その後、綺麗に体を洗った海十は風呂から上がると、母親と軽く話してから香帆の部屋に戻った。髪の毛もしっかりと乾かし、黄色いパジャマを着ている。姉と同じ様に振る舞い、姉に成り代わって行動する。平治が言っていた様に、香帆の全てを自分のものにしたという実感があった。
 今日やるべき事、明日やらなければならない事。そして将来の夢。香帆が思い描いていた全てを海十は無断で得ているのだ。

「姉貴。俺、マジで姉貴として生きてもいいなぁなんて思っちまうよ。俺と姉貴の人生……男と女の人生って違いすぎるからさ」

 タンスの引き出しから肌色のパンストを取り出し、クローゼットに掛かっている紺色のジャケットとタイトスカートを取り出す。もちろん白いブラウスも忘れない。

「まだ先の話だけど、この服を着て就職活動をするんだよな……。大学を卒業して証券会社に就職するのが私の夢。今の成績なら大丈夫。このまま勉強を続けていれば、きっと就職できるわ」

 パジャマの上を脱ぎ、ブラジャーの上から白いブラウスを着込む。ボタンが男性のシャツと逆についていることなんて関係なく留めることが出来る。パジャマのズボンを脱ぎ、ベッドに座ってパンストに足を通す。もちろん足の指を丸めて爪が引っかからないように、そして伝線が出来ないように脹脛を、太ももを通す。
 その後、白いパンティごと下腹部を包み込むと、パンストの中に手を入れてお尻をフィットさせた。いつもの事だ。
 白いブラウスにパンスト姿。海十にとっては魅力的な服装だ。わざとパンストを引っ張り上げると、恥丘が縦に割れてパンティが食い込む。

「姉貴、すごくいやらしいよ。こんなことするのは俺の前が初めてだよな。……そうよ。彼氏にだって見せたことがない、いやらしい姿。海十は特別なんだから。でも、あまり私の体を苛めないでね。痛いのは嫌いなの。……分かってるって。姉貴にそんな思いをさせるはずないだろ?姉貴の痛みは俺の痛みなんだから!」

 パンストの中に手を入れて食い込んだパンティを元に戻すと、タイトスカートを手に取り、徐に穿いた。そしてジャケットに腕を通し、ボタンを留めるとリクルートスーツに身を包んだ香帆が出来上がる。ついでに髪を整え、記憶を元に化粧を施すと余所行きの香帆になった。

「化粧をすると、尚更大人びて見えるな。女って化粧一つで随分と印象が変わるもんだよ。こんな姉貴もなかなかカッコいいな」

 もはや自慢の姉だ。タイトスカートから見える細い脹脛が女性らしさをかもしだしている。姿見に全身を映しながら、両手で体を抱きしめた。

「ああ……。今、俺が姉貴なんだよなぁ。中尻香帆、二十歳。弟の海十は十八歳。海十は私に乗り移って,私の知らない間にいやらしい事をしているの。酷い弟と思う?私はそうは思わない。だって……私と海十は姉弟だもの。弟が私の体を弄りたいのなら弄らせてあげる。乳首だってクリトリスだって膣の中だって、好きなところを好きなように弄っていいの」

 かなり優越感に浸っているようだ。訳の分からないことを香帆に言わせた海十は、何度も姿身の前でリクルートスーツの香帆を自由自在に操り、その容姿を堪能した。

「すげぇよ姉貴。最高だよ」

 何度でも言いたくなる。それだけ香帆の――女性の体つきと言うものは素晴らしかった。口から出る言葉は百パーセント香帆の声になる。わざとらしく喘ぎ声を上げると、本当に香帆が喘いでいるように思える。髪の毛からつま先まで、全ては海十の思い通り。香帆を生んだ母親でさえ海十が乗り移っている事に気づかない。

「はぁ……。この感激をどういう風に伝えればいいんだろ。姉貴の……女の体なんだよなぁ。マジで最高だ」

 また同じ事を繰り返している。姿身の前で香帆に喜怒哀楽を表現させ、普段見せない表情を作り出す。大人になってからの泣き顔と喘いでいる顔は見たことがないので、重点的に表現させた。

「ああ……海十。どうして姉ちゃんの中にいるの?海十が興奮すると姉ちゃんの体が疼いちゃう。折角お風呂に入ったのに、パンティにシミが出来ちゃうよ。私と海十が一つになって感覚を共有しているの。分かるでしょ?私の体が快感を求め始めていること。でも、姉ちゃんは淫乱な女じゃない。海十が悪いの。……そうでしょ」

 椅子を持ち出し、姿見の前に置くと足を閉じて座ってみる。姿勢を正して姿見を見つめる香帆は、まるで会社の面接に来ているようだった。そんな香帆の閉じた足をゆっくりと開き、薄暗いスカートの中を披露する。タイトスカートの生地が突っ張るくらいに足を開くと、蟹股の香帆がいやらしい笑みを浮かべながら姿見に映っていた。

「私が入社したら、タイトスカートに隠れている穴の中で楽しんでいただきたいと思います。もし宜しければ、手を入れていただいても結構ですよ……。くはぁ!姉貴が面接でこんな事を言ったらどう思うだろ?マジで手を入れる奴もいるかもしれないな」

 前のめりになって姿見に映るスカートの中を覗き込んでみると、肌色のパンストと奥にあるパンティが薄暗い中でかすかに見えた。それがまたいやらしい。蟹股に開く香帆の姿にもギャップがあってそそられる。
 リクルートスーツの姿でオナニーするものいいかもしれない。そんな事を思った海十だが――。

「へへ。意識はないけど体は生きているんだ。折角だから姉貴の体を使って……」

 良からぬ事を思いついた海十は椅子から立ち上がると、魅力的なお尻を左右に振りながら自分の部屋に向った。