時雨の前には、このファミレスで働いている三田村 果乃子が座っていた。
栗色のロングが大人びた雰囲気を漂わせている。
高校生とは思えない。大学生だろうか?
オレンジジュースを一口飲んだ後、テーブルに肘を付いて手の甲に顎を乗せながら会話を楽しんでいる様子。

「もうすぐバイトの時間も終わりそうだからさ、その後楽しいことをしようぜ」
「こんなに綺麗な女性と楽しめるなんて、俺ってほんとに役得だよな」
「だろ。この前、お前とファミレスに入ったときにチェックしといたんだ」

果乃子は女性らしからぬ言葉遣いで時雨と話をしていた。
もちろん、彼女自身がしゃべっているわけではない。
すでに体を乗っ取られ、全てを奪われているのだ。

「なあ、知ってるか?」
「何を?」
「今来ている制服って赤色だろ」
「ああ」
「黄色い制服もあるんだぜ」
「そうなのか?」
「俺、黄色い制服の方が好きなんだよな」
「だったら黄色い制服を着てみてくれよ。俺だって見たいし」
「後で着替えてくるよ。そのままこの体を借りてトンズラするか!」
「ああ。で、それから楽しむって事だな」
「まあな」

店の柱に掛かった時計をチラリと見た果乃子。

「そうだな。客もほとんどいないし、今のうちに着替えてくるか」
「そうか、じゃあ俺も途中まで付き合わせてくれよ」
「いいぜ。折角だから……」

二人は立ち上がると、更衣室の前まで歩いていった。
壁の向こうに更衣室のドアが隠れるようになっているので、少しくらい悪戯しても誰も気づかないだろう。

「ほら、少しだけ触ってもいいぜ」
「い、いいのか?今触っても」
「ああ」
「そ、それじゃ……え、遠慮なく」

時雨が果乃子の胸に手を当てると、果乃子は彼の手の上に自分の手を重ねた。

「どう?柔らかいでしょ」
「す、すごく柔らかいよ」
「私もこうやって揉まれると気持ちがいいよ。時雨って胸を揉むの、上手いんだね」
「ははは、果乃子さんに成りきってら」
「その方がいいでしょ」
「確かに」

しばらく胸を揉見続けていた時雨。
白いフリルのついたブラウスの中、ブラジャーの生地を通り越して乳首が勃起しているのが感じられる。

「なあ、もう乳首が勃ってるんじゃないの?」
「そうみたい。だって気持ちがいいんだもん」
「直接触らせてくれよ」
「……だめ。それは後からのお楽しみ!」

果乃子は悪戯っぽく笑うと、時雨の手を遠ざけた。

「それじゃ、着替えてくるから席で待っててね!」
「もうちょっと揉みたかったなぁ」
「あとで好きなだけ揉ませてあげるから。ねっ!」
「……分かったよ」

そう言うと、少し残念そうな表情をして果乃子に背を向けた。

「じゃ、待っててね」

果乃子はドアを開いて更衣室に入ってゆく。

「まあ、後の楽しみに取っておくか」

一人呟いた時雨は、先ほど座っていた席に戻って果乃子が戻ってくるのを待つことにした。
それにしても、こんなに客が入っていないんじゃ店が潰れるのも時間の問題じゃないかな。
果乃子と同じようにバイトをしている女の子は、あと二人いるようだ。
一人はレジでお金の計算をしている様子。
もう一人は厨房の中に入って、調理を担当する男性と話していた。
何ともだらしないというか、気合の入っていないというか――
きっと、サービスが行き届いていないんじゃないか?
だから客が入っていないとか?
そんな事を思いながらしばし待っていた時雨だが、ふと視界に人影が見えた。

「お待たせ!」
「おっ、早かったじゃないか」

時雨の前に座ったのは、黄色い制服に着替えた果乃子だった――

つづく