「ただいま」
と言っても、誰も返事をしてくれない。
やはりまだ両親は帰ってきていないようだ。
なので、「おかえり」と琢次郎が後ろから返事をした。
廊下の電気をつけてキッチンに向かった久美は、冷蔵庫に入っていた牛乳を飲むと二階にある自分の部屋へ上がった。
「へぇ。綺麗に片付いてるね」
「もちろん。だって私、片付けるの好きだもの」
「ふ〜ん。俺は片付けるの、すごく嫌いだったな。大学の寮に入ってたんだけどさ。あそこは酷かったよ。俺の部屋だけじゃなくて、どの部屋も」
「男臭くてやな感じね」
「まあ、それが良かったんだけどさ。仲のいいヤツが女を連れ込んだ事があって、寮長にえらく叱られていたこともあったなぁ。あの頃が懐かしいよ」
「ふ〜ん」
久美から離れた琢次郎が、部屋の中をグルグルと見回っている。
「ねえ。私、今から着替えるから外に出ていてくれない」
「え、ああ。そうだね、幽霊と言っても男だし」
「当たり前じゃない。電車の中であんないやらしい事して」
「まあまあ」
琢次郎は両手を前で振ったあと、すぅ〜っと壁の中に消えていった。
「ふぅ〜。そうだ、琢次郎は男なんだ。男を簡単に部屋に入れても良かったんだろうか……」
今更そんな事を呟いた久美は、セーラー服を脱いで下着姿になると、タンスの引き出しから部屋着を取り出した。
白いスウェットの上下。
そのズボンを穿こうとしたとき、股間に少しの湿り気を感じた。
「…………」
きっと、琢次郎が電車の中で女性にしていた悪戯に体が反応してしまったのだろう。
その事実を隠すように、久美は急いでスウェットのパンツを引き上げた。
そしてトップを着込むと、少し身なりと整えた。
「……いいわよ」
その言葉に、また壁からヌッと琢次郎があわられる。
「ねえ、隣の部屋って誰の?」
「お姉ちゃんの部屋」
「へぇ〜。お姉さんがいるんだ」
「うん」
「何歳?」
「私の4つ上。21歳だけど」
「じゃあ俺と同い年なんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。琢次郎って21歳かぁ」
「そうだよ。それよりもお姉さん、久美ちゃんに似てるの?」
「えっ……。ううん、似てないよ。似てるって言われたことはあるけど、多分気を使ってるんだ」
「そうなんだ。名前は?」
「一美」
「一美さんかぁ」
「どうして私は【ちゃん】付けで、お姉ちゃんは【さん】付けなのよ」
「だって俺と同い年だろ」
「幽霊で1年過ごしたんだから、本当は22歳なんじゃないの?」
「……そ、そうか。そうかもしれない」
「幽霊になって、頭のネジが緩んでるんじゃない?」
「う〜ん、そうかもなぁ……って、久美ちゃんに言われたくないな。これでも俺は、某有名大学生だったんだから」
「うそ……そ、そうなの?じゃあ頭いいんだ」
「まあな。そうだ、俺がとり憑いている間は勉強教えてあげるよ。高校生の勉強ぐらい朝飯前だからさ」
「ほんと!それってすごくラッキ〜!」
こういう形でいい事があるとは思っていなかった久美は、結構嬉しそうだ。
実は久美、学校では成績のよい方ではない。
部活に熱心なせいか、勉強にまで手が回らないのだ。
いや、きちんと勉強している生徒だっているのだから、きっと久美の努力が足りないだけ――だろう。
「じゃ、じゃあ早速……」
久美はそそくさと勉強道具を机に並べると、今日先生に言われた宿題を琢次郎に見せた。
「これなんだけど」
「どれどれ」
琢次郎は久美の横に立って、じっと問題を見つめた。
「ふ〜ん、こんな問題が出るんだ。結構難しいなぁ」
「出来ない?無理?」
「いや、簡単」
にっこり笑いながら、久美にも分かるように問題を解いてゆく。
まるで家庭教師がついている感じ。
その分かりやすい説明に感心しながら、久美は問題を解いていった。
「すご〜い、もう出来ちゃった」
「良かったね、久美ちゃん」
「うん、ありがとう琢次郎。やっぱり大学に行っていただけの事はあるね」
「まあね」
「琢次郎が一緒にいてくれたら、学校のテストも勉強しなくてもいいって事よね。これは楽勝楽勝!」
「でも俺は恨みをはらしたらいなくなるんだ。やっぱり自分で勉強した方がいいんじゃないか?」
「それはそうだけど……」
「俺がいる間、色々と教えてあげるよ」
「……うん」
その後、久美が勉強道具を片付けいると、玄関の扉を開ける音がした。
「あ、お姉ちゃんが帰ってきたんだ」
「そうなの?」
「うん。多分」
その会話の後、階段を上ってくる足音がして――
コンコンと久美の部屋の扉をノックする音がした。
「久美?帰ってるの?」
「うん。開いてるよ」
久美が返事をすると、扉を開いて姉の一美が入ってきた――
