「上手く出来たかな?あのお姉さんはかなりのタイプなんだけど」

晴樹は家に戻ると、携帯電話がなり始めるのをずっと待っていた。
いくら稚香子が頑張っても、上手く出来る時と出来ない時がある。
大体7割ぐらいの確率だろうか?
でも、前はもっと低くて2割にも満たなかっただろう。
それは、稚香子自身が好んでやっていたわけではなく、経験が浅かったから。
晴樹と付き合うようになり、晴樹のことを大好きになった稚香子。
――ということで、大好きな晴樹のために何度もチャレンジし、今の成功率になっているのだ。

♪ジャンジャンチャララララ〜

「お!」

晴樹の携帯がなり始めた。
この着信メロディは稚香子に設定したいたものだ。
そして、液晶画面にも稚香子という文字が。

「もしもし」
「もしもし晴樹?お待たせ!」
「あ、ああ」

電話の向こうからは、稚香子の声ではなく別の女性の声が聞こえた。
それは、稚香子の可愛い女の子の声ではなく、少し大人びた女性の声だった。

「上手く行ったんだな!」
「うん。今、私服に着替えてもうすぐ家に戻るところ。晴樹も早くおいでよ」
「分かった。すぐに行くよ」
「ええ、待ってるわよ晴樹君。私が晴樹君をしっかりと介抱してあげるわ」
「おいおい」
「えへ!こんな感じかな?水西 実波(みずにし みなみ)さんの話し方は」
「そうなんだ」
「みたいよ。後は晴樹が来てからのお・た・の・し・み!」

そう言って電話を切った稚香子。
難しいと言っていたが、結構同化出来ているようだ。
私服に着替えたという事は、今の電話のように彼女の名前や更衣室の場所、ロッカーが分かったという事。
そして、話し方を真似したという事は、ある程度彼女の記憶を読み取る事が出来ているという事だ。

「すげぇな、稚香子は」

家を出た晴樹は、急いで稚香子に家に向かった――



ピンポ〜ン!

インターフォンを押すと、「開いてるよ」と稚香子――いや、実波の声。
晴樹はドキドキしながら玄関の扉を開き、リビングへと上がりこんだ。

「結構早かったね、晴樹」
「あ、ああ」

リビングには稚香子ではなく、病院の前で見た水西実波という看護師が私服で寝転がっていた。

「暇だからゲームしてたんだ」
「そうか。それにしてもジュースやお菓子ばっかりだな。食べすぎなんじゃないか?」
「いいでしょ、どっちみち私の体じゃないんだから。他人の体だと幾ら食べてもダイエットする必要がないから楽なのよねぇ〜!」

そういう無責任なことを言った稚香子は、実波の体をゆっくりと起き上がらせた。

「かなり同化できてるよ。この体なら何したって大丈夫だと思う」
「へぇ〜。すごいな」
「私もかなりレベルが上がってきたね!」
「そうだな。以前は途中ではじき出されたりしてたもんな」
「あの時は晴樹、焦ったでしょ」
「そりゃそうさ。いきなり『あんた誰?』なんて言われた日にはさ」
「あはは!ごめんね晴樹。今日はそんな事にはならないよ」
「本当か?」
「うん、今は完全に私の物って感じ」
「ふ〜ん」
「水西実波の人生を奪うことだって出来ちゃいそう!」
「怖い事を言うよな、稚香子は」
「だって、彼女の記憶が手に取るように分かるんだもん」
「普段、どんな生活をしているか分かるのか?」
「もちろん!家族や友達の事も分かるよ」
「へぇ〜」
「ねえ晴樹。それよりも晴樹が望んだこの体を持ってきたのよ。したいことがあるんじゃないの?」
「ああ……」
「……うふふ。じゃあ実波が晴樹君を楽しませてあげるわ。晴樹君のペニスを咥えてフェラチオしてあげる。もちろん手で睾丸を優しく転がしてね!」
「こ、睾丸って」
「晴樹君、私は看護師よ。金玉なんて言葉は使わないわよ」
「……そ、そっか」
「バスルームへいらっしゃい。全身を綺麗にしてあげるわ」
「……ああ」

普段とは違い、実波の大人びた雰囲気で話しかけてくる稚香子に少し圧倒された晴樹は、言葉少なめにバスルームへと向かった――