春香が部屋に入るなんて本当に久しぶりだ。しかも女性として成長し続ける体にセーラー服を身につけて。
 智也が乗り移っている事が分かっていても、雄喜は部屋の中を簡単に片付け始めた。

「別に片付けなくてもいいって」
「え、でもさ。やっぱり……」
「俺が遊びに来るときはいつも片付けねぇくせに。容姿が変わると対応も変わるんだな」
「べ、別にそういう訳じゃないけどさ」
「じゃあどういう訳だよ」
「…………」

 言葉が続かず、絨毯の上に置いていた漫画を片付けた雄喜を、春香がニヤニヤしながら笑っている。

「そ、そんな風に笑うなよ。ほんとに春香に笑われてるみたいじゃないか」
「え〜、だって面白いんだもん。私の事、そんなに気にしてくれるんだ」
「だ、だから……」
「ははは。何、真っ赤な顔してるんだよ。ちょっと新道の真似しただけなのにさ」
「…………」
「さてと、まずはどうする?」
「えっ、まずはって?」
「……じゃあどうして欲しい?」

 春香が腰に手を当てて雄喜を見ている。
憑依(その3)

「ど、どうして欲しいって……。そ、それは……」
「お前の口からちゃんと言えよ。折角、新道の体に乗り移ってやってるんだからさ」
「折角と言われても……何ていうか、その……」
「よし、じゃあ俺が好きなようにさせてもらう」
「えっ!」
「お前は黙って見ているだけなっ!」
「ちょ……だ、だってさ。と、智也……」

 雄喜はそれ以上、言葉を続けなかった。
 目の前で春香がスカートのファスナーを下ろし、脱ぎ始めたからだ。