――次の日の朝。
カーテンの隙間から太陽の光が差し込み始めた頃、夜遅くまで悩んでいた猪田は浅い眠りの中で夢を見ていた。
それは、妻の規子と久しぶりにセックスをしている夢だった。
娘が大きくなるにつれて体を求め合う事が希薄になり、いつしかセックスレスの生活を続けていた猪田夫妻。
年のせいかもしれない。
まだ規子は猪田と体の関係を求めたいと思っているのだろうか?
もしかしたら、猪田の知らない間に別の男を求めた事があるかもしれない。
そう思った時、ふと志乃理が規子に乗り移っていた時の言葉を思い出した。
「こんな風にして奥さんの体で見知らぬ男性を誘惑しちゃいますよ」と。
そしてセックスをしていた妻の顔が、いつの間にか志乃理の顔になっていた。
「あ、あっ。課長!課長のオチンチン、すごく大きくて気持ちいいです。もっと!もっとセックスして課長と私の子供を作りましょっ」
「はっ!」
志乃理の言動に、猪田は瞬間的に目が覚めた。
額に汗が滲んでいる。
「はぁ、はぁ……はぁ〜。ゆ、夢か……。んっ?」
夢から目覚めたにも関わらず、下半身に感じる気持ちよさ。
そして両足に圧し掛かる重み。
猪田は、膨れ上がった掛け布団を捲り挙げた。
「なっ!の、規子っ」
「んっ、んんっ、んふ。あなた、起きたのね」
「な、何をしているんだ」
「何をしているんだって……見て分かるでしょ」
「ど、どうしてそんな事……」
「昨日、あなたが落ち込んでいたから慰めてあげようと思って」
「し、しかし……」
「本当は会社で揉め事があったんでしょ。私に話してくれないんだもの」
「の、規子……」
いつ起きたのだろうか?
規子は裸になって布団の中に潜り込み、猪田の肉棒をフェラチオしていた。
このフェラチオのせいで、嫌な夢を見てしまったのかもしれない。
涎で滑る肉棒を右手で軽く扱きながら、規子は話を続けた。
「私達、いつセックスしたかしら?」
「……もう随分前のことだから忘れてしまったな」
「……そうね。あなたのこれを舐めるのも久しぶりだわ」
「うっ……あ。はぁ」
「んっく、固くて美味しい。私もあなたのいきり立ったこれを見て、さっきからずっと興奮してるのよ。んっ、んっ、んんっ」
蕩けるような口内で舌を、そして喉を使って肉棒を持て成す規子。
その行為に興奮する猪田だが、もしかしたら志乃理が規子に乗り移っているのではないかという不安が脳裏をよぎった。
しかし昨夜、由菜に乗り移っていたときのように志乃理の一面を現す事は無く、見た目での判断が不可能であるため「屋河なのか?」と聞く事が出来ないのだ。
もし、規子本人ならば志乃理との関係を自ら暴露してしまうことになる。
もちろん規子と由菜にはきちんと話すつもりだが、こんな状況でばれるのは幾らなんでも情けない。
何より、こうしてフェラチオしている規子には、志乃理の影が微塵も感じられないのだから。
「んっ、んふっ。ねえあなた。そろそろ……いい?」
「えっ、あ……ああ」
規子が仰向けに寝ている猪田の体を這い上がり、首元にキスをした。
そして、足を開いて少し腰を浮かせながら肉棒を掴み、ゆっくりと膣口に導き入れる。
「んっ……」
「……うっ」
「あぁ、あなたが私の奥まで入り込んでるわ」
「規子……」
「うっん、久しぶりだから少し痛いの。でもこうやってゆっくりと腰を動かせば……んっ、んんっ」
「はぁ、はぁ……」
両腕を猪田の首に絡みつけた規子は、抱きしめたまま腰を振り始めた。
「ああっ、んっ。あなた、すごく気持ちいいわ。こんなに気持ちがいいなんて……あっ、あっ、あんっ」
「の、規子っ。はあ、はぁ。俺も気持ちいいよ」
「もっと、もっと頂戴。あ、あぁっ。あんっ、あんっ」
「はぁ、うっ。はぁ」
規子の腰がリズミカルに動いている。
華奢な腕で必死に猪田を抱きしめる姿は、艶やかであり、可愛らしくもあった。
猪田も規子の背中を抱きしめ、愛情を表現する。
「いいっ。すごくいいっ!あっ、あんっ、あんっ、あんっ」
「規子っ……うっ、はぁ……うっ、うう」
「あっ、あっ、あ〜っ、あんっ、はぁ、はぁ〜ん」
肉がぶつかり合う音と、膣が肉棒を飲み込むいやらしい音。
熟した女性の声で喘ぐ規子がとても魅力的だ。
久しぶりのセックスに燃え上がる規子の体は、オーガズムを求めようと更に腰を振り続けた。
そのあまりに積極的な動きに、猪田の肉棒が破裂しそうだ。
「うっ、うっ……の、規子っ。そんなに激しく動いたら……す、すぐに出てしまう」
「んんっ。あっ、あっ。い、いいのっ。中に出してっ。あなたの濃い精子を私の中にぶちまけてっ」
「規子っ……」
「あっ、あっ、あんっ、あんっ、あっ……んあっ」
猪田を求める規子の腰は止まらない。
抱きしめる腕に、女性とは思えないほどの力が入った。
そして、溢れる愛液が敷布団に大きなシミを作った。
「ああっ。うっ、くっ……も、もう出るっ!」
「あ、あ、あ、あ、あんっ。あっ……はぁぁぁん」
「ううっ!は、はぁ、はぁ、はぁっ」
「んあああ〜っ!あっ……あっ……あっ……」
膣に、そして子宮に射精された感覚が分かったのだろうか。
規子自身もオーガズムに達したようだ。
激しかった腰の動きが緩やかになり、そして止まる。
猪田は、ヒクヒクと動く膣壁の感触を感じながら規子の頭を優しく撫でてやった――。