更衣室の外。
芝生の生えた広いスペースには、既にたくさんの学生達がデジカメや携帯電話を持ってコスプレ衣装を身に纏っている生徒の写真を撮っていた。
一緒に並んで取っている学生達もいる。
そんな中に飛び込んだ優子に、数人の男子生徒が気づき、そしてあっという間に大半の学生が気づいた。

「わ、すげぇ!」
「何あれ。ちょっとすごくない?」
「ねえねえ!写真取らせてよ」
「一緒に撮らせてくれよ」

などと、男子生徒のみならず女子生徒までが近づいてきた。
それほど優子のコスプレ姿がすごかったのだろう。

「え、う、うん。いいよ」

20人以上の学生が優子を取り囲む。

「俺が先だって」
「何だよ、俺が最初に声を掛けたんだぞっ」
「お前らうるせぇよ。俺が先だっつ〜の。ねえ、一緒に撮らせてくれよ」
「あ、抜け駆けするなっ!」

などと、写真を撮る順番を争っている男子生徒たち。
そんな男子生徒たちを見た優子は嬉しくて仕方がなかった。
優子を取り囲む生徒以外も、遠目で見ている生徒の多い事。
優子は一躍、この場のヒロインとなった――

「じゃ、じゃあ順番で……」

殺気立つ男子生徒たちがちょっと怖くなった優子は、そう言って順番に並ばせた。
もちろん、他の生徒達には端から無差別に写真を撮られている。

優越感。

こんな優越感を覚えたのは初めてだった。

「じゃあポーズをとってよ」
「え、こ、こう?」
「おお!」

優子が両手を腰に当て、足をクロスさせるように立つ。
すると、スタイルの良い優子の身体が、なお一層美しく見えるのだ。
高校生とは思えない足の長さ。そして大人びた肉付き。
元からなかなかのスタイルを持っている優子だが、女性らしさが表に出ているのは全てプラグスーツのおかげだった。

「じゃあ一緒に撮らせてよ」
「いいわよ」

次は男子生徒と並んでのショット。
嬉しそうに優子に寄り添っているのだが……

「きゃっ!」
「な、何だ?」

デジカメで写真を撮られる瞬間、優子は急に声を上げた。

「もうっ!お尻を触らないでよっ」
「えっ!?お、俺、触ってねぇよ」
「うそっ、今お尻を掴んだじゃない」
「つ、掴んでないって」
「だってお尻を触られた感じがしたんだもんっ!」
「そ、そんな事言われても……」

男子生徒はオロオロしながら立ちすくんでいた。

「触ってなかったぜ。だってコイツ、ずっと前で手を組んでいたじゃないか」
「え?」
「ほら、見てみろよ」

デジカメで撮った画像を見せられた優子。
確かに男子生徒の手は身体の前で組まれていた。

「なっ!」
「ほ、ほんと……でも……」
「気のせいじゃないのか?」
「う、うん……」

確かにお尻を掴まれた感触があったのだ。
でも、一緒に撮った男子生徒の手はお尻に届かないし、周りにいる生徒達との距離も十分にある。

(私の勘違い?)

自分でも興奮しているから、妙な錯覚を感じたのか?
そう思った優子は「ご、ごめんね。私の勘違いみたい」と言うと写真を撮り直し、別の生徒達と写真を撮っていった――


(やだっ!?ど、どうして?どうして……)

こんなにたくさんの人がいるのに、誰も気づいていない。
今も感じている。
お尻が誰かの手で揉まれている感触を。
そして、足を撫でられる不快感を。

次々に男子生徒たちが写真をねだる。
笑顔で応えていた優子だが、その表情は時間が経つに連れて微妙に変化し始めた。

「ふっ……んっ」

少し色気づいた吐息。
先ほどまでお尻を触られていた感触が、今度はお腹に移動した。
円を描くように撫でられている。でも、プラグスーツの表面上にはほとんど変化が無かった。
肌に密着している裏の生地が動いているように思えるのだ。

(な、何?このコスプレ衣装……ま、まるで全身を触られているような感じが……)

「はぁ、はぁ……あんっ!」

思わず目を細めて身体を抱きしめる。

「どうしたんだ?」

写真を撮ろうとしていた男子生徒に声を掛けられた優子。

「う、ううん。な、なんでもない……はぁ、はぁ」

何でもないことは無い。
お腹を触っていた感触が上に移動し、胸を触り始めたからだ。
よく見ると、微妙に生地が動いている。
まるで両手で胸を覆われているようだ。
優しく胸をなぞられると、うなじの辺りからゾワゾワと鳥肌が立つ感じがした。

(やだっ……何よこれ。こんなの……んうっ!)

優子はギュッと歯を噛み締めて、声が漏れるのを防いだ。
乳首が……乳首が摘まれたのだ。
信じられない事に、プラグスーツが乳首を摘んでいる。

「ふぅぅっ……はあ。ぁぁっ」

きゅっ!
きゅっ!
ふにゅっ!

「っ!……っ……っはっ……」

下半身がジンと熱くなる。
このプラグスーツ、明らかにおかしい。
まるで意思を持っているかのようにうごめく生地。
優子はたまらず「はぁ、はぁ。ちょ、ちょっとトイレっ!」と言って人垣を掻き分けると、両腕で胸を隠すようにしながら少し離れた校舎の中へと入っていった――