「驚いただろ?こうやって俺の能力を見せるの、初めてだもんな」
「あ、ああ。そうだな」

彼女は振り向きながら俺に話しかけた。
何処から見ても健彦には見えず、俺が人知れず片思いしていた彼女――「虹川彩子」だった。

「この能力を見せたのはお前だけなんだぜ」
「そ、そうなんだ」
「ああ。今までは一人で楽しんでたからな。でも、最近一人で楽しむのも飽きちゃってさ」
「へ、へぇ〜。一人で楽しんでたのか」
「そりゃ女の体に憑依するんだからなぁ。女の体って最高だぜ!」
「そ、そうか?」
「女の快感を覚えたら、男の快感なんてシケてるって」
「へ、へぇ〜」

俺は彩子の容姿で話す健彦に、中途半端な返事しか出来なかった。
目の前にいるのは、あの虹川彩子なんだから。
俺の中では神聖な領域にいる彼女。
その彼女が、あろうことか男言葉で下品な話をしている。
それが信じられなかった。

「なあ。するだろ!」
「な、何を?」
「決まってるじゃないか。セックスだよ、セックス!」
「セ、セックス!」
「そのために、俺に憑依させたんだろ。そうだ、ちょっと待てよ……」

目を閉じて、何やら考えている様子。
少しすると、健彦はまた俺を驚かせる言葉で話し始めた。

「ねえ俊一。私、俊一の事、嫌いじゃないよ」
「えっ!?」
「ちょっと悔しいけど、健彦よりも好きかな?」
「な、何言ってんだよ!」

いきなり彩子の言葉を使った健彦。
しかも、嫌いじゃないって――どういう意味だ?

「今、彩子モードに突入したの。俺って憑依した人間の記憶も読み取れるんだよねぇ〜。だから今から虹川彩子に成りきって話してあげるよ」
「そ、そんなことまで出来るのか!?」
「うん。とりあえず私の家に行こうよ。この体で楽しませてあげるから」
「た、楽しませてあげるって……」
「もちろん、せ・っ・く・す!」

彩子はウィンクしながら腕を絡めると、記憶から読み取った彼女の家へ、俺を強引に誘い込んだ。