同人誌用に書いていたファイルからテキストを抜き出し、ブログ用に編集しているのですが結構長くなるので少し分けて掲載します。

出来ることならばもう1つブラウザを開いて、ワンピースのキャラクター達の画像を並べておくことをお勧めします。
文章にはキャラの雰囲気が出ていませんから(悲




「う〜ん……気持ちいいわね、ビビ」

青い空に穏やかな波。
ゴーイングメリー号、操舵室の前にある踊り場では、ナミとビビが青い海の彼方を眺めていた。

「本当ねナミさん。雲ひとつ無い良い天気……」

ナミの問いかけに答えたビビは、両手を空高く伸ばして精一杯の背伸びをした。
爽やかな風が後ろに束ねている水色の長い髪を、背中にゆらゆらと泳がせている。

「それにしても……まったくアイツらときたら」

ナミは足元で甲板(かんぱん)を走り回っているルフィとチョッパーを眺めると、オレンジ色の短い髪を掻き分けながらポリポリと頭をかいた。
あの元気はどこからくるのか不思議でならないナミは、呆れ顔でビビと顔を見合わせていた。

「コラ待てチョッパ〜ッ!」
「へへ〜んだっ!捕まえられるもんなら捕まえて見ろ〜」
「何だとぉ〜っ!その肉よこせぇ〜っ」

ルフィは楽しそうにチョッパー(というか、チョッパーの持っている肉と言ったほうが正しい)を追いかけているが、チョッパーは少しバテぎみ。
迫りくるルフィを横目で見ながら走っているチョッパーは、甲板に並べてある樽の影からニョキッと出ていた二本の短い足に気付かなかったようだ。

「うわっ!」

その短い足に躓いたチョッパー。蹄(ひずめ)のような手に持っていた肉が宙を舞う。そして、放物線を描きながら甲板にダイブしたチョッパーは、青い鼻をしたたかに擦りつけながら滑るように転んでしまった。

「ん〜……むにゅむにゅ」

眠たそうな声。長い鼻を啜りながらムニャムニャと寝言を言っているのは……ウソップだ。
ウソップが樽に隠れて寝ていたのだ。

「うぎゃぁ〜!痛ってぇ〜っ」

青い鼻を真っ赤に腫れあがらせたチョッパーが、甲板の上を目に涙を貯めながら転がり回っている。そこへ走ってきたルフィが、「何やってんだぁ、おめえら?モグモグ」と声をかけた。もちろん、チョッパーの手から離れた肉を食べながら。

「こんなところでウソップが寝てたんだよ、えいっ!」

チョッパーが両手で鼻を抑えながら、ウソップの足をガツンと蹴った。
「イテテテテ……」今度は蹴った足を痛そうに擦っている。

「ん〜……早く逃げねば……むにゅむにゅ」

何の夢を見ているのだろうか?
ウソップはモゴモゴと寝言を言うだけで、全く起きようとはしない。それを見ていたルフィは、「ウソップなんかほっとけよ、それより腹減ったなぁ。お〜いサンジ、何か食べ物無い?」と、大声で両手を振り、船首でタバコを吸いながら遠い海の彼方を見ているサンジに話し掛けた。

「ふぅ〜……んなもんあるわけねぇだろ。腹が減ったんなら魚でも釣って食材を提供しろよ」

煙で白い輪を作りながら、つれない返事を返した。

「え〜っ、ヤダヤダァ。俺は今、食べたいんだぁ〜。腹減ったぞ〜っ!死ぬ〜っ!」

ルフィは甲板に寝転ぶと、両手両足をジタバタさせながら怒った。チョッパーもルフィの真似をしながらジタバタ足を動かしている。

「バカねぇ。いつまで経っても成長しないんだから」

そう言いながらルフィ達を見ていたナミだが、その眉が一瞬ピクンと動いた。
風向きと潮の流れが微妙に変わっている。
それを肌で感じて見逃さなかったナミ。さすがは航海士だ。

「ねえ、みんなっ、早く帆を畳んでっ!もうすぐ嵐が来るわっ!危ないからビビは船の中に入っていて」

ナミが緊張した趣(おもむき)でルフィ達に話した。

「OK!任せとけって、ナミさんっ」

ビビが「うん」と肯いて船内に避難すると、サンジとゾロが軽やかにジャンプしてマストに飛び移り、帆を畳み始めた。
みるみるうちに雲行きが怪しくなると、風が強くなり波も荒くなる。

「おいっ!お前らも手伝えよっ!」

雨がポタポタと甲板に落ち始め、次第に強くなる潮風を受けながらゾロが大声で叫ぶと、駄々をこねていたルフィとチョッパーも嫌々ながらも手伝い始めた。
船は波に煽(あお)られてかなり揺れ、甲板にも冷たい水しぶきが降りそそぐ。
――が、まだ起きないウソップは、ムニュムニュ言いながら甲板の上をゴロゴロと転がっていた。よっぽど眠たかったのだろうか?

「ウソップッ!あんたいつまで寝てるのよっ。手伝わないなら邪魔だから中に入ってなさいよ。ほんっとに役に立たないんだから!」

ナミの怒鳴り声にやっと目を覚ましかけたウソップ。

「ん〜……な、なんだとぉ……今、俺の事を馬鹿にしたのかぁ!?」

と言って、身体を起こしかけた時――。


「おらっ、邪魔なんだよ、お前はとっとと船の中にすっこんでろっ!」

見かねたゾロがウソップに近づき、ヒョイと首根っこを掴んで船内へと続くドアめがけ、勢いよく放り投げたのだ。

「う、うわわわわぁ〜っ!」




ドシンッ!




ウソップの体当たりによって強制的にドアが開く。そしてウソップを船内に飲み込んだドアは、また勢いよく閉まった。

「ったく……」

ナミは手すりをしっかり持って、嵐の中、ルフィたちの仕事ぶりを見つめていた―― 。







どのくらい経ったのだろうか?

遠くの海に少しずつ薄日が差し始めると、風も収まり激しくうねっていた波も落ち着き始めた。

「もうすぐ嵐を抜けるわ」

ナミが明るくなり始めた空を見ながらつぶやいた。みんなビショビショになりながらも、嵐を抜けてホッとしている。

「いや〜っ、すんごい嵐だったなぁ」

ルフィが麦わら帽子に手を当てながらチョッパーに話し掛けると、チョッパーはブルブルと身体を震わせて水しぶきを撒き散らせた。
青い空が戻り、再び穏やかな波になる。

少しして船内に避難していたビビが出てくると、「みんなありがとう、ごくろうさま」と言葉をかけた。

「いえいえ、ビビちゃんのためならお安い御用です」

サンジがツカツカと操舵室の踊り場に近づいてくると、ビビの右手を優しく握り、手の甲にチュッとキスをすると……



ガツンッ!



すかさずナミのゲンコツがサンジの頭めがけて振り下ろされた。
サンジが頭を抱えてうずくまっている。
それを横目で見ていたビビは、「あれ、そう言えばウソップさんは?」と周りを見た。

「ああ、アイツなら下の部屋で寝てるんじゃない。全然手伝わないんだから。しばらくほっときゃいいのよ」
「でも・・・」

そのナミの冷たい言葉に、ビビは少し顔色を曇らせた――。