「こうやって話が出来る人っていうか、聞いてくれる人って俺が死んでから一年間、全然いなかったんだ。俺の事を見える人は何人かいたけど、皆怖がって逃げるし」
「……そりゃあんな顔して睨みつけられたら誰だって逃げたくなるわよ」
無視していようと思ったが、とりあえず少しの会話くらいならしてやろうと思ったようだ。
「違うよ。最初はもっと優しい顔してたんだ。でも、ずっと逃げられ続けているうちに悔しくなって……何時しか恨めしいと感じるようになったんだ」
「ふ〜ん」
「でも、君は違ったね。僕を怖いと思わなかったし……睨み返してきた。あまりに違う対応されたから、思わず笑っちゃったよ。あははははっ」
よほど話せたのが嬉しかったのだろうか、琢次郎の声はとても弾んでいた。
この世に留まり、誰にも相手にされなかった1年間。
きっと彼にとっては辛くて長い時間だったのだろう。
それは17歳の久美にも分かった。
ふと顔を上げると――
「…………」
こうして近くでじっくり見ると、ちょっとカッコいいかもしれない。
久美よりも少し年上、大学生くらいだろうか?
あっさりした顔立ちでスポーツ狩り。
きちんと椅子に座っていると仮定すると、座高の高さから考えて身長は180センチ以上あるだろう。
視線を合わせてくれたのが嬉しいのだろうか、琢次郎はニコッと笑うと、
「久美ちゃんってすごく可愛いよね」
と言ってテーブルに両肘をつき、掌に顎を乗せた。
幽霊なのに器用だ。
「ゆ、幽霊に可愛いって言われてもねぇ」
顔を紅くした久美。
「そうやって照れるところが特に可愛いな」
「も、もう。からかわないでよ」
膨れっ面で視線を反らせると、周りにいる客達がじっと久美を見ていた。
他人には琢次郎の姿が見えない訳で――
どうやら久美はハンバーガーを食べながら独り言を呟いている、変な女の子に見えているらしい。
「あ……」
「声を出してしゃべらなくてもいいよ。俺と久美ちゃんは心の中で会話する事が出来るから」
(それならそうと初めから言ってよっ!私、変な女だって思われちゃったじゃないのっ)
「ごめんごめん、そういうのも別に気にしないのかと思って」
(気にするわよっ!)
更に赤面して俯いた彼女に、また琢次郎が微笑んだ。
「俺、久美ちゃんの事がほんとに好きになっちゃった」
(勝手に好きにならないで)
「ねえ、俺の怨念、はらさせてよ」
(はぁ?どうして私が)
「だって、こうやって話が出来るのは久美ちゃんだけだし」
(怨念って、誰かを恨んでるんでしょ)
「そう」
(じゃあその人を呪い殺せばいいじゃないの)
「う〜ん。実はそうしたいんだけど……彼女は霊媒師なんだ」
(霊媒師?……じゃあお払いされて成仏させられるって事?)
「うん。まあ、成仏させてくれるから嬉しいんだけど……やっぱりほら、怨念はらさず成仏するってのもね、何か悔いが残るでしょ。しかもそれが怨念を抱いている相手なら尚更」
(……さあ)
「残るんだよ。実はさ……」
琢次郎が言うには、こうだった―――
「……そりゃあんな顔して睨みつけられたら誰だって逃げたくなるわよ」
無視していようと思ったが、とりあえず少しの会話くらいならしてやろうと思ったようだ。
「違うよ。最初はもっと優しい顔してたんだ。でも、ずっと逃げられ続けているうちに悔しくなって……何時しか恨めしいと感じるようになったんだ」
「ふ〜ん」
「でも、君は違ったね。僕を怖いと思わなかったし……睨み返してきた。あまりに違う対応されたから、思わず笑っちゃったよ。あははははっ」
よほど話せたのが嬉しかったのだろうか、琢次郎の声はとても弾んでいた。
この世に留まり、誰にも相手にされなかった1年間。
きっと彼にとっては辛くて長い時間だったのだろう。
それは17歳の久美にも分かった。
ふと顔を上げると――
「…………」
こうして近くでじっくり見ると、ちょっとカッコいいかもしれない。
久美よりも少し年上、大学生くらいだろうか?
あっさりした顔立ちでスポーツ狩り。
きちんと椅子に座っていると仮定すると、座高の高さから考えて身長は180センチ以上あるだろう。
視線を合わせてくれたのが嬉しいのだろうか、琢次郎はニコッと笑うと、
「久美ちゃんってすごく可愛いよね」
と言ってテーブルに両肘をつき、掌に顎を乗せた。
幽霊なのに器用だ。
「ゆ、幽霊に可愛いって言われてもねぇ」
顔を紅くした久美。
「そうやって照れるところが特に可愛いな」
「も、もう。からかわないでよ」
膨れっ面で視線を反らせると、周りにいる客達がじっと久美を見ていた。
他人には琢次郎の姿が見えない訳で――
どうやら久美はハンバーガーを食べながら独り言を呟いている、変な女の子に見えているらしい。
「あ……」
「声を出してしゃべらなくてもいいよ。俺と久美ちゃんは心の中で会話する事が出来るから」
(それならそうと初めから言ってよっ!私、変な女だって思われちゃったじゃないのっ)
「ごめんごめん、そういうのも別に気にしないのかと思って」
(気にするわよっ!)
更に赤面して俯いた彼女に、また琢次郎が微笑んだ。
「俺、久美ちゃんの事がほんとに好きになっちゃった」
(勝手に好きにならないで)
「ねえ、俺の怨念、はらさせてよ」
(はぁ?どうして私が)
「だって、こうやって話が出来るのは久美ちゃんだけだし」
(怨念って、誰かを恨んでるんでしょ)
「そう」
(じゃあその人を呪い殺せばいいじゃないの)
「う〜ん。実はそうしたいんだけど……彼女は霊媒師なんだ」
(霊媒師?……じゃあお払いされて成仏させられるって事?)
「うん。まあ、成仏させてくれるから嬉しいんだけど……やっぱりほら、怨念はらさず成仏するってのもね、何か悔いが残るでしょ。しかもそれが怨念を抱いている相手なら尚更」
(……さあ)
「残るんだよ。実はさ……」
琢次郎が言うには、こうだった―――