――結局くるみを選んだ裕介。
後ろめたい気持ちもするけど、これでよかったんだ。
そう思いながら家の玄関をくぐった。
靴を脱ごうと足元を見ると、始めてみる靴が並べてある。

「あら、お帰り。あんたにお客さんが来てるよ」
「えっ、誰?」
「さあ。見たことないけど、あの制服はめぐみと同じだから。一緒の学校なんでしょ」
「めぐみと同じ?誰だろう」

とりあえず裕介は靴を脱いで、2階の自分の部屋に入った。
そこには、机に向かって座っている女の子がいた。
たしかにめぐみと同じ制服。でも、めぐみではなかった。
しかしこの後姿、見たことがある。

「あの」

裕介は恐る恐る声をかけた。
「あの人と付き合うことにしたの?」

椅子ごとくるっとこちらを向いた女の子。

「の、のぞみちゃん!」

なんと、その女の子はのぞみだった。

「ねえ、あの人と付き合う事にしたんですか?」

のぞみが迫ってくる。

「そ、それは……」

さっきくるみと付き合うって決めたのに。
のぞみがいきなり目の前に現れたら、面と向かって断る事ができない。

「私って、そんなに魅力ないですか?」
「そ、そんなことないけど……」
「それならどうして私だといけないの?」

裕介の胸に飛び込むのぞみ。

「ちょっ……ダ、ダメじゃないんだけど」
「じゃあ私と付き合ってください」

のぞみは裕介を見上げて見つめている。

「あ、あの。その……」

裕介はタジタジになってしまった。

「優柔不断」
「えっ。」
「それじゃあくるみさんがかわいそうだよ」
「のぞみちゃん?」
「ちゃんと断るなら断らないと。そんなんだからお兄ちゃんはダメなんだよ」
「お、お兄ちゃん?」
「のぞみの事は断るんでしょ。だったらそうやってモジモジしてないでしっかりと断ってよ」

裕介はのぞみが話している事がよく分からなかった。

「お兄ちゃんは女性と付き合うの、失格ね」
「の、のぞみちゃん。さっきから何言ってるの?」
「分からないかなあ。私だよ、め・ぐ・み!」
「めぐみ?」
「うん。」
「めぐみって、僕の妹の?」
「そう。」
「そうって……」
「驚いた?私がのぞみに乗り移って身体を動かしてるの」
「???」
「訳分かんないよね。私って実はこんな事が出来るんだよ」
「うそだ……」
「ほんとだって。お兄ちゃんと私しか知らない事、言ってあげようか」

のぞみの口から出てくる事は裕介とめぐみ……そう、家族でしか知りえない事ばかりだった。

「どう?これで信用した?」
「な、何か信じられないけど。たしかにめぐみだ」
「でしょ」
「でも、どうして!?」
「お兄ちゃんがマンネンモテない男だからさ、今年はちょっといい思いさせてあげようと思って。うちのクラスでかわいい子っていったらのぞみだったからね、のぞみの身体をちょっと借りてお兄ちゃんに迫ってみたの。どうだった?バレンタインデーの時は。まさか私がのぞみに乗り移ってるなんて思わなかったでしょ」
「…………」
「ほんとはね、のぞみの身体でちょっとだけ付き合ってあげようと思ったんだけど、今年は兄ちゃん、くるみさんからチョコレートもらったでしょ。まさかチョコレートもらうなんて思ってなかったから私の計画がくるっちゃったのよ」
「…………」
「でも、お兄ちゃんがどんな行動とるか興味あったし、くるみさんとちゃんと付き合うって言うか知りたかったから黙ってたの。お兄ちゃんがのぞみじゃなくて、くるみさんを選んだからほっとしたよ」
「そ、そうだったのか……」
「ちゃんとくるみさんと付き合うんでしょ?」
「ああ、もちろん。ちゃんと付き合うよ」
「そっか。それを聞いて安心したよ。のぞみを選んだらどうしようかと思ってたもん」
「しかし……まさか、のぞみちゃんがめぐみだったなんてなぁ」
「迫真の演技だったでしょ。お兄ちゃんたらボーっとしちゃってさ。面白かったよ」
「そ、そんなの仕方ないじゃないか」
「そうよねぇ。この身体で迫られちゃ、仕方ないよね。胸だって私と同い年とは思えないくらいおっきいんだから」

めぐみは制服の上から両手で、のぞみの胸をゆすって見せた。

「あ〜あ、私もこのくらい胸があったらなあ」
「何言ってるんだよ。勝手にのぞみちゃんの身体で遊ぶなよ」
「へへっ。でもお兄ちゃんも興味あるでしょ、のぞみのか・ら・だ!」

めぐみは、のぞみのスカートを捲り上げ、セクシーなポーズをとりながら裕介にウィンクした。

「こらっ、いいかげんにしろよ」
「へへっ。ごめんごめん。じゃあ、めぐみの身体を返してくるね」
「ああ。ところで、お前の身体はどうなってるんだ?」
「うん。気分が悪いって言って保健室のベッドに寝たままにしてるんだ。だからまた学校まで行かないと」
「そっか」
「うん。じゃあね」

めぐみはそう言うと、のぞみの身体を返しに行った。
お兄さん思いというか、おせっかいというか。
そんな事なら始めから教えてくれていたら、あんなに悩まなくて済んだのに。

この1ヶ月を振り返りながら、裕介はそう思った。
しかし、めぐみのおかげで、くるみとはっきり付き合うって言えたんだから。
それは感謝しないと!

いい妹をもったもんだ。
裕介はそう思い、窓の外を眺めたのだった!?



どっちを選ぶの?……おわり