!めちゃくちゃ綺麗になってる〜!」

 瑶子の能力とは、思い浮かべた人間の容姿をコピーできることだった。
 更に驚くべき点は、目を瞑ると思い浮かべた人間の現在の姿を読み取ることが出来る事だ。
 まるで彼女の意識が体から離れて、直接本人を見てきたかのような正確さ。
 ありえない事に、今、その人が着ている服までコピーし、変化してしまう。
 彼女が変身した夏美は、恐らく学校から帰るときの姿なのだろう。
 中学の頃はセミロングで黒かった夏美だが、こうして見るの容姿は随分と変わっていた。
瑶子7
「何よそれ。私よりも夏美の方が好みって事?」
「そ、そういう訳じゃないけどさ。中学生の伊出河さんから随分と変わったなぁって思っただけだよ」
「鼻の下を伸ばしながら言われても説得力が無いんだけど」
「あ……ははは。それにしても……」

 はっきり言って、夏美の容姿にときめいた。
 これほど綺麗になっているなんて。こんな美人に成長するなら、夏美と付き合っていた方が良かったかもしれない――とまでは思わなかったが、目の前に立っている彼女を見て頗る興奮する隆也であった。

「もういいでしょ」
「そ、そうだな。今の伊出河さんが見れて良かったよ」
「じゃあ元の姿に戻るからね」
「あ、ああ」

 変身して、ほんの一分ほどだろうか。
 彼女はまた自分の姿へと戻ってしまった。
 名残惜しい気持ちで一杯の彼が更なる提案を始めた。

瑶子2

「じゃあさ、今から一緒に俺の家に来てくれよ」
「今から?」
「まだ親は帰ってこないからさ」
「で、でも……」
「まだ二時間半以上は俺の言うとおりにしてくれないと」
「……ね、ねえ。隆也の家に行って、何するの?」

 彼女は隆也に問いかけたが、恐らく答えが分かっているのだろう。
 その頬が赤らんでいた。

「いいだろ?」
「……い、いいけど……」

 こうして二人は一時間程かけて、隆也の家にたどり着いた。