数年前にある方に差し上げた作品を修正しながら掲載します。
ネット上に掲載するのは、おそらく初めてかと?
ホワイトデーネタなので随分季節がずれているのはご愛嬌ということでw





「はぁ。とうとう来てしまった……」

朝から憂鬱な表情でため息をついているのは、都立高校3年生の裕介。
どうして冴えない顔をしているのか?
それは今日がホワイトデーだから。
では何故ホワイトデーでため息をついているのか。
それは――。
どっちを選ぶの?






月日を遡ること事1ヶ月。
二月十四日のバレンタインデー。

裕介はいつもと変わらず家を出た。
電車を乗りついで三十分、坂道を登ったところに彼の高校がある。
結構キツイ坂が百メートルほど続いていおり、体力に自信がない裕介にとってはつらい坂だった。いつも登りついた時には動悸、息切れがする。
そんな裕介は今日も変わらず、息を切らせながら坂道を登り終えた。

「はぁ、はぁ。毎日登ってるのに全然体力つかないなあ」

白い息を吐きながら正門をくぐる。

「ん?」

普段は感じない違和感に気付いた裕介。
何気に誰かの視線を感じる。
あまり他人の目は気にしない裕介だが、今日はバレンタインデーなのでモテないなりにも多少は気になっていた。
そっと辺りを見回すと、斜め前の方に女子生徒が立っていた。
彼女はずっと裕介を見ている。

「…………」

女性慣れしていない裕介は、一秒と見ないうちに目線を逸らせた。
しかし、彼女はずっと視線を送っている。

「…………」

何も見なかったかのように校舎に歩き出す裕介。
その姿を見て、女子生徒は裕介の方に歩いてきた。
だんだん距離が近づいてくる。
裕介は視界に入っている彼女を意識し、内心ドキドキしながら校舎に向かって歩いていた。
しかし、その行く手を彼女が塞いだ。
目の前に立ちはだかった女子生徒に、足を止めた。

「な、なに?」

恥ずかしいけど、彼女と視線を合わす。

「あ、あの……ゆ、裕介さん。こ、これ、受け取ってください」

彼女は後ろに回していた手を裕介の前に出した。
その手には、かわいらしくラッピングされた小さな箱がある。

「ぼ、僕に?」

女子生徒は恥ずかしそうに頭をコクンとうなずいた。

「あ、あの……ダメですか?」

目をうるうるさせながら裕介を見つめている。

「あ、ありがとう」

ボーっとして何も考えられなくなっていた裕介は、差し出された小さな箱を両手で受け取った。 彼女は裕介の手に渡った箱を見て、うれしそうな表情をした。

「や、やった!渡しちゃった」

彼女は笑顔でそう言うと、元気に校舎へ走っていった。
その場に立ち尽くしたまま、走り去る彼女の後姿を見つめる裕介。
彼女の姿が見えなくなった後、我に返った裕介は、手に持っている箱を見た。

裕介:「これ……チョコレート?」

箱を見たあと、不意に周りを見渡す。
そのとき、初めて自分に向けられている視線に気がついた。
ある男子生徒はニヤニヤしているし、女子生徒達はこっちを見てコソコソ小声で話をしている。

「あ、あの……こ、これは……」

裕介は言い訳をするようにおろおろし、誰と話すわけでもなく独り言を言いながら、急いで箱をカバンに詰め込んだ。
そして、みんなの視線から逃げるように校舎に走っていった。