Ts・TS

主にTSFを取り扱った創作物と、
個人的な日記を掲載しています。
掲載している作品は
フィクションです。
実在の人物や団体などとは
関係ありません。

復讐の幽霊

復讐の幽霊(11)

久美はキッチンでお茶を飲んで深呼吸した後、自分の部屋に戻った。
すると、琢次郎が何食わぬ顔をしてベッドに寝そべっている。
その姿を見て、久美はグッと歯を噛み締めた。

「……お姉ちゃんの体から抜け出てきたの」
「えっ?何のこと?」
「……後でお姉ちゃんに聞けば分かる事だけど。あの様子じゃ、琢次郎が乗り移っている間の記憶がないだろうから」
「うっ……ご、ごめん」
「……どうして最初から素直に言わないのよ」
「だって……交渉成立したし」
「だからって、お風呂に入るお姉ちゃんの体に乗り移る事無いでしょ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺は一美さんの体に何もしてないって」
「しっかり裸を見たじゃないっ。お姉ちゃんの体なのに」
「で、でも久美ちゃんとの約束は守っているじゃないか。久美ちゃんが変な事しないでよって言ったから、俺は何も手を出してない」
「……何だか嫌だな。私、琢次郎を連れてきた事、ちょっと後悔してる」
「そ、そんな……」
「お母さんが違っても、お姉ちゃんはお姉ちゃんなのよ。それなのに……」

久美の目に涙が滲んでいた。

「ご、ごめん。な、泣かないでよ。俺っ……」
「……グスン」
「……ひ、久美ちゃん……」
「今は琢次郎と話したくない」
「……ご、ごめん」

琢次郎がふわりと近づくと、久美はそれを無視するかのようにベッドに俯けになって寝転んでしまった。
その様子を悲しそうな目をしながらじっと見つめる琢次郎。
そして何も言ってくれない久美。

「久美ちゃん……」

しばらく黙って見ていた琢次郎だが、全く動かない久美に「分かったよ」と一言告げると、スッと姿を消した。
シンと静まり返った部屋。
沈黙の後、久美が顔を上げると琢次郎の姿は無かった。

「……琢次郎?」

返事は返ってこない。

「琢次郎?何処にいるの?」

何度問いかけても、琢次郎の姿も声も聞こえなかった。

「……出てっちゃったんだ……」

いつも一人の部屋なのに、妙な寂しさを感じた久美であった――

復讐の幽霊(10)

「何処に行ったのよ」

階段を昇りながら考える久美。
やっぱり一美に乗り移っていたのだろうか?
久美と話していた一美に不審な点はなかった。
でも、あのくらいの会話、琢次郎にだって簡単に出来るだろう。
一美の体で裸になり、風呂場の中で――

「やっぱり琢次郎が乗り移っているかもしれない」

久美はまた1階に降りると、気づかれないように脱衣室の扉をゆっくりと開けた。
その隙間から中を覗いてみると、既に一美の姿は無い。
どうやらバスルームに入っているようだ。

「…………」

そっと扉を閉めるとそのままバスルームのすりガラス扉に近づき、中の様子を伺う。
一美は気分が良いのか、鼻歌を歌っているようだ。
ただ、その鼻歌は一美が普段話しているような男性アイドルのものではなく、あまり聞かない女性アイドルの歌のようだ。

「はぁ〜。やっぱり風呂ってサイコー!」

湯船に浸かっているのであろう。
嬉しそうな声で、そんな言葉を口にしていた。

「風呂なんてどのくらい入ってなかったかなぁ。こんな感触だったっけ」

その言葉を聞いた久美は、琢次郎が乗り移っていると確信したようだ。
すりガラスの扉をガラリと開き、湯船に浸かっている一美を見つめた。

「琢次郎でしょ!お姉ちゃんの体から出てって!」

一美は、一瞬ハッとした表情をしたが、すぐに笑顔を作り直した。

「あら久美。どうしたの?やっぱり私とお風呂に入りたいの?」
「お姉ちゃんの真似しないで。琢次郎なんでしょ」
「琢次郎?琢次郎って誰よ」
「もうっ!早くお姉ちゃんの体から出なさいよっ!」
「ちょ、ちょっと。何訳の分からない事言ってるの?」
「琢次郎がお姉ちゃんの体に乗り移ってるんでしょ。分かってるんだから」
「……プッ!」

