八月の太陽。肌がじりじりと焼けるのが分かるくらいの日差し。
それでもテーマパークはたくさんの家族連れやカップルで賑わっていた。
周囲に植えられた濃い緑の木々からは、賑やかを通り越した蝉の叫び声が聞こえており、聞いているだけで何倍にも暑さが増すような気がした。

「今日はお客さん、やけに多いね」
「うん。夏休み最初の日曜日だからかな」
「ちょっと緊張したりして」
「よく言うよ。緊張の【き】の字も知らないくせに」
「そんな事ないもん。咲希姉ちゃんだって分かるでしょ」
「さあ。双子だからってそこまでは分からないよ」
「また……」
「ねえ優衣。それよりも今日はスポンサーの人が来るのよ。覚えていた?」
「この前、主任が言ってたよね。プロデューサーが来るって」
「うん。どんな人だろう」
「怖い人だったりして」
「優衣が最初に挨拶してよ」
「いやよ、咲希姉ちゃんが挨拶してよ。私、そういうの苦手だから」
「お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」
「お姉ちゃんって言っても、生まれてくるのがほんの数秒早かっただけじゃない」
「それでも私が姉よ」
「そんなの知らないもん」

双子の姉妹、咲希と優衣は関係者しか入ることの出来ない事務所の一室で、窓の外に見える客達を眺めながら話をしていた。
一卵性双生児である二人の容姿は本当に瓜二つ。茶色いショートカットも同じように揃えているせいで、大学では何度も間違えられることがあった。
髪型の好みも一緒なので仕方がないのだ。
体を動かすことが好きな二人は、同じ体育大学に進み新体操部に所属していた。
その傍ら、テーマパークで戦隊物の気ぐるみを着たバイトをしているのであった。
「超鳥戦隊ゴチョリンガー」という、子供達に絶大な人気を誇る番組。
男性三人、女性二人の計五人が宇宙から来た悪の使者と戦い、地球を守るという設定だ。
その女性二人の役を、咲希と優衣が担当している。
青い着ぐるみに身を包むゴチョブルーこと咲希と、黄色い着ぐるみに身を包むゴチョイエローこと優衣。
着ぐるみといってもゴワゴワとした大きなものではなく、模様のついた全身タイツにスカート姿がベースで、玩具の携帯が付いたベルト、そして肘や膝に飾りが付いている程度。
頭からすっぽりと被るマスクは息苦しく、専用のブーツも少々動きにくいが、双子であるからか二人の演技はとても合っていて、ある意味テレビで見るよりも美しく感じられた。
その噂を聞いたスポンサーのプロデューサーが今日、二人の様子を見に来ることになっていたのだ。

「やあ。咲希ちゃん、優衣ちゃん。体調の方はどうだ?」
「あ、主任さん。こんにちは」
「今日、村岡プロデューサーが来るって話をしただろ」
「はい」
「私の部屋にいるんだ。挨拶に行こう」
「分かりました。ねえ咲希姉ちゃん、やっぱりちょっと緊張するね」
「また嘘ばっかり」
「もうっ、嘘じゃないって」
「おいおい。いいから早く」
「す、すみません……」

咲希と優衣は恥ずかしそうに舌を出すと、主任の後について行った。