過去作品を掲載します。
挿絵はあさぎりさんに描いていただいたものです。
挿絵はあさぎりさんに描いていただいたものです。
「仁志田はどうした?」
「今日も休んでます」
「何だアイツは。もう3日も学校に来ていないじゃないか」
(そりゃそうよね、あんな体質になっちゃったんだし。それに全く来てないんじゃなくて……)
先生が出席を取っている中、智恵は一人ぼやいていた。
仁志田というのは智恵と同じクラスメートの男の子なのだが、3日前から身体に異変が起きてそれ以降学校に来ていないらしい。いや、全く来ていない訳ではないのだが。
窓際の席でボーっと外を眺めていた智恵。
(今日は一体何処に行っているのかしら)
友達よりも少しだけ親しい仲の純一と智恵。
だから智恵は純一の事を心配しているのだ。
……心配しているというかなんと言うか……
――ちょうど3日前の事。
夜、家の2階にある自分の部屋で勉強をしていた智恵に、携帯電話が掛かってきた。
液晶画面にはクラスメイトの科藤奈々子(かとうななこ)という文字が映っていた。
「あれ、珍しいな。奈々子から電話をかけてくるなんて」
一応、クラスメイトという事で社交辞令のように番号を交換していたのだが、奈々子とはあまり携帯を掛け合う事はない。
そう思いながら携帯を手にとった智恵。
「もしもし、奈々子?」
「…………」
携帯の向こうからは声が聞こえない。
「もしもし?」
「……藍沢」
「え……うん。そ、そうだけど……」
(藍沢って……いつもなら智恵って下の名前で呼ぶのに)
「私、加藤奈々子」
「そ、それがどうしたの?」
「うん。加藤奈々子なの……ふふ。どうみても加藤奈々子なんだ」
「何言ってるの奈々子?ど、どうしたのよ急に」
「ははは。やっぱり加藤奈々子だよなぁ!」
携帯の向こうで奈々子が嬉しそうに笑っている。
一体どうしたんだろう?
そう思っていると、
「ごめんな。いやあ……まさか憑依出来るなんて思ってなかったからさ。試しに藍沢に電話してみたんだ。確かめてみたくてさ。俺が加藤だってことを」
「え?えっ?な、何言ってるの?」
奈々子が訳の分からない事を話している。
珍しく電話をかけてきたと思えば……何が言いたいのだろうか。
「藍沢には訳分かんないだろうけどさ、実は俺、仁志田なんだ。仁志田純一」
「え?仁志田純一?……って、純一?」
「そう。今、科藤の身体に憑依しているところ」
「ひょ、憑依って……な、何よそれ……」
「何だか分からないけどさ。俺、急に幽体離脱出来るようになって。それで試しに俺んちに近い科藤の家に幽体になって行ったんだ。それで何気なく科藤の身体に入り込んだらさ、何と俺が科藤の身体を動かせるようになったんだよ」
「そ、そんな事……信じられない。ねえ奈々子、珍しく電話をかけてきて馬鹿な冗談は言わないでよ」
「冗談じゃないんだって。それなら明日、俺が科藤の身体に憑依したまま学校に行ってやるよ。それなら信じるだろ」
「……そうね、それなら信じるわ」
「よし、決まりだな。へへ、俺、これから科藤の身体で楽しむからさ。いやあ、今から楽しみだよ。じゃあな」
「じゃあね……」
そう言うと、智恵は携帯を切った。
「何よ、変な電話かけてきて。馬鹿馬鹿しい」
もちろん智恵は信じていない。
あまり親しくない奈々枝が、どうして急に変な電話をかけてきたのかは分からない。
でも純一の名前を出してきたという事は、もしかしたら奈々枝は純一の事が好きなんだろうか。
それで仲のいい智恵に変な電話をかけてきた。
そうかもしれない。
そんなことを考えて、次の日、学校に行った――
