「ねえ。ところでさっきからそこに寝ている人、誰なの?」
「あ、ああ。俺の友人だけど」
「そう。名前は?」
「博和」
「ふ〜ん。で、どうして寝ているの?」
「それは俺が聞きたいよ。わざわざ呼び出しておいて……」
「そうなんだ。きっと何か話があったんじゃない?」
「だから来てやったのに」

裕紀はウェイトレスが持ってきたアイスコーヒーにミルクとシロップを入れた後、白いストローで半分ほど飲んだ。
眠る博和をじっと見つめる彼女を見て、「いいかげんに起きろよな」と、つぶやいた志郎。しかし、

「起きないわよ、彼」

またストローで一口飲んだ裕紀が返事をした。

「どうしてだよ?」
「え?だって魂が入っていないから」

平気な顔して突拍子も無い事を言い出した。

「魂が入っていない?それって幽体離脱しているって事?」

そう言う話ならお手の物だ。
幽体離脱は志郎の十八番なのだから。

「そうね。この様子じゃ、どう考えても幽体離脱してるわ」
「まさか博和が?俺じゃあるまいし」
「え?」
「あ、いや。何でもないけど……博和が幽体離脱しているなんて……」

裕紀にじっと見つめられる、その黒い瞳の奥に吸い込まれそうだった。

「信じられない?」
「信じられないって……あんたは……小谷さんは信じられるのか?それとも、もしかして霊媒師とか?」
「霊媒師じゃないけど信じられるわ。だって志郎さんもできるんでしょ」
「えっ!?」
「幽体離脱して私みたいな女性に乗り移っては、その快感を楽しんでるんでしょ」
「な、何を急に……」
「ほら、こんな風にして……」

真顔で話していた裕紀はニヤッと笑うと、椅子に座ったままタイトスカートをせり上げ、細い足を蟹股に開いてパンストの上からのっぺりとした股間を触り始めた。

「ここって男と全然違うわよね。柔らかくて弾力があって……パンストの上からなぞっただけでもゾクゾクするわ。ねえ志郎」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。一体何を言って……」
「まだ分からないの?私のこと」
「分からないって……え?」

裕紀がニヤニヤ笑いながら、テーブルに伏せている博和を顎で数回指した。

「ま、まさか……」
「嬉しくて仕方が無いって言ってたでしょ。あれってこの事なのよ」
「も、もしかして……お前、ひ……博和かっ!」

思わずそう叫んでしまった志郎。
まさか博和が幽体離脱してこの女性に乗り移っているなんて――。

「やっと分かったのね。志郎って鈍感なんだから」
「そんな事言ったって、まさかお前が幽体離脱出来るなんて思わないから……ほ、本当に博和なのか?」
「本当よ。信じないの?それなら俺のしゃべり方で話してやろうか?志郎」

タイトスカートを元に戻した裕紀が、急に男の口調に変化する。
その変貌に驚いた志郎は、激しく高鳴る鼓動で裕紀の話を聞いた――。