夜のビジネスホテル内は、廊下をうろついている客が殆どいない。
更には女性客の姿を見つけるのは至難の業だ。
廊下では誰にも出会うことが無かった志乃理だが、エレベーターで屋上階である七階に上がる時に二人の男性客に会った。
六階のボタンが黄色く光っているのを見ながら、志乃理は七階のボタンを押した。
スーツ姿の中年男性二人と、下着を着けずに浴衣を身にまとった女性が一人。
ほんの一分も一緒にいなかったのだが、志乃理はずっと二人の突き刺さるような視線を背中に感じていた。
志乃理が乗るまでは何か話していたようだが、乗り込んでからは終始無言。
六階に着き、志乃理が【開】ボタンを押してやると、二人は「ありがとう」と言いながら軽く会釈をして出て行った。
その際、浴衣の胸元に視線が移動し、中を覗き込もうとしたような雰囲気を感じた。
「まあ、男なら誰でも同じ行動を取るだろうな」
エレベーターの扉が閉まった後、徐に浴衣の胸元を引っ張って中を覗き込んだ志乃理。
見られて感じているのか、乳首が少し勃起しているように思えた。

屋上階である七階に着くと銭湯の演出をしているのだろうか、目の前に青と赤の暖簾が掛かった入口があった。
もちろん、青の暖簾には「男性」、赤の暖簾には「女性」と書かれている。
志乃理は迷わず赤い暖簾をくぐり、脱衣場へと足を踏み入れた。
明るく照らされた脱衣場は八畳ほどの広さだろうか。
壁際に木製のロッカーがあり、中には籠が入っている。
それぞれはキーが掛かるようになっていて、そのキーには腕に巻けるようにバンドがついていた。
「誰もいないのか」
下駄箱にスリッパが一足もなかったので、おそらくそうだろうとは思っていたのだが、脱衣場には一人の女性もいなかった。
先に浴場を覗いてみると、やはり女性の姿は無い。
「ちょっと残念だな。しかし、気兼ねなく楽しめるというところか」
一番とついたロッカーを開き、タオルだけをロッカーの上に出して残りは籠の中に仕舞う。
そして徐に浴衣を脱いでロッカーの籠に押し込んだ。
「そうか」
バスタオルに包んでいた化粧落としを抜き取った志乃理は、手首にキーを巻きつけるとタオルと化粧落しを手に浴場に入った。
十人以上は浸かれるであろう湯船に、八つほどの洗い場が用意されている。
志乃理は適当な洗い場に化粧落としを置くと、洗面器を持って湯船のお湯を汲み、掛け湯をした。
「よいしょっと」
細い足を湯船につけ、全身を沈めてゆく。
湯船にタオルをつけないでくださいと書かれていたのだが、志乃理はまだ使っていないタオルを湯船につけると、軽く絞って頭の上に乗せた。
「ふぅ〜」
肩まで使った後、手足を大きく開いて全身の力を抜く。
「気持ちいいな。やっぱり大きな風呂は最高だ」
両手で湯をすくって顔に掛けると、とても気持ちがよかった。
しばらく顔を上げて天井を見ていた志乃理は、頭に乗せていたタオルを湯船の淵に置くと、湯の中で浮いている二つの大きな胸を眺めた。
湯船の気持ちよさのせいか、いやらしい事を考えているせいかは分からないが、乳首が勃起している。
両手で掬い上げても浮力によって重さはほとんど感じられない。
ゆらゆらと揺れる湯面に光が屈折し、胸の形を歪めている。
その胸を両手で揉んで、さらに歪めてみた。
指の形にめり込んでゆく乳房。
そして、揉まれている感覚が分かるということは、脂肪の塊である乳房にもしっかりと神経が通っているということだ。
志乃理はそう思いながら、一人で胸を揉み続けていた。
「それにしても柔らかい。そしていやらしい」
乳首を弄ると、男性では味わえない気持ちよさを感じることが出来る。
人差し指と親指で潰すように挟み込み、そのまま指の腹で転がしてみると、思わず声が出てしまうのだ。
「あぁ……。この弄り方が一番気持ちいい」
大きく開いていた足が、その気持ちよさを表現するかのように悩ましげに動いている。