――教室に入って部屋の中を見渡してみると、まだ奈々子の姿は無かった。
いつも智恵よりも早く来ているのに。
と思ったら、後ろから「おはよう」という声が聞こえた。
振り向くと、そこには奈々子の姿があった。
「お、おはよう……」
智恵は奈々子を見て、首を傾げながら挨拶をした。
いつもは綺麗に髪をくくっているのに、今日はボサボサのまま。
まるで寝起きという感じだ。
それに長袖のセーラー服も何やらシワが寄っていて汚らしい。
「ど、どうしたの?奈々子」
「ん?何が」
「だ、だって今日は何だか……」
と智恵が言葉を切ると、奈々子はニヤッと笑いながら
そっと智恵の耳元でささやいた。
「昨日さ、ちょっと科藤の身体で遊びすぎちゃって寝坊したんだよ。それで時間が無かったからそのまま出てきたわけ。女の身体って最高だよな。藍沢も毎日楽しい事、してるのか?」
「なっ……」
信じられない事をささやかれた智恵は、
思わず大きな声を出してしまった。
何人かの生徒が二人に視線を送っている。
「ちょ、ちょっと来てっ!」
智恵は今来たばかりの奈々子の手を引っ張って
人通りの無い廊下に連れて行った。
「ね、ねえ奈々子。本当なの?本当に……」
「だから昨日の夜も言っただろ。俺は仁志田純一だって。これで信じてくれた?」
「そ、そんな……そんな事が……」
「出来たんだよな。ほんと俺もビックリしたよ。そして最高に良かった、科藤の身体は。まだ股がヒリヒリして痛いよ」
奈々枝はそう言うと、スカートの上から股を擦った。
「や、止めなさいよ。はしたないっ!一体どうなってるのよ」
「だから俺が科藤に憑依して……」
「奈々子はどうなってるの?」
「ずっと頭の隅で何か声が聞こえてる。もうやめてよって。俺が出て行ったら元に戻るんじゃないかな?」
「そんな無責任な……とりあえずその髪を何とかしなさいよ。奈々子が可哀想じゃないっ」
「そっかな。別に何にも気にならないけど」
「そりゃアンタは気にならないでしょうけどねぇ」
智恵は制服のポケットから小さなブラシを取り出すと、奈々子の髪を整えてやった。
「悪りぃな、藍沢」
「悪りぃなじゃないでしょ。早く奈々子の身体から出て行きなさいよ」
「だってもっと楽しみたいじゃん」
「ダメっ!」
「ふ〜ん、そんな事言うなら……」
奈々子はニヤリと笑うと、急にガクンと崩れ落ちてしまった。
「あ、な……奈々子」
慌てて奈々子を起こそうとした智恵だったが――
(あ、あれ……か、身体が動かない……)
しゃがみ込もうとした智恵だったが、何故か自分の意思に反して立ち上がってしまう。
「なあ藍沢。俺、しばらく学校休むわ。こんな楽しい事が出来るんだ。学校なんて行ってられないよ」
(か、勝手に口がしゃべってる……)
「しばらくしたらまた学校に来るからさ。それまで寂しいだろうけど我慢してくれよな」
(ちょ、ちょっと……何言わせるのよっ)
「じゃあな」
智恵はそう言うと、体の力が抜けたようにへなへなと廊下に座り込んでしまった。
「な、何……い、今のって……私が純一に憑依されてたの?」
そう思うと、何だかぞっとする。
自分の意思では身体が動かなくなり、純一の思うがままに動かされる……
これってかなり卑劣!?
――こんな事が3日前にあったのだ。
きっと今ごろ好みの女性か、もしかしたらアイドルなんかに憑依しているかもしれない。
そんな事を思っていたの智恵だったが――
「あ……」
自分で気づかないうちに、両手が胸に宛がわれていた。
そして、その手は紺色の長袖セーラー服の上から胸を揉み始めたのだ。
(えっ!?身体の自由が利かない…って、またアンタなのぉ〜いい加減にしてよっ!)
