「それにしても私の体、スタイルいいわよね」
「だろ。このスタイルを維持するのって結構大変なんだ」
「高校のときは、結構好きなもの食べてたのにね」
「入れ替わった後、ストレスで五キロくらいは痩せたよな。景子の両親も随分心配してたっけ」
「頬が痩けて……いつ倒れてしまうかもしれないって思ったもの。見ていてちょっと辛かったな」
「ああ。でも、景子はそれほどでも無かったよなぁ」
「うん。こういう時は女性の方が精神的に強いのかも」
「そうだな」

トイレから戻ってきた後、二人はまた雑談を始めていた。
色々と話したいことがたくさんあるのだが、そろそろ肝心な話がしたいと思った和馬の姿をした景子は、少し間を置いた後、話を切り出した。

「あの、和馬」
「ん?」
「実はね、今日来てもらったのは和馬に知らせなければならない事があったの」
「だと思ったよ。そうでもなければわざわざ会いたいなんて言わないもんな」
「そんな事無いけど、大事な話なの」
「うん、聞くよ」

真剣な顔つきにで話すものだから、景子も一旦腰を浮かせて座りなおした。

「で、どんな話なんだ?」

景子は両手を太ももの上に置いて、じっと和馬を見つめた。

「和馬は……好きな人、出来た?」
「俺?」
「うん」
「そ、そうだな。好きな人って言っても、男を好きになれるほど女性には成り切れていないからな。近づいてくる男は結構いるけど」
「そ、そうなんだ」
「女子短大に行っていた頃に知り合った女性がいてさ。結構男勝りなところがあるんだ。彼女なら気兼ねなく話せるから、親友としての付き合いはあるけど」
「そっか。やっぱり体が私でも、精神は和馬だから好きになるのは女性だよね」
「その内、男を好きになれるかもしれないけど、今は全然考えられないな。でもどうしてそんな事を聞くんだ?」

和馬はその質問にごくりと唾を飲み込むと、拳をギュッと握り締めて口を開いた。

「え、ええ。じ、実はね……私、結婚する事にしたの」
「……け、結婚……って?」
「うん。好きな女性と結婚する事にしたのよ」
「す、好きな女性!?だ、だってさ。いくら俺の体だからって……女性を好きに!?」
「……お、おかしいよね。私の感覚って」
「お、おかしいとかそういう問題じゃなくって……け、結婚!?」

体は異性でも、まさか同姓を好きになって……しかも結婚まで決意するなんて。
景子は思わず身を乗り出していた。

「色々あったんだけど、ずっと付き合っていると彼女が愛しくなってきたの。彼女も私の事を愛してくれているの」
「そ、そりゃ外見は俺なんだから、彼女は男と付き合っていると思っているだろっ」
「そうね」
「彼女には何も言っていないのか?」
「ええ。話していないわ」
「気づかれたらどうするんだよ?」
「だから、結婚してからも気づかれない様にやっていくつもりよ」
「彼女、実は中身が女だと分かったら悲しむんじゃないか?騙されたと思って」
「……大丈夫。私、和馬として……男としてやっていけるわ」
「……し、信じられないよ……」

深く腰を下ろした景子は、大きくため息をついた。
予想通りのリアクションだったのだろうか。
和馬は落胆した景子に、「ごめんね」と誤った。

「別に俺に対して謝ってもらわなくてもいいんだけどさ……」
「うん……」
「それにしても……。そうか……」

言葉が続かないようで、景子は上を向いたまま目を閉じてじっと考えている。
和馬もあえて話しかけないようにしていた。