「なあ兄貴、金貸してくれよ」
「お前に貸す金なんてねぇよ」
「頼むよ。明日彼女とデートなんだ」
「俺だって美紀とデートなんだよ。だから金は必要なんだ」
「そんなこと言わずに頼むって」
「ダメだって言ってるだろ」
「……じゃあさ。交換条件!」
「なんだよ、交換条件って」
「兄貴、隣の家の奥さんの事、気にいってるんだろ」
「……それがどうしたんだよ……って、お前っ!?」
「流石に口ではしたくないけど、胸でならしごいてもいいんだけどな〜」
「な、何馬鹿なこと言ってんだよ。そんな事していいと思ってるのか!」
「兄貴からお金を借りるためだ。ちょっと体を借りるだけだし」
「そうは言っても、勝手に体を借りるなんてっ」
「そう言いながら兄貴、この前は俺の後輩と楽しんだじゃないか」
「そ、それは……お前が勝手に……」
「5千円でいいんだ。飯食ってちょっと遊ぶだけだから」
「……そ、そんな事されても、俺だって金が無いんだからな」
「そう言わずにさ。ちょっと待っててよ」
「お、おい……」

大学生の俺にとって、実は5千円なんて大した金額じゃなかった。
家庭教師のバイトをしていると、金に不自由することは無いのだから。
弟の次郎は高校生。
バイトよりも遊んでいる方が好きみたいだ。
たまに金を貸して欲しいとねだってくるけど、返してもらった記憶は無い。
自分でしっかりバイトでもして稼がなければ自由に使えるお金なんて手に入らない。
俺や親に金を借りてばかりじゃダメなんだ。
それが分かっていないから、俺は次郎に冷たくあたった。
しかし……次郎は思春期に入った頃から特別な力を身につけるようになって――
悲しい事に、俺はその力の前では兄面することが出来なかった。


「どうだ?気持ちいいか、兄貴」
「だ、だからやめろって!」
「素直じゃないんだから。こうやって瞑子さんの胸でパイズリされたらたまんないだろ」
「し、しらねぇよ。そんなこと……」
「我慢しちゃってさ。こんなにチンポでかくしてるのに」


その柔らかい胸の感触がたまらなく気持ちよかった。
目の前でパイズリしているのは隣の家に済んでいる新妻の井戸川瞑子さん。
でも、本当は次郎が瞑子さんに乗り移っているんだ。
次郎はこうやって他人の体に憑依して自由に操ることが出来る非常識な能力持ってしまったのだ。

「なあ兄貴、折角だから瞑子さんのしゃべり方をしてやろうか」
「そんなことしたって、金は貸してやらないぞ」
「……もう。どうしてそんなに冷たいの?次郎君が可哀想じゃない」
「そうやって他人に乗り移れるなら、他人の金を失敬すればいいだろ」
「そんなの犯罪だから出来ないわよ」
「他人の体に憑依してそんなことしている時点で立派に犯罪を犯していると思うけどな」
「そんなこと、誰も信じないわよ。だから……ねぇ。お金貸してよ」

瞑子さんの顔で、そして瞑子さんの声でおねだりする次郎。
胸に挟み込まれた俺のチンポが激しくいきり立っている。
そんなに胸を押さえつけてしごかれたら、すぐにでもイッてしまいそうだ。

「ねえ、お金貸してくれない?お願いよ」
「だ、だからダメだって」
「私が頼んでも?」
「私じゃなくて次郎だろ」
「そんな意地悪言わないでよ。瞑子が一生懸命パイズリしてあげてるのよ」
「だからそれはお前が勝手にしているんだろ」
「ふ〜ん。じゃあこの状況で体から抜け出てもいいんだけどなぁ」
「またそれか」
「分かってたでしょ。そういうの」
「……お前は卑怯者だよ」
「拒まない兄貴が悪いんだ。そうでしょ」
「……うっ」
「良かったら私の顔に射精していいのよ。思い切りぶちまけても」

大きな胸を無理矢理押し付けてゆっさゆっさと揺らしている。
俺のチンポが――俺のチンポが――

「ううっ!」
「わっ!」

こうやって俺は瞑子さんに顔面シャワーを浴びせてしまった。
本人には分からないだろうけど、俺としては罪悪感アリアリ。

「すげぇな兄貴。溜まってたんだ」
「はぁ、はぁ……う、五月蝿いな」
「はい、5千円」
「…………」

何も言えなかった俺は、瞑子さんの手を出した次郎に5千円を手渡した。

「5千円でパイズリしてくれる店なんてなかなか無いんじゃない?」
「そんなの知らねえって」
「1万円出してくれるんだったら疼いた股間に兄貴のこれを入れてもいいんだけどな」
「……い、いいかげんにしろって!」
「じょ、冗談だよ。じゃあ体、返してくるよ」
「……ああ」

俺も男だなぁ。
所詮性欲には勝てないって事か。
情けない反面、弟が乗り移ってくる女性を密かに期待してしまうこの気持ちは――やっぱり情けなかった。

おわり