この作品も「入れかえ魂」にお渡ししていた過去作品の再掲載となります。
多少の修正はしていますが、相変わらずイマイチですね(^^
社員旅行に行った青木部長と鈴木課長。
青木部長の特異体質によって、鈴木課長が三十二年間守り続けていた童貞を捨てる日がやって来るというお話ですw
いや、趣旨はそこではないのですが……。





「今日は一段と寒いですね。雪は止みましたけど」
「ああそうだな。しかし、予定よりも早く着いたから良しとするか」
「ええ。まだ四時ですからね。みんな先に温泉に入らせますか」
「それがいいな。温泉に使った後、ゆっくりビールを飲むのが一番だ」
「そうですね。夕食は十八時からと言っていましたから、ちょうどいい時間です」
「よし、とりあえず温泉に浸かるか!」
「はい」
青木部長と鈴木課長は後ろの席で、拭いてもすぐに曇る窓を見ながら話をしていた。
今日は会社の慰安旅行。と言っても、会社全体ではなく、部内の旅行だが。
二年前までは海外旅行に行っていたのだがこの不況の中、そんな余裕はどこにもない。
会社からの補助も無くなったという事で、昨年より積み立てたお金で温泉旅行に行く事になったのだ。
周囲の木々は真っ白い雪化粧をしている。冬の温泉はなんとも心地よい。
三十人ほどの社員は貸切バスでこの人里離れた温泉に来ていた。
初めて訪れる温泉。それなりに有名なところとあって結構な人たちが利用するようだ。
ただ、今回宿泊する民宿は三十人も入るといっぱいになるので、民宿自体は貸し切り状態になっているた。
「今日はわざわざ遠いところを来ていただき、ありがとうございます」
民宿のご主人らしき人に玄関で挨拶された後、青木部長を筆頭にぞろぞろと社員達が中に入っていった。
「お〜い、みんな。部屋に入ったら先に温泉に入るんだ。まだ夕食まで時間があるからな」
青木の声に、社員達は「はい」と返事をした。
「ゆっくり浸かって身体の疲れを癒しておけよ」
皆、各部屋に中の良い者同士で数人ずつ分かれたあと浴衣に着替えて温泉に入り始める。
青木は鈴木と二人だけの少し大きな部屋だ。
二人はカバンを置いた後、服を脱いで浴衣に着替える。
「それじゃ、我々も入るとするか」
「はい。青木部長」
浴衣姿の二人が脱衣場に入ると、既に何人もの男性社員がいた。
二人はその中にまぎれて浴衣を脱ぎ、タオル1枚股間にあてがい温泉へと向かう。
中は湯気で少し曇っているが、結構広い浴場だ。
ガラス張りで外の綺麗な景色も見える。
浴場の横にはドアがあり、そこから露天風呂へと繋がっているようだ。
「わしは先に露天風呂に入ってくる」
「では私も」
二人が浴場のドアを開けて露天風呂に歩いて行く。
雪は降っていないものの、やはり裸ではとても寒い。
タオルを股間にあてがいながら足早に通路を渡り、
湯気が立ちのぼる露天風呂に浸かる。
少し熱い湯。身体がジーンとする。
「ああ……。気持ちがいいな」
「はい。身体の芯まで温もりますね」
「そうだな。ん?この敷居の向こうは女性用の露天風呂か」
「そのようですね。女子社員の声が聞こえますから」
竹で出来た敷居の向こうから女子社員たちの声が聞こえる。
ここ数年、やっと女子社員を採用し始めたばかりなので、高卒や大卒間もない女性ばかりだ。
職場の雰囲気が明るくなれば――そういう思いで採用し始めた女子社員。
しかし、現実は風紀が乱れるだけのようだ。
黄色い声を出してはしゃぐ女子社員の声が、二人の耳に届いている。
「元気ですね。若い女子社員は」
「何言ってるんだ鈴木。お前だってまだ三十二だろ。わしに比べればずいぶん若いじゃないか」
「いえいえ、青木部長もまだ四十じゃないですか。これからですよ、これから!」
「いや、わしはもう歳だよ。だがな、今日のわしは違うぞ!」
「と、言いますと?」
青木はどんよりとした雪雲を見ながら、女子社員たちの黄色い声に耳を傾けている。
「部長?」
「……まあ、それは後のお楽しみだ。今はこの温泉にゆっくり浸かろうじゃないか」
「は、はあ」
二人はのぼせるくらい温泉に浸かっていた。
青木は、ずっと敷居の向こうから聞こえる女子社員の声を聞いている。
「さて、今日は誰の……楽しみだ」
独り言をつぶやきながら、真っ赤になってのぼせている鈴木とともに温泉から上がった――。


