「ぷはぁ」
手で顔を拭きながら満足げな表情で湯船から立ち上がった志乃理は、タオルを手に洗い場へ移動すると、化粧落しを手に取り適当に顔を洗った。
シャワーを顔に掛けると、口紅やマスカラなどが剥がれ落ち本来の彼女が現れる。
鏡の曇りをシャワーで流すと、素顔の志乃理を見ることが出来た。
「ふ〜ん。化粧を落としてもなかなか可愛いじゃないか。俺はこっちの方が素朴でいいが」
荒々しく髪を荒った志乃理は、肌をいたわる雰囲気が全く伝わってこない体の擦り方をしていた――。

「はぁ〜。さっぱりした」
大浴場を堪能した彼女は脱衣場で体を拭いて下着を付けた後、浴衣を着込んで数人が利用できる横長の化粧台にあったドライヤーで髪を乾かした。
もともと頭の中心で分けるだけで、軽いパーマが掛かっていたので乾かせばほぼ元の髪型に戻る。
手串で彼女らしく髪をといた志乃理は、「さて、部屋に戻るか」とエレベーターで三階まで降りた。
三〇四室が彼女の部屋だが、そのまま素通りして三〇九室の前に移動する。
鍵は掛かっていないようで、扉を開けると電気の点いた部屋でベッドに横たわっている一人の男性の姿が見えた。
「こんなにだらしない格好だったか?」
白いカッターシャツに紺と赤のストライプが入ったトランクス。
まだ紺色のネクタイと黒い靴下を履いたまま仰向けになって眠っているのは志乃理の上司、猪田課長だった。
普段の猪田はもう少しシャキッとしているのだが、寝るときはこんなものなのだろうか。
「まあいいか。とりあえず一服一服」
志乃理は猪田が脱ぎ捨てていたスーツの内ポケットからタバコとライターを取り出すと、ベッドに軽く腰を下ろして火をつけた。
「ゴホッ!ゴホッ!これはかなりきついな」
一口吸っただけでむせ返ったようだ。
それでも彼女はタバコを吸い続けると、机にあった灰皿に灰を落とした。
まだタバコを知らない体なのに、その吸い方は手馴れたものだ。
「ふぅ〜、さて。落ち着いたことだし、そろそろやってみるか」
寝ている猪田をじっと見つめた志乃理はタバコを灰皿でかき消すと、ベッドに上がり猪田の太ももに手をついた。
「こういう形で自分のナニを扱くのは少し抵抗があるな。さすがにフェラチオまでしようとは思わないか」
眠っている猪田のカッターシャツの裾をめくり上げ、トランクスを脱がした彼女は萎えて皺のよった肉棒を握り締めた。
「俺のチンポってこんな感触だっけ」
少し不思議そうな顔で肉棒を扱き始めると、徐々に血液が充填され始め勃起が始まる。
「部下の手で扱いてもらっているんだからもっと元気よく勃てよ」
握る力を強めながら扱くと、志乃理が言った様に元気よく勃起した。
「よしよし。さすが俺のチンポだ。疲れていてもしっかりと勃起するところは部下への見本だな」
わけの分からないことを口走りながら、彼女は浴衣と下着を脱いで全裸になった。
大浴場で火照っていた体だが、すでに余韻は終わっており、もう一度点火する必要がある。
志乃理は指を舐めると、湯船の中で行った様にクリトリスを刺激する自慰を始めた。
「うっん……。んっ、んっ……ああぁ」
色気のある吐息と切ない喘ぎ声。
少し弄っただけなのに、膣が濡れる感触が分かった。
「もう濡れるなんて、いやらしい体だ。俺の知らないところで何人の男とやったんだろうか。もしかしたら部下の男とやっているかもしれないな」
他人事のように呟き猪田をまたぐように膝立ちした志乃理は、少し萎え始めた肉棒を軽く扱いた後、ゆっくりと腰を沈めていった。
膣口に導くように指で陰唇を開き、空いた手で肉棒を誘導する。
「猪田課長。今日は夕食ご馳走様でした。お礼に私の膣を召し上がれ……ああっ!」
指二本分よりも太い肉棒が膣内にめり込んできた。
思わず腰を止めてしまったが、またゆっくりと沈めてゆく。
肉棒が濡れていないので入りにくかったが、志乃理の愛液が肉棒を包み込んで潤滑液の役目をする。
「ううっ、すごい。腹が満たされたって感じだ」
猪田の上で女座りした志乃理は、下腹部をやさしく撫でた。
「この腹の中に俺のチンポが入り込んでいるんだよなぁ。考えて見ればすごいことだ」
何やら感慨深そうな表情をしながら、両手で胸を揉みしだく。
眠っている男性の上で膣に肉棒をめり込ませ、胸を揉んでいる彼女はまるで娼婦のようであった。
「どう?猪田課長。部下の膣の中は?入れただけでイッちゃうんじゃない?」
ニヤニヤしながら問いかけた志乃理は、ゆっくりと腰を動かし始めた。
うっとりとした表情で気持ちよさそうに胸を揉む志乃理に対し、猪田は終始無言で眠り続けている。
眠っているというよりは、気を失っているか意識がどこかに飛んでしまっている感じだ。
息はしているが生気は無い。
そんな猪田の肉棒を膣壁で刺激し、自らも快感を楽しむ志乃理。
ただし、普段の彼女は上司に対してこんなことをする女性ではなかった。
明るく振舞うが、性格は真面目で倫理を重んじる性格なのだ。
そんな彼女がこのような行為をするわけが無く、明らかに異変が起きているとしか思えない。
彼女を知っている人間なら誰しもが思うこと。
そう。それは今こうやって【志乃理に犯されている】猪田が一番よく知っていた。
志乃理が入社したときから部下として付き合ってきた猪田。
ある意味、大事な娘だという気持ちを持っていたかもしれない。
そんな志乃理が猪田の上に跨り、腰を振って善がっている。
猪田はどう思っているのだろうか?
「はぁ、はぁ。んっ!ずっと目をつけていた部下とこうやってセックスできるなんて。あの薬は最高だ!幽体離脱万歳だな」
今度は膝を上げて蛙のようにしゃがみ、そのままお尻を上下にピストン運動させる。
勢いがつく分、膣の奥までめり込んで子宮口をノックする感じがあった。
「ああっ、あっ、あっ。すごいっ!奥の奥までっ……あっ、ああっ、あああ」
気持ちよくてたまらないようだ。
形振りかまわず腰を動かす志乃理は、隣の部屋にまで聞こえるほどの喘ぎ声を出しながら快感をむさぼり続けた。
かなり激しく動いているにもかかわらず、猪田は全く目覚めない。
そんな猪田の胸に手をついた志乃理は、セミロングの髪を乱しながらオーガズムを迎えようとしていた。
「あああ、あ、あ、あ、すごっ……はぁ、はぁ、ああっ、イイッ、これっ、すごいっ」
クリトリスを弄らなくても膣だけでイケそうだ。
志乃理は、胸の置いた手に力を入れると、最後の力を振り絞って腰を動かした。
「ああうっ!あうっ、あうっ、あ、あ、ああっ、あっ、はあっ、はぁっ……イッ……クッ!」
ビクンと体を震わせた志乃理は、弓なりに背中を伸ばしながら天を仰いだ。
「ああっ!ああっ!あっ……ああぁ〜」
猪田の胸に、志乃理の爪あとが赤く残った。
そして、オーガズムに達した志乃理はそのまま猪田の胸に体を委ねたのだった。
蟹股に開いた足。
後から膣口が見え、中に肉棒が入り込んでいるのがはっきりと分かった。
その膣口から粘性のある白い液体が滴り落ちてくる。
おそらくこれは――。


