「行こう!」シリーズとは。
大学生の志郎は、眠ると幽体離脱し他人へ憑依出来るという奇妙は特技の持ち主。
その特技を使って女性に憑依し、男性では味わえない神秘の快感を味わうというストーリーでした。
途中から親友の博和が登場し、志郎が憑依した女性と博和がセックスするという内容になりましたが、
個人的にコスプレ好きということもあって、色々な職業の女性に憑依しています。
最終的には志郎の就職先を探すために憑依するという設定になりました。
最終話の「ソフト会社に行こう!」では、博和と共に無事就職することが出来たところで終わっています。
これから続くお話は、その就職後数年経ったところから始まっています。



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――幽体離脱をして他人に身体に憑依する。
そんな特技を持つ志郎は、これまで色々は女性に憑依し、男性では味わえない神秘の快感を味わってきた。
女子高生や先生、婦警やナース、水着姿のお姉さんや家庭教師etc.
それらの身体を使って悪友――ではなく、親友の博和に美味しい思いをさせてきた志郎だったが――。


「二人で行こう!(その1)」


平日の喫茶店は、駅前といえども夜が更けるにつれて客数が少なくなり、寂しげだ。
壁に並んでいる薄暗い色の付いた窓ガラスが余計にそう感じさせるのかも知れないが、木製の造りは懐かしさを感じさせる。
その喫茶店にある七つのテーブルと十席ほどのカウンターには、サラリーマン風の男性が五人ほど疎らに座っていた。
そして、二人のウェイトレスがレジの前で何やら世間話をしていた。

ファミレスではなく、喫茶店で深夜の一時まで開いている店は珍しい。
そんな喫茶店に志郎を呼び出したのは、良くも悪くも親友の博和。
二人は同じソフト会社に勤めているのだが、部署や立場が違うために一緒に帰ることは滅多に無い。
もっぱら遅くなるのは博和で、夜の九時までに帰宅できるのは稀である。
そんな彼がどうしても話したいことがあると言うので、仕事が終わった夜十時過ぎにわざわざ待ち合わせる事にしたのだった。

カランカランと木製の扉についていた鈴を鳴らして足を踏み入れると、ダークグレーのスーツを着た博和の姿があった。
一番奥のテーブル。
四人掛け出来るスペースに一人で座って右手を軽く振っている。

「おっ!志郎。遅かったじゃないか」
「これでも急いで来たんだけどな。お前がどうしても話がしたいって言うから」
「そうか。まあそこに座れよ」
「誰か来るのか?有紗さん?」
「いや、違うけど」
「誰も来ないのか?それなら二人掛けのテーブルでも良かったのに」
「まあまあ、とりあえず座れよ」
「…………」

有紗は博和の妻だ。
実は志郎、博和が結婚する前に有紗に乗り移ったことがある。
もちろん、大好きな有紗に乗り移って欲しいと願ったのは博和の方だが。
そして志郎は、有紗の体で博和とセックスしたのだ。

その後、博和と有紗は良い仲になり――結婚してしばらく、二人の間には長男が誕生していた。
二十四歳と言う若さで子供を作った博和を、まだ独身貴族の志郎は大変だと思う反面、うらやましいとも思っていた。
そんな博和と、テーブルを挟んで向かい合うように座った。

「俺さ、もう嬉しくて仕方ないんだ」

いきなり博和が話を始めた。
何かを早く伝えたいという気持ちが表情に表れている。

「何が?」
「ええ?何がってさ。もう言葉では表現出来ないくらいなんだ」
「子供が生まれたからか?生まれてからもう半年も経つのに」
「違う違う。そんな事じゃないって」
「じゃあ何だよ」
「教えてほしいか?」
「勿体ぶらずに早く言えよ」

博和の顔は笑顔であふれんばかり。
よほど嬉しいことがあったのだろう。
嬉しい事なら別に隠す必要なんてないのに。
志郎はそう思いながら話を聞きだそうとした。

「よし、教えてやるよ。ちょっと待ってろよ」
「何だよ、偉そうに」

志郎たちよりも少し年下であろうウェイトレスが持ってきたグラスに手を伸ばしながら、自慢話を語ろうとする博和を眺めた。
しかし、博和はニヤッと笑うとテーブルに伏せてしまったのだ――。