「俺達って、本当に無責任だよな」
「今更何言ってんだよ。憑依している時点ですでに無責任だろ」
「まあ……そうだけど。志郎って憑依する事になると冷静って言うかしっかりしてるって言うか……」
「……そうかな」

幽体となった二人は、校舎の屋上から少し高いところにフワフワと漂っていた。
遠くに見える太陽が少しだけ紅くなり始めている。

「なあ志郎、これからどうする?」
「どうしたい?」
「有紗が帰ってくるまで、もう少しだけ時間があるんだけどな」
「かと言って、楽しんでいるほどの時間はない?」
「微妙なところだな。有紗が帰ってきて、魂の抜け出た俺の姿を見たらさぞ驚くだろうから」
「だろうな。俺も人の事は言えないか」
「夕食を食べて来いって言っておけばよかったなぁ」
「まあ、今日はしっかり楽しめたことだし、この辺で十分じゃないか?」
「そうだな……」

博和は少し物足りなさそうな表情だった。

「戻るか」
「ああ。でもさ、志郎。次はどうする?」
「それは戻りながら考えようぜ」
「……そうするか」
「まだ一時間くらいはあるだろ。考える時間としては十分だ」
「ああ」

志郎の幽体の後を付いてゆく博和は、頭の中で次の機会がいつになるか考えていた――。




「さて、さっきの続きだけど、どうしたい?」
「そうだな。飛びながら色々考えたんだけど」

志郎はグラスに入ったオレンジジュースをストローで掻き回した。
それを見ている博和は少し落ち着かない表情。

「どうしたんだよ。ソワソワして」
「だ、だってさ。い、いいのか?」
「俺が目の前にいるんだから。それに今日の朝、すでに憑依しただろ」
「そりゃそうだけど……。人前で裕香ちゃんの身体に憑依しているのはちょっと……」

志郎の目の前には、妹の裕香が座っていた。
そして、博和の目の前には裕香の友達である、河東早苗の姿があった。
お互いの家の近くで話そうと思っていたのだが、眼下に裕香と早苗の姿を見つけたのだ。
折角だから、幽体で話すよりも裕香たちの身体を使って話すほうがいい。
そう思った志郎が、博和を裕香の身体に憑依させ、自分は友達の早苗の身体に憑依したのだった。

「次の休みがいつ取れるか……だよな」
「そうだな。でも、出来るだけ早く取りたい」
「今度はどんな女性に憑依したい?」

早苗が身を乗り出すようにして話しかけてくる。
テーブルの上に、長袖Tシャツに包まれている自慢げな胸を乗せて。

「う〜ん。今度は俺も女子高生じゃなくて大人の女性に憑依したいな」

裕香はテーブルの上で指を絡めながら答えた。

ここは駅から少し離れたところにある喫茶店。
周りのテーブルには客が数人座っている。
二人の会話を気に止める人はいなかったのだが……。

「そうか。大人の女性ねぇ……」
「今日は指マンだけだったからさ。今度は男のアレを入れてみたいんだ」
「俺は手首まで突っ込まれたから十分満足したけどさ」
「あれはほんとに興奮したよな。裕香ちゃんの手なのに、まだあの感覚が残っているような気がするよ」
「幽体が感覚を覚えているのかもしれないな」

さすがにこれだけ濃い話をすると、聞き耳を立てる客もいる。
しかし、二人は特に気にすることもなく会話を進めた。

「でもさ、それなら俺が女性に憑依する必要がなくなるよな」
「そんな事ないさ。適当な男を捕まえて三人でプレイすればいいだけなんだから」
「まあ、そうだけどさ。知らない男にぶち込まれるってのもなあ」
「志郎はそういうの、気にするのか?」
「う〜ん……。嫌じゃないけどさ」
「俺は気にしない。例えばあそこに座っている男にぶち込まれても構わないし」
「さすが博和だな。俺はやっぱり……」

ふと隣のテーブルに座っている女性二人を見ると、どちらの女性も赤面しているようだった。
どうやら志郎たちの会話を聞いて、恥ずかしくなったようだ。

「ゴホン!まあ、今度二人とも休めるチャンスがあるまでに考えればいいか」
「そうだな。じっくりと考えたほうが、より憑依を楽しめそうだし」
「色々なタイプの女性がいるしさ。俺も考えておくよ」
「ああ。さて、どうする?そろそろ抜け出るか?」
「少しこの身体で歩いてからにしようぜ」
「……了解!」

裕香が笑いながら早苗に敬礼した。
そして二人は喫茶店を出ると、沈み始めた紅い太陽を背に歩いた。
裕香と早苗の身体のまま――。



あとがき
これで二人で行こう!は一段落。
二人が女性に憑依してエッチするという目的を達成できて良かった良かった!
まあ、レズセックスとはいきませんでしたが(^^;
また気力と時間が出来たら新たな展開を書きたいと思います。
最後まで読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。
Tiraでした。