「うう……。はぁ、あっ……ふっ」
動いていた足が自然と女座りになり、背筋を弓なりに伸ばす。
今日は相当気持ちがいい様で、普段の志乃理はない善がり方だった。
「ああっ!」
大きく喘ぐと、浴場の中に女性の艶やかな声が響いた。
その声に、志乃理の手が一瞬止まった。
今の声は自分が出したのかという様な驚きの表情だったが、すぐにニヤけた志乃理はまた乳首を弄り始めた。
「あんっ、あっ。はぁ、ああんっ」
先ほどの響いた声が気に入ったのか、わざとらしく大きな喘ぎ声を出している。
「はぁ、はぁんっ。この声がたまらんな。あんっ」
乳首を弄っていた右手がスルスルと下腹部へと降りていき、揺らぐ陰毛を掻き分ける。
そして、湯の粘度とは大きく違う液体が染み出ていた陰唇に指を割り入れたのだ。
「んああっ。すご……い。この感覚は……」
女座りしている太ももを開き、更に手を入れやすくする。
「んっ、んんっ。あああ……。ここがすごく……敏感だ」
志乃理のほっそりとした中指の腹が、充血したクリトリスを執拗に弄っている。
「あっ、ああっ。はぁ、はぁ、はぁ、ああっ。んああ」
大浴場で自慰するという行為が志乃理を興奮させているのだろうか。
尋常ではない感じ方。可愛らしい笑顔を持つ志乃理が、大人びた艶と色気をかもし出していた。
「いいっ。これはすご……ああっ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
随分と顔が赤くなっている。
気持ちいい反面、熱くてのぼせそうだ。
志乃理は一度湯船から上がると、幅が十五センチほどある湯船の淵に腰掛けた。
そして、左足を淵に上げて右足を湯船に付けるという体勢をとった。
股間が大きく開き、陰唇が捲れて見えている。
その様子に興奮したのか、志乃理は両手で更に陰唇を開いて中の様子を伺った。
先ほどまで弄っていたクリトリスが充血し、大きく膨れ上がっている。
そして尿道に通じる小さな穴と、肉棒を挿入するための膣口が見えた。
「どれ。中の感じはどんなだろうか」
俯くと前に垂れてくる髪を後ろにかき上げた志乃理は、右手の中指をゆっくりと膣の中に入れ始めた。
執拗に弄った乳首のおかげで十分に濡れた膣内は、何の抵抗も無く志乃理の指を飲み込んでゆく。
「うっ……おお。すんなりと入ったか。うっ、ああっ」
膣内で指を折り曲げたり、出し入れしてみたりする。
その膣から感じる快感は、乳首のそれとは少し違う感じだった。
一本入るなら二本でも。
中指に沿わせるように、薬指も膣内に入れてみる。
思っていたとおり、志乃理の膣は二本ともすんなりと受け入れた。
「はぁ、はぁ、はぁ、あっ、ああっ。はぁ、んんっ、んんあっ。あんっ」
大きく足を開いたまま自慰行為に耽る志乃理。
自分の指が自分の膣にめり込み、クチュクチュと音を立てる様に興奮しているようだ。
滑り気のある愛液が二本の指を包み込み、そして湯船の中に垂れ落ちてゆく。
「ああっ。はぁぁん……こ、この声も……最高だ。ああんっ!」
自分で好きなように出せる上ずった喘ぎ声は、何度も浴場内に響いた。
その声を耳に焼き付けながら必死に指を動かし、膣でオーガズムを迎えようとする。
「はぁ、はぁ、ああっ、気持ちいいっ!んんっ、あっ、あっ、あ、あ、あっああっ」
空いていた左手も股間に忍び、クリトリスを激しく刺激し始めた。
膣とクリトリスを同時に弄ると、快感が津波のように押し寄せてくる。
「ああっ!イ、イクッ!イキそうだっ。あっ、あ、あ、あ、イクッ、イクッ、あああっ!ふあああ〜っ!」
二本の指を膣壁が締め付けると、志乃理は大きく体を震わせた。
どうしようもない快感が全身を包み込み、脳天がしびれた様な感覚を覚える。
「ああ……あ……あ……」
天を仰ぎながら、金魚のようにパクパクと口を開けた志乃理は、体の力が抜けたのか湯船の中に滑り落ちてしまったのだった。