誰も気づかないうちに、テーブルの上にあるおかずやご飯が減ってゆく。

(里香のお母さん、あいつの事、えらく気に入っているようだな)
「…………」

出来るだけ道夫を刺激しないようにと思っているのだが、母親は嬉しそうに仁志のことばかり話題に上げた。
父親もアルコールのせいか、娘の彼氏の事を話す母親に対して、半分呆れ顔で聞いている。

(お母さんに言ってやったら?あいつ、セックス上手なんだってさ)

髪の毛の中に隠れている口から、そんな言葉が囁かれる。
もちろん里香は無視していた。
すると……。

「っ……」

声を押し殺すのが精一杯だった。
いきなり胸に人の手の感触が伝わってきたのだ。
まるで、男性の大きな手に包まれているような感じ。

茶碗と箸を持つ手に力が入る。
脇をギュッと閉めたところで無意味だった。

道夫の手がスウェットの中、そしてブラジャーの生地を押しのけて、直接里香の乳房に宛がわれているのだ。
幸いにも、ブラジャーのカップがスウェットに浮かび上がる胸の曲線を保っている。
もしブラジャーをしていなかったら、道夫の手の形が生地の上に浮かび上がるところだ。
ただ、手の厚みだけ胸が大きくなったように見えている。

(温かいな。初めて触る里香の胸は。こんなに柔らかかったんだ)

ゆっくりと胸を揉み始めた道夫。

「や、やだ……」
「ん?」

母親が里香を見た。

「えっ……う、ううん。別に……」
「そろそろ別の話をしてくれよ。美佐代が仁志君を気に入っていることは分かったから。なあ里香」
「そ、そうだね……」

里香は茶碗と箸を持つ手で胸元を隠しながら返事をした。
両親の前で胸を揉まれているなんて……。
こんな姿、見せられるわけがなかった。
平静を装って夕食を食べているが、内心は心臓が爆発しそうなくらい鼓動が激しく高鳴っている。

「んっ……ふっ」

乳首がつままれた。
じっと見ていると、スウェットの生地が不自然に動いているのが分かる。
まだ両親はそれに気づいていないが、里香はこの異様な状況がばれるのは時間の問題だと思ったようだ。

「ご、ご馳走様」
「えっ!まだ全部食べてないわよ」
「うん。ちょっと今日はお腹の調子が……悪くて」
「大丈夫か?」
「……大丈……夫。ちょっと二階で……休んでる……ぅっ」

流しに自分が食べた食器を置いた里香は、胸を隠すようにしながらキッチンを後にした。

「大丈夫か?里香は」
「さあ。でも、辛かったら薬でも飲みに来るでしょ」
「そうだな」

何も知らない両親は、夕食を続けた。