ふわふわと――というよりは非常に活きの良い幽体が二つ、駅前の空中に現れた。
その欲望というパワーをどうやって発散すればよいのだろう。
兎に角、速く行動に出たい。
好みの女性に乗り移りたい。
そう思っているのは、博和だった。

(なあ志郎。時間が勿体無いから早く乗り移ろうぜ)
(そうは言っても、どういう女性に乗り移るんだよ)
(美人なら誰でもいいんだ。ほら、例えばあの女性なんて俺にはもってこいなんだけど)

そう言った博和の視線の先には、これから友達と遊びに行くような雰囲気をかもし出した女性がいた。
歳は二十代前半だろうか?
もしかしたら大学生かもしれない。
茶色いセミロングに白いブラウス。髪よりも薄い茶色のパンツを穿いていた。

(なるほどな。彼女も捨てがたい)
(捨てがたいとか言っている場合じゃなくてさ)
(分かってるって。でも俺としてはもっと違う楽しみ方がしたいんだけど)
(違う楽しみ方?)
(お前ってさ、単に女性に乗り移ってその快感を楽しみたいだけだろ?)
(それ以外に何があるのさ?)
(やっぱりシチュエーションって大事だと思うんだよ。それによって随分と違うからさ)
(……そうかな)
(そうだって。例えば姉妹とか、学校の先生と女子生徒。友達同士や先輩と後輩の仲)
(……そこまで考えるのか?さすが憑依の先輩だな)
(だってさ、面白くないだろ?そういうシチュエーションがなければ。折角二人とも憑依出来るようになったんだから)
(そう言われればそうかもしれないな。女性の快感を得るだけなら、俺だけでも十分なんだから)
(そういうわけで、それなりの女性二人を探すことにしないか?)
(よし、分かったよ。じゃあ駅前というよりは、別の場所で探したほうがよさそうだな)
(まあな)
(志郎。お前って、もしかしてもう頭の中では決まってるんじゃないか?何処に行くか)
(候補はある)
(何処だよ)
(一つは学校かな。きっと休みでも部活しているだろうから)
(女子高生か)
(先輩と後輩、同級生。先生と生徒。或いは先生同士。色々なパターンが楽しめそうだろ)
(さすが志郎だな。エロさはピカ一だ)
(あとは……身近な女性に乗り移ること)
(身近な女性……か)
(知っている女性の方がそそられると思わないか?)
(そうだな。会社や友人関係の女性に乗り移るのも悪くない。普段は知らない事が分かるかもしれないし)
(だろ!)
(すげえよ志郎。お前ってほんとにエロい奴だよな!)
(それって褒め言葉なんだろ?)
(当たり前じゃないか。ならどうする?)
(あとは博和が考えればいいさ。俺は博和に付いて行くから)
(そうだなぁ……そう言われると迷うよなぁ……)

随分高いところに浮いていた二人の幽体だが、こうやって話し込んでいるうちに徐々に降下し、駅前の噴水あたりを漂っていた。
その周りにいる人たちは全く気づいていない様子。
博和は行き交う人たちを見ながら、しばし考えていた。
そして、一つの答えを出したようだ。

(よし、じゃあ行こうか)
(何処に?)
(あの女の子たちの中に)
(……なるほど。いいんじゃないか?)

志郎は納得したようだ。
二人の視線の先には、駅の自動改札口を入ってゆく女性達の姿があった。
紺色のジャージに身を包んだ女子高生達。
皆、肩から黒いスポーツバッグを担いでいる。
もう十時を過ぎているから朝練というわけではなさそうだ。
思うに、きっと昼から部活をするために早く集まり、どこかで昼食を取ってから学校へ行くのだろう。

(うおお!燃えてきたぞっ。今日は女子高生ライフを楽しむんだ〜!)
(女子高生ライフっていうか、女子高生の身体を楽しむんだ〜の間違いだと思うけどな)
(どっちでもいいんだよ。じゃ、早速行こうぜ)
(ああ)

二人はス〜っと幽体を移動させると、自動改札口をくぐったジャージ姿の女子高生達に近づいた。
そして、アナウンスが聞こえるホームから電車に乗り込む彼女達の後をニヤニヤしながら付いていったのだ。