「う……ん」

視界がぼやけているが、しばらくするとはっきりと見え始めた。
目の前をチラチラと横切る緑の髪。
実紗江(みさえ)はベッドの上で上半身を起こすと、その下着しか付けていない自分の体をマジマジと見た。
そして、「ニヒッ!」といやらしい笑いをすると、そそくさと服を着て外の街へと出て行った。

「お〜い!」
「ん?」

実紗江が階段の上を見上げると、そこには実紗江が家庭教師をしている高校生、角川 時雨(つのかわ しぐれ)が手を振っていた。
そんな彼に、ニコッと微笑みかけた実紗江。

「ああ、時雨。またせたな」
「そのしゃべり方……マジで成功したのか?」
「でなけりゃ、こんなしゃべり方しねぇっつ〜の!」
「す、すげぇや。マジで出来たんだ」
「まあな。クスッ!ねえ角川クン。お茶でも飲みに行かない?」
「あ、ああ。行く行く!」
「私がおごってあげるわ。だって私、角川クンの家からバイト代貰ってるんだから」

そう言うと、実紗江は赤いショルダーバッグから財布を取り出し、時雨に見せた。
中には万札が何枚か入っている。

「へぇ〜。やっぱり実紗江さんって金持ちだったんだ」
「そうみたいね」


そんな事を話しながら、二人は近くのファミレスに入った。

「ねえ、何頼む?何でもいいわよ」
「じゃあ俺はステーキ」
「今からステーキ?昼ご飯食べたところじゃないの?」
「だって何でもいいって言っただろ」
「それはそうだけど」
「ってさ。いつまで実紗江さんの真似してんだ?そろそろ素に戻ってくれよ。何か話しにくいし」
「どうして?あ、私はサイダーね」


ウェイトレスに注文を済ませた二人は、しばらく雑談をしていた。
傍から見ていると高校の男子生徒と女子大生が話しているという感じ。
でも、その会話はまるで男同士、しかもごく親しい友人のようだった。

「なあ、俺にも実紗江さんの体、見せてくれよ」
「だめだめ。まずは俺が見てからだって言ってるだろ」
「そんなの一緒に見ればいいじゃないか」
「だから俺は一人で楽しみたいんだよ。実紗江さんの全てを一人でな。それから時雨にも見せてやるよ」
「ちぇっ。それっていつだよ」
「明日かな」
「え〜。明日って、それまでずっと一人で楽しむって訳かよ」
「いいじゃねぇか。これも俺の特異体質のおかげなんだから」
「そりゃそうだけどさ。明日なんて待てないって」
「明日はスーツでビシッと決めてきてやるよ」
「そんなこと言われてもなぁ」

ウェイトレスが持ってきたステーキを食べ終えた時雨が、グラスに入った水を飲みながら食い下がる。
しかし実紗江は首を縦に振らなかった。

「じゃあ店を出るか。金の心配はしなくていいからな」
「そう言ったからステーキを食べたんじゃないか」
「そりゃそうだな」

実紗江は代金を支払ったあと、まだ未練がましそうな表情をしている時雨と別れて家に帰った。

つづく