部屋に戻った二人は、タオル掛けに濡れた白いタオルを掛けた後、座布団に胡坐をかいて座った。
「青木部長。夕食まであと二十分ほどですね。十分前くらいに広間に行きましょうか」
「そうだな。ちょうどいい時間だ」
「お腹も空きましたよ。早くビールが飲みたいものです」
「火照った身体にビールを流し込むのは最高だからな」
「そうですよね!始めの一口が何とも美味いんです」
「ああ……」
青木は話しながら浴衣の襟元から身体を覗き込んだ。
「……まだか」
「どうしたんですか?部長」
「鈴木とこうやって部屋で一緒になるのは初めてだな」
「はぁ。私は今期課長になったばかりですから……」
「そうだな。まだ課長になって四ヶ月か」
「はい。それが何か?」
「お前、まだ童貞だって言ってたよな」
「えっ?」
「もう三十二にもなって童貞か・・・」
「そ、そんなこと関係ないじゃないですか」
何を言い出すのやら。
鈴木はちょっとムッとした。
別に童貞でもいいじゃないか――。
「今日はお前にとっては記念の日になるかもしれないぞ」
「え?何がです?」
「まあいい。そろそろ時間だな。広間に行こうか」
「はぁ」
話の筋が掴めない鈴木は、青木が何を言いたいのか分からないまま、とりあえず青木の後をついて夕食が置いてある広間に向かった。

――十八時。

社員達は適当な――と言っても、仲の良い者同士で並んで座っていた。
二重畳ほどある座敷に、四角形を描くようにぐるりとお膳が並べられている。
やはり女性社員と男性社員は別れて座っていた。
まあ、お酒が入れば席もバラバラになるだろうが。
全員のグラスにビールが注がれたあと、青木が座布団から立ち上がり乾杯の音頭をとる。「ではみなさん、今日は大いに盛り上がって鋭気を養ってください。乾杯!」
「「乾杯!」」
みんなグラスのビールを飲んだ後、パチパチと拍手をする。
「どっこいしょっと」
座布団の上にあぐらをかいて座る青木が、心なしか少し小さくなったように見える。
「青木部長、どうぞ」
鈴木がビールを注ぐためにビンを片手に、青木の前に持っていった。
「おお、すまんな」
差し出されたビンの口にグラスを傾ける。
「…………」
トクトクと注ぐ鈴木。
だが、その目はグラスを見ているのではなかった。
そのグラスを持っている右手に視線が集中していたのだ。
スベスベとした白い肌でとてもしなやかに見える。
まるで女性の手のようだ。
「おいおい、鈴木っ」
「えっ、あ!す……すいません!」
その手に見とれて、グラスからビールが溢れるほど注いでしまったようだ。
鈴木は慌ててお絞りでテーブルを拭取った。
「すいません」
「いや、いいんだ。誰でも始めはそうなるさ」
お絞りで自分の手を拭く青木。
その両手はどう見ても女性の手だ。
「えっ!?」
「わしの手に見とれていたんだろ。この女性のような手に」
青木は両手を鈴木の前に差し出した。
やはり男の手には見えない。
十代後半か、あるいは二十代前半の女性の手。
爪にはうっすらとピンクのマニキュアが塗ってあるようだ。
「青木部長、その手は一体……」
「これはわしの手だよ。おかしいか?」
「い、いえ……」
「まあとりあえず食べようじゃないか。この刺身も美味そうだ」
「はぁ」
青木は美味しそうに刺身を食べ始めた。
鈴木も同じように刺身を食べるのだが、視線はどうしても青木の手にいってしまう。
青木の手は何度も見たことがある。温泉につかっているときだってあんなに綺麗な手では無かったのだ。
みんな宴会を楽しんでいる。
そんな中、青木は肩からずり落ちそうになった浴衣を整え、腰紐をギュッと結び直した。「細いな、このウェストは」
「はい?」
「今何時だ?」
「はあ。十九時十分ですけど」
「そうか。もういいだろう」
青木は浴衣の襟元を少し広げて覗き込むと、少しニヤけた表情になった。
その様子を、鈴木は不思議そうな顔をしながら見ていた。
目の前の食べ物も殆どなくなり、ビールや日本酒などを飲みながら寛ぐ社員達。
青木は目の前に座っている女子社員達五人ほどをじっと見つめながら、浴衣の上から胸を掴んでみた。
不思議な光景だ。
青木部長に胸があるように見える。
まるでボールを掴むように青木の手のひらが丸まっている。
それと同時に一人の女子社員がビクンと反応する。
女子社員は驚いた様子で周りをキョロキョロと見ていた。
彼女は少し離れた位置から見ていても少し身体が大きいような感じがする。
まだ入社して間もない大学卒の女の子だ。
少しあどけない表情で、髪の長い彼女は出来るだけ身体を丸め、小さくするような感じで座っていた。
「ははぁん、あの子か」
青木は肯きながらグラスに入っているビールを飲み干した。
「なあ、鈴木」
「はい」
ほろ酔い気分の鈴木が返事しながら青木と目を合わせた。
「わしの手は綺麗だろ」
「はあ。綺麗ですけど」
あまり頭の回らなくなった鈴木はそのままストレートに答えた。
「ほら、覗いてみろよ」
「はい?」
青木が浴衣の襟元をグッと前に広げた。
その胸元を覗き込んだ鈴木。
「……はい?」
「どうした?」
「……む、胸が……胸があります?」
「どんな胸がある?」
「大きな……女性の胸が……」