(幽体を半実体化させて弄ればいいのか。そんなの簡単なことさ!)

 眼下に平治が乗り移った美喜子がビルに向って歩いているところを見ながら、海十はどんな女性に乗り移ろうかと心をときめかせた。
 クラスメイトの女の子、先生もいいだろう。テニス部の後輩に可愛い女の子もいた。ただ、昼休みを過ぎたこの時間。まだ授業を受けているから一人で行動している人はいないだろう。
 オフィス街をうろうろしながらしばらく考えたが、あまり良い場所を思いつかなかった海十は、とりあえず学校に行ってみることにした。


 グランドでは体操服を着てサッカーの授業している男子生徒が見える。体育館を覗いてみると、女子生徒がバスケットボールの授業を受けていた。

(う〜ん。教室に行ってみるか)

 動き回る生徒をターゲットにすることは難しそうだ。
 しばらく眺めていたが、一人でいる人を見つけられないので教室に移動した。

(休んでいるのは俺と平治だけだな)

 四十人ほどが授業を受けているのだが、二つの机には生徒が座っていなかった。もちろん、海十と平治の机だ。平岡先生が黒板に数式を書きながら、かったるいしゃべり方で授業をしている。

(相変わらず眠たくなるしゃべり方だな。他の場所へ移動しようか)

 教室の壁をすり抜け、校舎を順番に回っていった。そこで見つけたのが保健室だ。ちょうど保健の谷口先生は席を外していて、ベッドには女子高生が体を休めていた。
 肩まで掛けた布団から少し見える青い制服。授業中に体調を崩したのだろうか?

(ちょうどいいターゲットじゃないか。二年生かな?誰かは知らないけど、あの体で練習させてもらうとするか)

ショートカットで茶色い髪。見たことの無い顔は、海十が思うように年下だろう。考え事をしているのか、ずっと天井を見つめている。顔色はそれほど悪くなさそうだ。

(谷口先生が何時、戻ってくるかもしれないから早速乗り移らせてもらうか!)

 平治と同じように、半透明な裸の状態から人魂のような形に変化した海十はベッドに近づくと、彼女が被っている布団の中にスッと消えうせた。
 真っ暗な布団の中は、何が何だかよく分からない。目の前に見えるのが布団なのか制服のスカートなのか、それとも太ももなのか?念をこめて人魂を半実体化させ、周囲に触れてみる。

(これは布団か?こっちは柔らかいな。太ももの感触だろうか?)等と触っているうちに、彼女が異変に気づいたようだ。

「え……。布団の中に何かが入ってる?」

 上半身を起こし、布団を捲った彼女。ヤバイと感じた海十は、念を解いて半実体化を解除した。

「何もない……よね?錯覚だったのかな?」

 足のほうまで布団を捲って確認している。そのおかげで、海十はどういう状態になっているのか分かったようだ。

(なるほど。それじゃあ……)

 幽体のまま彼女のスカートに潜り込んだ海十は、そのままパンティの生地を通り越し、いきなり膣の中に忍び込んだ。もちろん、まだ半実体化していないので彼女は全く気づいていない。

「…………」

 何もない事を確認した彼女は、また布団をかぶって横になった。しかし、ほんのしばらくした後、急に襲われた下腹部の感触に目を見開き、声にならない声を上げたのだ。何の前触れも無く膣が広げられた感じ。

「うああっ!」

 その感覚に驚き、布団の中で猫のように丸まりながら下腹部を押さえる。

「な、何っ!?や、やだっ……な、中で……う、動いてるっ」

 膣壁を押し広げながら、上から下に何度も移動する。しかし、股間を包み込むパンティには何の変化も無かった。

「い、いやぁ……。た、たすけ……て……」
(びっくりしているみたいだな。こうやってチンポのように擦り付けてやればそのうちイッてしまうだろ。ほらっ、早くイッちゃえ!)

 海十は見えない膣内で幽体を半実体化させ、執拗に動き続けた。彼女は顔を真っ赤にしながら、誰かに助けを求めようとベッドから這いずり始めた。

「い、痛いっ!お腹が痛いよぉ。あうっ、ああっ」

 苦しそうに床に崩れ落ち、もがき苦しんでいる。相当に痛いようで、這うことも出来なくなった体を丸め、涙を流しながら訴えている。そんな事は全く気にしなかった海十は、湿り気の無い膣の奥に移動すると、子宮口にまで入り込もうとした。

「あぐぅぅ!」

 その奇妙な感覚に、彼女の体が無意識に子宮口を痙攣させた。

(よし!今だっ)

 それを「イッた」と勘違いした海十は、半実体化させていた幽体を開放し、彼女の体全体に行き渡るように広がった。しかし、彼女の魂がそれを受け入れるはずも無く、海十は激しい痛みと共に体からはじき出されてしまったのだ。

(うげっ!)

 魂が消滅してしまうかと思うくらいの衝撃。引きちぎれそうな痛さを受けた海十は、初めて体験した苦痛に意識を無くしてしまった。涙を流し、涎を垂らしながらうずくまる彼女を、戻ってきた谷口先生が発見し慌てて駆け寄る。

「み、道川さんっ!どうしたのっ!」

 その後、どうなったのかは覚えていない。
 海十が目を覚ますと、校舎の屋上辺りをフワフワと漂っているところだった。

(な、何だったんだ……。し、失敗……したのか?)

 自分でも良く分からなかった海十は、しばらくボーっと空を漂うだけであった。思い出しただけでも怖いあの引き裂かれるような痛み。運が悪ければ本当に幽体を引き裂かれ、二度と自分の体に戻れなくなるかもしれない。そう思うと余計に怖くなった。

(と、とりあえず……自分の体に戻るか。さすがにもう一度試そうという気にはなれない)

 すっかり怖気づいてしまった海十は、フラフラと自宅に向って飛んでいったのであった。