「ねえ、昨日のドラマ見た?」
「見た見た。言ってた通りの展開だったよね」
「ってか、白々しくて面白くなかったし」
「まあね。多分来週は別れるんだよ。で、三河とくっつくんだよ」
「その様子を田代が見ていて……」
「そうそう。よくある話だよね」

四人の後輩達は、昨日の夜に放送していたドラマの話でキャッキャと盛り上がっている。
両端の二人は、身を乗り出して会話をしていた。
走る列車の中、その空間だけが浮いているように思える。
一方、二人の先輩達は大人しいものだ。
たまにボソボソと会話をしている程度。
ただ、後輩達のテンションの高い会話は気になる様子。
少し間が開いた後、つられて同じ内容の話を始めた。

「見た?」
「うん、見たよ」
「私、結構面白かったと思うんだけど」
「そうね。私も面白かったよ。あの子達が言うような展開になると思う?」
「さあ。でも、最終的には田代とくっついて終わりだと思う」
「うん、私も……っていうか、そうなって欲しいな」
「亜季は田代が大好きだもんね」
「友里も好きって言ってたじゃない」
「まあね、でも亜季ほどじゃないよ。さすがにファンクラブまで入らないもん」
「来月の十二日、コンサートに行くんだ」
「そうなの?」
「ファンクラブに入ってるから、結構前の席が取れて」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「そう、今日その事で友里に話そうと思ってたんだ。一緒に行かない?」
「コンサート?」
「うん」
「他には誰か行くの?」
「チケットは四枚あるから。二人で行ってもいいけど、後の二枚を誰かに売らなきゃ。一枚五千五百円だったから結構きついんだ。バイト代貯めてたから良かったけど」
「五千五百円かぁ」
「どう?」
「どうしよっかな。今月はあまりバイト代が入らないから」
「チケット代は後でもいいよ」
「そうっ!じゃあ行くよ」
「うん」
「残りの二枚は?私、加奈子と玲菜なら一緒でもいいけど」
「ううん、やっぱりネットオークションで売るよ。前の席だから売れると思うし、もしかしたら買った値段よりも高く売れるかも」
「そうだね。お金が浮いたら、私のチケットも安くしてよ」
「え〜っ」
「うそうそ、いいよ。ちゃんと払うから」
「じゃあ、高く売れたら帰りのご飯くらいおごってあげるよ」
「ラッキー」


「友原先輩、何を話してるんですか?」

亜季と友里の会話が落ち着いた頃、後輩の一人が話しかけてきた。
友原先輩と呼ばれたのは、亜季のようだ。

「ああ、ちょっとね」
「もしかして、田代のグループのコンサートの事です?」
「う、うん。そうだけど」
「チケット、取れたんですか?」
「ま、まあね。ファンクラブに入ってるから」
「え〜!そうなんですか。いいなぁ……私もファンクラブに入っているんですよ。でもチケット取れなかったんです」
「そうなんだ」
「はい。ねっ、博美」
「うん。二人で頑張ったんだけど取れなかったんですよ」

その言葉に、亜季と友里は顔を見合わせた。

「どうする?」
「う〜ん……」
「別に一緒に行くわけじゃないし」
「そうだけど……」
「可愛い後輩だしね」
「まあ……そうね」

亜季は後輩に向って、「じゃあ二枚余ってるから売ってあげるよ」と笑顔を返した。

「えっ?」
「私、四枚買ったんだけど友里と二人で行くから二枚余ってるんだ。だからその二枚を売ってあげる」
「ほんとですか!?」
「うん、いいよ」
「やった!ねえっ、博美っ」
「うんっ。ありがとうございます」
「いいよ別に」
「練習、張り切って頑張りますから」
「怪我しない程度にね」
「はいっ」

後輩二人はかなり嬉しそうだ。他の二人はそんなに興味がないのか、「私も欲しい」と言って来ない。
残りが二枚だと聞いて諦めたのかもしれないが。

(どうだ?)
(そうだなぁ……)
(友原亜季って名前なんだな。志郎が乗り移ろうとしている女の子は)
(ああ、結構後輩思いっていうか、優しい女の子だ)
(友里って子もそんなに変わらないよな)
(そうだな。まあ、どっちもどっちって感じか)
(どうする?そろそろ乗り移るか?)
(いや、俺はもう少し様子を見るよ。何なら博和が先に乗り移っていてもいいぜ)
(さっき言っただろ。俺は志郎に付いていくって。お前が乗り移らないなら俺も乗り移らない。だって、今一人で乗り移ったとしてもどんな会話をすればいいのか分からないし)
(俺は学校についてから乗り移ろうと思ってるんだ。部員の構成や顧問の先生も確認できるだろ)
(なるほどな。じゃあ俺もそうするよ)

別に女子生徒達の身体を楽しむだけならそこまでこだわらなくても良いだろうに。
二人はこの後、ファーストフードで食事を済ませた女子高生達と共に学校へ移動した。
正門にあった「寺野女子高等学校」という学校の表札を見てニヤけながら。