「へへっ、いいじゃん。減るモンじゃないだろ?」
(そーゆー問題じゃないでしょ、もぅ〜イヤっ!!)
いつの間に憑依したのだろう?
それすら分からなかった智恵。
自分の手が自分の胸を揉んでいる。
自分の口から勝手に言葉が出てくる。
(も、もうっ!早く私の身体から出てってよ!)
「そんなに慌てるなよ。別に何しようって訳じゃないんだからさ」
純一は智恵の口を使って小声でしゃべると、右手の指でセーラー服の衿元をクイッと手前に引っ張り、
その中を覗きこんだ。
薄暗いその中には、ピンクのブラジャーに包まれた柔らかそうな胸がある。
胸の谷間がとてもセクシーだ。
(ば、ばかっ!何覗いてるのよっ)
「ふ〜ん、今日はピンクのブラジャーをしているのか」
(もうっ!勝手に見ないでよっ!)
「くんくん……」
開いた衿元に鼻を近づけ、セーラー服の中の匂いを嗅ぐ智恵(純一)。
(あっ……こ、この変態っ!)
「いい匂いだなあ。俺、しばらく智恵の身体にいることにするよ」
(な、何勝手な事言ってるのよ。そんなの絶対嫌だからね。早く出てって)
「そんなに怒るなよ」
(怒るわよっ!勝手に胸を揉んだり服の中覗き込んだりしてっ)
「ふ〜ん、そっか。俺は別にいいんだぜ。このままブラジャー、外しちゃおうかな」
(なっ……)
智恵の右手が後ろに回り、制服の背中のあたりを摘んでいる。
すると……
パチンッ!
背中にブラジャーのホックが外れた感触が伝わってきた。
そして、今まで胸を支えていたブラジャーのカップが緩み、胸が少し下に垂れ下がった。
(し、信じられない……ね、ねえ。もうそれ以上は……)
「俺、知ってるんだ。服を着たままブラジャーを取る方法!」
そう言うと、セーラー服を脱ぐように腕を袖の中に入れ、器用にブラジャーの肩紐を抜いた。
もう片方の腕も同じようにすると、両方の肩紐が腕から抜けてしまう。
その後、また袖に腕を通してセーラー服を元通りに着た智恵(純一)。
セーラー服の中には、すでに体から離れてしまったブラジャーが……
(や、やだ……)
「どうしよっかなぁ。このブラジャー」
智恵(純一)はセーラー服の裾から両手を入れて、外れたブラジャーを掴んでいる。
「みんなの前で見せびらかす?」
(ダ、ダメダメッ!絶対嫌だからっ)
「ん?そんな言葉を使っていいのかな?」
(な、何よっ)
「止めてください、だろ」
(ど、どうして私がそんな事を……ちょ、ちょっと……)
智恵の手がゆっくりとセーラー服から出てくる。
もちろんブラジャーを掴んだままで。
その手がゆっくりと机の上に上がろうとした時……
(わ、分かったわよっ。や……止めてください)
「え?何?もう一回言ってよ」
(もうっ!調子に乗るんじゃ……ああ……止めてくださいぃ〜っ!)
「そんな言い方じゃなぁ」
(ひ、酷すぎるっ!……もう純一の事なんか嫌いになっちゃうから……)
「嫌いになるならこのブラジャーを吉田にやるよ。
あいつ、下着コレクションしてるみたいだし。
なんなら今穿いているパンティーも!」
(うぅっ……止めてください。純一さん)
「よしよし、それでよろしい」
智恵(純一)は、ブラジャーを机の引出しの中に隠した。
( ふぅ……ねえ、ほんとに私の中にいるつもりなの?)
