他人の目が気になる。
別に視線が合うわけではないのだが、スキニージーンズの中にチ○ポをつけたまま街を歩くのは恥ずかしい反面、スリルがあった。
暗い空に灰色の雲が浮かんでいる。
香夏子は街灯が少なく、薄暗い場所ではショルダーバッグを普段どおり肩から横にかけ、膨れた股間を露わにしたまま歩いた。
すれ違う人たちは、薄暗い状況で香夏子の股間に気づいてない。

(街中で孝彦君のオチンチンを付けたまま歩くなんて……すごく興奮する)

その香夏子の気持ちは、いつまで経っても小さくならないチ○ポが表現していた。
ジーンズの分厚い生地に押さえつけられ、歩くたびにチ○ポの頭が若干擦られる。
それが気持ちよくて、勃起し続けるのだ。
ただ、玉袋の居心地が悪く、何とか位置を変えたいと言う気持ちはあった。
とはいえ、この狭いジーンズの中では何処にいても居心地が良いとは言えないと思われるのだが。

「きゃっ!」

そんな事を考えていた香夏子は、横の道から不意に飛び出してきた自転車に気づかず、接触しかかった。
自転車がヨロヨロとよろけ、ガタンと倒れてしまう。

「だ、大丈夫ですか?」

香夏子は慌てて倒れた自転車の側に駆けつけた。
見ると、二十代後半くらいの女性が尻餅を付いた感じで座り込んでいた。

「大丈夫ですか?」
「ええ、ごめんなさい。子供を知り合いに預けていて、急いで引き取りに行こうとしていたの」
「私も考え事をしていて気づきませんでした。すみません」
「ううん、いいのよ……」

ブレーキをしてあまりスピードが出ていなかったため、女性の怪我は無い様子。
ただ、起き上がろうとした女性の視線は、香夏子の体の一点に集中していた。

「え?」
「……え?」

女性の視線が……股間に集中していることに気づいた香夏子は、とっさに手を前にして隠した。ショルダーバッグで前を隠すことを忘れていたのだ。
互いに視線があったが、女性は見てはいけないものを見てしまったという表情をしてサッと視線を反らした。
それを見た香夏子が真っ赤になる。

「あ、あの……わ、私はこれで」
「あ……は、はい……」

一刻も早くこの場から離れたいと思った香夏子は、それ以上視線を合わせることなく走り去った。

「な、何?あの人の……女性にしか見えなかったけど、もしかして男?」

女性は立ち上がった後、若干内股になって走り去る香夏子の後姿をしばらく見つめていた。

「はあっ、はあっ、はあっ……やっぱりダメ」

先ほどの女性に変態だと思われた香夏子は、まだ開いていたファーストフード店に入ると、何も言わずに女子トイレの個室に入り股間からチ○ポを取り外した。

「あんな目で見られるなんて、恥ずかしすぎるよ」

まだ羞恥心は残っているようだ。
チ○ポを付けたまま人前で歩くことが、スリルから多少の優越感に変わり始めていた香夏子だったが、今回のことで気持ちが変わったようだ――というか、正常に戻ったと言うべきだろうか。
ショルダーバッグにチ○ポを仕舞った香夏子は、あらかじめ連絡を取っていた知り合いの女医に会った後、駅前で適当なジュースを買ってから家路についた。