と言っても、誰も返事をしてくれない。
やはりまだ両親は帰ってきていないようだ。
なので、「おかえり」と琢次郎が後ろから返事をした。
廊下の電気をつけてキッチンに向かった久美は、冷蔵庫に入っていた牛乳を飲むと二階にある自分の部屋へ上がった。
「へぇ。綺麗に片付いてるね」
「もちろん。だって私、片付けるの好きだもの」
「ふ〜ん。俺は片付けるの、すごく嫌いだったな。大学の寮に入ってたんだけどさ。あそこは酷かったよ。俺の部屋だけじゃなくて、どの部屋も」
「男臭くてやな感じね」
「まあ、それが良かったんだけどさ。仲のいいヤツが女を連れ込んだ事があって、寮長にえらく叱られていたこともあったなぁ。あの頃が懐かしいよ」
「ふ〜ん」
久美から離れた琢次郎が、部屋の中をグルグルと見回っている。
「ねえ。私、今から着替えるから外に出ていてくれない」
「え、ああ。そうだね、幽霊と言っても男だし」
「当たり前じゃない。電車の中であんないやらしい事して」
「まあまあ」
琢次郎は両手を前で振ったあと、すぅ〜っと壁の中に消えていった。
「ふぅ〜。そうだ、琢次郎は男なんだ。男を簡単に部屋に入れても良かったんだろうか……」
今更そんな事を呟いた久美は、セーラー服を脱いで下着姿になると、タンスの引き出しから部屋着を取り出した。
白いスウェットの上下。
そのズボンを穿こうとしたとき、股間に少しの湿り気を感じた。
「…………」
きっと、琢次郎が電車の中で女性にしていた悪戯に体が反応してしまったのだろう。
その事実を隠すように、久美は急いでスウェットのパンツを引き上げた。
そしてトップを着込むと、少し身なりと整えた。
「……いいわよ」
その言葉に、また壁からヌッと琢次郎があわられる。
「ねえ、隣の部屋って誰の?」
「お姉ちゃんの部屋」
「へぇ〜。お姉さんがいるんだ」
「うん」
「何歳?」
「私の4つ上。21歳だけど」
「じゃあ俺と同い年なんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。琢次郎って21歳かぁ」
「そうだよ。それよりもお姉さん、久美ちゃんに似てるの?」
「えっ……。ううん、似てないよ。似てるって言われたことはあるけど、多分気を使ってるんだ」
「そうなんだ。名前は?」
「一美」
「一美さんかぁ」
「どうして私は【ちゃん】付けで、お姉ちゃんは【さん】付けなのよ」
「だって俺と同い年だろ」
「幽霊で1年過ごしたんだから、本当は22歳なんじゃないの?」
「……そ、そうか。そうかもしれない」
「幽霊になって、頭のネジが緩んでるんじゃない?」
「う〜ん、そうかもなぁ……って、久美ちゃんに言われたくないな。これでも俺は、某有名大学生だったんだから」
「うそ……そ、そうなの?じゃあ頭いいんだ」
「まあな。そうだ、俺がとり憑いている間は勉強教えてあげるよ。高校生の勉強ぐらい朝飯前だからさ」
「ほんと!それってすごくラッキ〜!」
こういう形でいい事があるとは思っていなかった久美は、結構嬉しそうだ。
実は久美、学校では成績のよい方ではない。
部活に熱心なせいか、勉強にまで手が回らないのだ。
いや、きちんと勉強している生徒だっているのだから、きっと久美の努力が足りないだけ――だろう。
「じゃ、じゃあ早速……」
久美はそそくさと勉強道具を机に並べると、今日先生に言われた宿題を琢次郎に見せた。
「これなんだけど」
「どれどれ」
琢次郎は久美の横に立って、じっと問題を見つめた。
「ふ〜ん、こんな問題が出るんだ。結構難しいなぁ」
「出来ない?無理?」
「いや、簡単」
にっこり笑いながら、久美にも分かるように問題を解いてゆく。
まるで家庭教師がついている感じ。
その分かりやすい説明に感心しながら、久美は問題を解いていった。
「すご〜い、もう出来ちゃった」
「良かったね、久美ちゃん」
「うん、ありがとう琢次郎。やっぱり大学に行っていただけの事はあるね」
「まあね」
「琢次郎が一緒にいてくれたら、学校のテストも勉強しなくてもいいって事よね。これは楽勝楽勝!」
「でも俺は恨みをはらしたらいなくなるんだ。やっぱり自分で勉強した方がいいんじゃないか?」
「それはそうだけど……」
「俺がいる間、色々と教えてあげるよ」
「……うん」
その後、久美が勉強道具を片付けいると、玄関の扉を開ける音がした。
「あ、お姉ちゃんが帰ってきたんだ」
「そうなの?」
「うん。多分」
その会話の後、階段を上ってくる足音がして――
コンコンと久美の部屋の扉をノックする音がした。
「久美?帰ってるの?」
「うん。開いてるよ」
久美が返事をすると、扉を開いて姉の一美が入ってきた――