「ああ。何だか居心地よくてさ」
(もう……)
智恵に選択する余地は無かった。
こうしてしばらくの間、純一は智恵に憑依していた。
もちろん智恵の体を使って色々な悪戯もしていたようだ――
も〜イヤッ!…おわり
「今日も休んでます」
「何だアイツは。もう3日も学校に来ていないじゃないか」
(そりゃそうよね、あんな体質になっちゃったんだし。それに全く来てないんじゃなくて……)
先生が出席を取っている中、智恵は一人ぼやいていた。
仁志田というのは智恵と同じクラスメートの男の子なのだが、3日前から身体に異変が起きてそれ以降学校に来ていないらしい。いや、全く来ていない訳ではないのだが。
窓際の席でボーっと外を眺めていた智恵。
(今日は一体何処に行っているのかしら)
友達よりも少しだけ親しい仲の純一と智恵。
だから智恵は純一の事を心配しているのだ。
……心配しているというかなんと言うか……
――ちょうど3日前の事。
夜、家の2階にある自分の部屋で勉強をしていた智恵に、携帯電話が掛かってきた。
液晶画面にはクラスメイトの科藤奈々子(かとうななこ)という文字が映っていた。
「あれ、珍しいな。奈々子から電話をかけてくるなんて」
一応、クラスメイトという事で社交辞令のように番号を交換していたのだが、奈々子とはあまり携帯を掛け合う事はない。
そう思いながら携帯を手にとった智恵。
「もしもし、奈々子?」
「…………」
携帯の向こうからは声が聞こえない。
「もしもし?」
「……藍沢」
「え……うん。そ、そうだけど……」
(藍沢って……いつもなら智恵って下の名前で呼ぶのに)
「私、加藤奈々子」
「そ、それがどうしたの?」
「うん。加藤奈々子なの……ふふ。どうみても加藤奈々子なんだ」
「何言ってるの奈々子?ど、どうしたのよ急に」
「ははは。やっぱり加藤奈々子だよなぁ!」
携帯の向こうで奈々子が嬉しそうに笑っている。
一体どうしたんだろう?
そう思っていると、
「ごめんな。いやあ……まさか憑依出来るなんて思ってなかったからさ。試しに藍沢に電話してみたんだ。確かめてみたくてさ。俺が加藤だってことを」
「え?えっ?な、何言ってるの?」
奈々子が訳の分からない事を話している。
珍しく電話をかけてきたと思えば……何が言いたいのだろうか。
「藍沢には訳分かんないだろうけどさ、実は俺、仁志田なんだ。仁志田純一」
「え?仁志田純一?……って、純一?」
「そう。今、科藤の身体に憑依しているところ」
「ひょ、憑依って……な、何よそれ……」
「何だか分からないけどさ。俺、急に幽体離脱出来るようになって。それで試しに俺んちに近い科藤の家に幽体になって行ったんだ。それで何気なく科藤の身体に入り込んだらさ、何と俺が科藤の身体を動かせるようになったんだよ」
「そ、そんな事……信じられない。ねえ奈々子、珍しく電話をかけてきて馬鹿な冗談は言わないでよ」
「冗談じゃないんだって。それなら明日、俺が科藤の身体に憑依したまま学校に行ってやるよ。それなら信じるだろ」
「……そうね、それなら信じるわ」
「よし、決まりだな。へへ、俺、これから科藤の身体で楽しむからさ。いやあ、今から楽しみだよ。じゃあな」
「じゃあね……」
そう言うと、智恵は携帯を切った。
「何よ、変な電話かけてきて。馬鹿馬鹿しい」
もちろん智恵は信じていない。
あまり親しくない奈々枝が、どうして急に変な電話をかけてきたのかは分からない。
でも純一の名前を出してきたという事は、もしかしたら奈々枝は純一の事が好きなんだろうか。
それで仲のいい智恵に変な電話をかけてきた。
そうかもしれない。
そんなことを考えて、次の日、学校に行った――