「おはよう、屋河」
「おはようございます」
「どうした?」
「えっ、いえ。何でもありません」
「顔色が優れないようだが。夕べはゆっくりと眠ることが出来たのか?」
「それが……その……」
「ん?」
「あの、課長。私、昨日は自分の部屋に入りましたよね」
「はぁ?」
「えっ……。あっ、す……すいません。変なことを聞いて」
「疲れが溜まっているようだな」
「い、いえ。そんな事は無いですけど……」
「そうか。でも調子悪そうだから、今日は俺に全部任せておけばいい。お前は横でいるだけでいいから」
「で、でも……」
「いいからそうしろ。部下に無理をさせるわけにはいかないかなら」
「……ありがとうございます、課長」
志乃理は昨日と同じようにリクルートスーツに身を包み、化粧や髪を整えて猪田の前に現れた。
ただ、少し疲れている様子で何か考え込んでいる。
「よし、行こうか」
「はい」
ホテルのロビーを出た二人は、電車で契約を進めるための会社へ向かった。
途中、猪田は携帯を開いて薄ら笑いをする。
ジョグダイヤルを押すたびに映る志乃理のさまざまな裸体を眺めながら――。



ビジネスホテルでゆっくりと……おわり



あとがき
ストレートに憑依のみの作品でした。
志乃理は体を弄ばれただけなのですが、実はこの作品の続きを少し考えていました。
ODになるんですけどね。
また構成が固まれば書いてみたいと思います。
それでは最後まで読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。
Tiraでした。