妹の霧子が死んでから1週間。
新婚生活で浮かれた気分になっていた俺に突然の悲劇だった。
8つ下の妹はまだ高校3年生で、これから楽しい大学生活が待っていたのに。
交通事故であっという間に俺の前からいなくなってしまった。

「ごめんな舞子」
「ううん、仕方ないよ。霧子ちゃんが亡くなってからまだ1週間しか経ってないもの」
「折角の新婚生活なのにな」
「…………」

妻の舞子も、俺の妹の事は良く知っていたから共に悲しんでくれていた。
本当は楽しくて仕方が無い新婚生活のはずなのに。
でも、俺は18年という長い年月を一緒に過ごしてきた妹を、そう簡単に忘れることは出来なかった。

「……お風呂、入ってくるね」
「ああ。頼むよ」

舞子は俺の頬に優しくキスをすると、ゆっくりと扉を閉めて出て行った。

「……はぁ。舞子には悪いと思っているんだがな。霧子、どうしてそんなに早く逝ってしまったんだ。お前はこれからもっと楽しい人生を歩めたはずなのに……」

そう思うと、自然と涙がこみ上げてくる。

「霧子……」

俺が目を瞑って霧子との思い出に浸ろうとしたとき、ガチャっと扉が開いて舞子が入ってきた。

「へっ!?」

最初に口から出た言葉はそれだった。
何故かというと――舞子は上半身裸で、下半身にはパンストとパンティという信じられない姿で入ってきたからだ。いや、風呂に入ろうとしていたからありえない事はないのだが、なぜその状態できたのかが分からない。

「ねえっ!」

舞子が厳しい表情で俺に迫ってきた。

「ど、どうしたんだ舞子。お、お前……」
「いつまで女の腐ったのみたいにウジウジしてるのよ。もう見てられなくて出てきちゃったじゃないっ!」
「はっ?」
「そんなんじゃ舞子さんが可愛そうでしょ。私の事なんかすっぱり忘れて新婚生活を楽しみなさいよっ」
「な、何言ってるんだ舞子?訳が……」
「もう……お兄ちゃんはもっと舞子さんの事を考えてあげなきゃダメじゃない」
「…………」

何がどうなっているんだ?
俺には舞子が何を言っているのかさっぱり分からなかった。
そんな舞子は俺の前で仁王立ちして話した後、ソファーで寝ている俺に体を寄せてきた。

「お願い、早く私の事なんて忘れてよ……ううん。忘れられるのは寂しいから記憶の奥に仕舞い込んで。お兄ちゃん」
「お、お兄ちゃん?」
「うん」
「……お兄ちゃんって、まるで霧子みたいな……」
「……そうだよ、お兄ちゃん」
「えっ」
「私、霧子だよ。今、舞子さんの体に乗り移ってるの」
「え……ええっ!」
「ずっと上から見てたけど……お兄ちゃん、私が死んでから篭ってばかりだから。これじゃ舞子さんが可愛そうだよ」
「き、霧子!?霧子なのかっ!」
「そうだよ、お兄ちゃん」
「ほ、本当に……霧子なんだな」
「うん」

目の前にいるのは舞子だが――霧子なのか。
妹の霧子。死んだはずの霧子が――ここにいるのか!

「霧子っ!」

俺が体を抱き寄せようとすると、舞子(霧子)は舞子の手で俺のチンポをギュッと掴んだ。

「いっ!」
「ダメッ」
「はっ……」
「お兄ちゃん……私ね、お兄ちゃんが大好きだったの」
「……も、もちろん俺もさ」
「……私、お兄ちゃんを想う気持ちは誰にも負けてなかった」
「…………」
「今抱き寄せられたら、さっきからずっと戦ってきた理性が崩れそう」
「えっ……」
「私、まさか舞子さんに乗り移れるなんて思わなかったから……」
「あ、ああ……」
「本当は舞子さんが可愛そうだと思ったから、私が何とかしてあげなきゃと思って飛び込んできたんだけど……だけど、こうやって舞子さんの体を通じてお兄ちゃんと話すことが出来て、間近で見ていると……」

舞子(霧子)はグッと目を閉じて何かを堪えているようだった。
霧子は……俺の事を好き以上に想ってくれていた様だ。
愛しい妹――
もう2度と逢えないかも知れない妹。
俺は――

「あっ!」

舞子(霧子)を思い切り引き寄せ、しっかりと抱きしめた。

「お、お兄ちゃん……」
「霧子……」

俺はそのまま舞子(霧子)とキスをした――