――教室に入って部屋の中を見渡してみると、まだ奈々子の姿は無かった。
いつも智恵よりも早く来ているのに。
と思ったら、後ろから「おはよう」という声が聞こえた。
振り向くと、そこには奈々子の姿があった。
「お、おはよう……」
智恵は奈々子を見て、首を傾げながら挨拶をした。
いつもは綺麗に髪をくくっているのに、今日はボサボサのまま。
まるで寝起きという感じだ。
それに長袖のセーラー服も何やらシワが寄っていて汚らしい。
「ど、どうしたの?奈々子」
「ん?何が」
「だ、だって今日は何だか……」
と智恵が言葉を切ると、奈々子はニヤッと笑いながら
そっと智恵の耳元でささやいた。
「昨日さ、ちょっと科藤の身体で遊びすぎちゃって寝坊したんだよ。それで時間が無かったからそのまま出てきたわけ。女の身体って最高だよな。藍沢も毎日楽しい事、してるのか?」
「なっ……」
信じられない事をささやかれた智恵は、
思わず大きな声を出してしまった。
何人かの生徒が二人に視線を送っている。
「ちょ、ちょっと来てっ!」
智恵は今来たばかりの奈々子の手を引っ張って
人通りの無い廊下に連れて行った。
「ね、ねえ奈々子。本当なの?本当に……」
「だから昨日の夜も言っただろ。俺は仁志田純一だって。これで信じてくれた?」
「そ、そんな……そんな事が……」
「出来たんだよな。ほんと俺もビックリしたよ。そして最高に良かった、科藤の身体は。まだ股がヒリヒリして痛いよ」
奈々枝はそう言うと、スカートの上から股を擦った。
「や、止めなさいよ。はしたないっ!一体どうなってるのよ」
「だから俺が科藤に憑依して……」
「奈々子はどうなってるの?」
「ずっと頭の隅で何か声が聞こえてる。もうやめてよって。俺が出て行ったら元に戻るんじゃないかな?」
「そんな無責任な……とりあえずその髪を何とかしなさいよ。奈々子が可哀想じゃないっ」
「そっかな。別に何にも気にならないけど」
「そりゃアンタは気にならないでしょうけどねぇ」
智恵は制服のポケットから小さなブラシを取り出すと、奈々子の髪を整えてやった。
「悪りぃな、藍沢」
「悪りぃなじゃないでしょ。早く奈々子の身体から出て行きなさいよ」
「だってもっと楽しみたいじゃん」
「ダメっ!」
「ふ〜ん、そんな事言うなら……」
奈々子はニヤリと笑うと、急にガクンと崩れ落ちてしまった。
「あ、な……奈々子」
慌てて奈々子を起こそうとした智恵だったが――
(あ、あれ……か、身体が動かない……)
しゃがみ込もうとした智恵だったが、何故か自分の意思に反して立ち上がってしまう。
「なあ藍沢。俺、しばらく学校休むわ。こんな楽しい事が出来るんだ。学校なんて行ってられないよ」
(か、勝手に口がしゃべってる……)
「しばらくしたらまた学校に来るからさ。それまで寂しいだろうけど我慢してくれよな」
(ちょ、ちょっと……何言わせるのよっ)
「じゃあな」
智恵はそう言うと、体の力が抜けたようにへなへなと廊下に座り込んでしまった。
「な、何……い、今のって……私が純一に憑依されてたの?」
そう思うと、何だかぞっとする。
自分の意思では身体が動かなくなり、純一の思うがままに動かされる……
これってかなり卑劣!?
――こんな事が3日前にあったのだ。
きっと今ごろ好みの女性か、もしかしたらアイドルなんかに憑依しているかもしれない。
そんな事を思っていたの智恵だったが――
「あ……」
自分で気づかないうちに、両手が胸に宛がわれていた。
そして、その手は紺色の長袖セーラー服の上から胸を揉み始めたのだ。
(えっ!?身体の自由が利かない…って、またアンタなのぉ〜いい加減にしてよっ!)
