その後、午後からの授業を受けた二人は放課後を迎えた。智也に「教室で五分ほど待っていてくれ」と言われたので、クラスメイト達が部活や帰ろうと出てゆく姿を見ながら待っていたのだが、五分経っても戻ってこない。

「何やってるんだ智也。大体は分かるけど」

 彼曰く、春香と一緒に帰れるようにしてやるとの事だったので、必死に春香にお願いしているのだろう。そんな智也の姿を想像すると、申し訳ない気持ちで心が痛む。雄喜のために、幼馴染の春香に頭を下げてくれるなんて――良い友達を持ったものだ。
 いや、そうじゃなくて本当は自分で解決しなければならない事。
 今頃は渋る春香に苦戦しているだろう。小さい頃から頑固なところがある事を彼は良く知っていた。一度決めた事は絶対に譲らない。おそらく、友達と帰る約束をしているだろうから、それが優先られるはずだ。

「ずっと待っているのも落ち着かないな。無理ならそれで構わないから智也を迎えに行くか」

 十分を過ぎたところで教室を出た雄喜は、春香と智也がいるであろう教室に向おうと廊下を歩き出すと、向こうから春香が小走りで走ってくる姿が見えた。
憑依(その2)

「あっ……。春香」
「ああ、雄喜。遅くなって悪かったな。迎えに来ようとしていたのか?」
「そ、そうだけど……。と、智也は?」
「は?あ、そっか。その事、内緒にしてたんだよな。あのさ。俺、智也なんだ」
「……はい?」
「俺が新道に乗り移っているんだよ」
「の、乗り移っているって?」
「良くあるだろ?幽霊が他人の体に憑依するって話。あれと同じで、俺が幽体離脱して新道の体に入り込んでいるんだ。だから今、新道の体は俺の思いどおりに動かせるって訳さ」
「そ、そんな。嘘だろ?」
「嘘じゃないって。とりあえず帰りながら色々と教えてやるよ」
「…………」

 腰に手を当て、ニヤリと笑う春香に違和感を感じる。幼馴染として小さい頃から知っている雄喜は、春香の異変に気づいたようだ。
 彼女にはあり得ない男言葉。そして、まるで智也と話しているかのように思えるしゃべり方に、妙な興奮を覚えた。

「折角、新道に乗り移ってきてやったんだから、このまま二人で帰ろうぜ。ま、鞄は自分のだけ持って帰ればいいんじゃない?俺はまた学校に戻ってこなくちゃいけないから」
「あ、ああ。そ、そうなんだ」」

 少し戸惑いながらも、雄喜は二人で帰る事にした。