「へへっ、いいじゃん。減るモンじゃないだろ?」
(そーゆー問題じゃないでしょ、もぅ〜イヤっ!!)
いつの間に憑依したのだろう?
それすら分からなかった智恵。
自分の手が自分の胸を揉んでいる。
自分の口から勝手に言葉が出てくる。
(も、もうっ!早く私の身体から出てってよ!)
「そんなに慌てるなよ。別に何しようって訳じゃないんだからさ」
純一は智恵の口を使って小声でしゃべると、右手の指でセーラー服の衿元をクイッと手前に引っ張り、
その中を覗きこんだ。
薄暗いその中には、ピンクのブラジャーに包まれた柔らかそうな胸がある。
胸の谷間がとてもセクシーだ。
(ば、ばかっ!何覗いてるのよっ)
「ふ〜ん、今日はピンクのブラジャーをしているのか」
(もうっ!勝手に見ないでよっ!)
「くんくん……」
開いた衿元に鼻を近づけ、セーラー服の中の匂いを嗅ぐ智恵(純一)。
(あっ……こ、この変態っ!)
「いい匂いだなあ。俺、しばらく智恵の身体にいることにするよ」
(な、何勝手な事言ってるのよ。そんなの絶対嫌だからね。早く出てって)
「そんなに怒るなよ」
(怒るわよっ!勝手に胸を揉んだり服の中覗き込んだりしてっ)
「ふ〜ん、そっか。俺は別にいいんだぜ。このままブラジャー、外しちゃおうかな」
(なっ……)
智恵の右手が後ろに回り、制服の背中のあたりを摘んでいる。
すると……
パチンッ!
背中にブラジャーのホックが外れた感触が伝わってきた。
そして、今まで胸を支えていたブラジャーのカップが緩み、胸が少し下に垂れ下がった。
(し、信じられない……ね、ねえ。もうそれ以上は……)
「俺、知ってるんだ。服を着たままブラジャーを取る方法!」
そう言うと、セーラー服を脱ぐように腕を袖の中に入れ、器用にブラジャーの肩紐を抜いた。
もう片方の腕も同じようにすると、両方の肩紐が腕から抜けてしまう。
その後、また袖に腕を通してセーラー服を元通りに着た智恵(純一)。
セーラー服の中には、すでに体から離れてしまったブラジャーが……
(や、やだ……)
「どうしよっかなぁ。このブラジャー」
智恵(純一)はセーラー服の裾から両手を入れて、外れたブラジャーを掴んでいる。
「みんなの前で見せびらかす?」
(ダ、ダメダメッ!絶対嫌だからっ)
「ん?そんな言葉を使っていいのかな?」
(な、何よっ)
「止めてください、だろ」
(ど、どうして私がそんな事を……ちょ、ちょっと……)
智恵の手がゆっくりとセーラー服から出てくる。
もちろんブラジャーを掴んだままで。
その手がゆっくりと机の上に上がろうとした時……
(わ、分かったわよっ。や……止めてください)
「え?何?もう一回言ってよ」
(もうっ!調子に乗るんじゃ……ああ……止めてくださいぃ〜っ!)
「そんな言い方じゃなぁ」
(ひ、酷すぎるっ!……もう純一の事なんか嫌いになっちゃうから……)
「嫌いになるならこのブラジャーを吉田にやるよ。
あいつ、下着コレクションしてるみたいだし。
なんなら今穿いているパンティーも!」
(うぅっ……止めてください。純一さん)
「よしよし、それでよろしい」
智恵(純一)は、ブラジャーを机の引出しの中に隠した。
( ふぅ……ねえ、ほんとに私の中にいるつもりなの?)
「ああ。何だか居心地よくてさ」
(もう……)
智恵に選択する余地は無かった。
こうしてしばらくの間、純一は智恵に憑依していた。
もちろん智恵の体を使って色々な悪戯もしていたようだ――
も〜イヤッ!…おわり
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