真剣な顔をして問いただす久美に、一美は思わず噴出してしまったようだ。

「な、何笑ってるのよ」
「だって久美、すごい顔してるんだもの」
「それは琢次郎がっ!」
「だからその琢次郎って誰なのよ。久美の彼氏?」
「なっ……」
「私、久美が言ってること、本当に分からないよ。私が久美の部屋に行った時から変な事聞いてくるし、バスルームにまで押しかけてきて」
「そ、それは……」
「久美が何を言いたいのかよく分からないけど……とりあえず一緒にお風呂に入らない?」
「……う、ううん」
「だったら、寒いからその扉、閉めてほしいんだけど」
「…………」

(本当に琢次郎じゃないの?)

「ね、ねえお姉ちゃん」
「何?」
「さっき鼻歌、歌ってたよね」
「えっ。う、うん」
「あれ、誰の歌なの?」
「あれは……私の好きな女性グループの歌よ」
「お姉ちゃん、普段は男性アイドルの曲しか聞いてないんじゃないの?」

ピクピクッと眉毛を動かした一美は、返答するのに時間が掛かった。
でも、

「たまには聞くのよ。私が女性グループの鼻歌を歌うの、おかしかった?」
「……うん」
「そ、そっか。じゃあ男性アイドルの歌を歌おうかな」

そう言うと、一美は久美も知っている男性アイドルの鼻歌を歌い始めた。
結構新しい曲だ。

「……お姉ちゃん」
「何?」
「訳が分からない事を言うけど、とりあえず聞き流してね」
「うん」
「……琢次郎。もし今お姉ちゃんの体に乗り移って私を騙しているのなら、私は絶対に協力しないから。二度と私の前に現れないでね」
「えっ……」
「それだけ。ごめんね、お姉ちゃん」

久美はそれだけ言うと、バスルームから出て行った。

「…………」

一人湯船に浸かったままの一美は、ポリポリと頭を掻くと、

「ふぅ〜」とため息をついたのだった――

復讐の幽霊(9)

「もう行っちゃったの??」

あまりに早い行動に久美は慌てた。
交渉が成立したからって、勝手に行動されては困る。

「まさかもう?」

と呟いたとき、ガチャッと扉が開いて一美が顔を覗かせた。
部屋着に着替えていた一美の手には、赤いパジャマの上下とバスタオル、そして下着があった。

「久美、先にお風呂、入ってくるからね」
「あっ、お姉ちゃん。うん」
「久美も一緒に入る?」
「えっ、いいよ」
「じゃあお先ね」
「うん」

一美はクスッと笑いながら扉を閉めた。

「それよりも琢次郎、何処に……って」

ハッとした久美。

「ま、まさか……今のって!」

急いで扉を開けて階段を見たが、そこにはもう一美の姿はなかった。

「ちょ、ちょっとっ。まさかお姉ちゃんに乗り移ってお風呂に入るわけじゃないでしょうねっ!」

転げそうになりながら階段を下り、脱衣室の扉を開いた。
そこには、まだ普段着姿でコンタクトレンズを洗っている一美の姿があった。
急に入ってきた久美を、一美はビックリした表情で迎えた。

「ど、どうしたの久美」
「お、お姉ちゃん!?」
「な、何よ」
「……お、お姉ちゃん?」
「だから何?」
「えっ……だ、だから……」

一美は怪訝な顔をした後、クスッと笑って

「一緒に入りたかったの?」と尋ねた。

「う、ううん。そうじゃなくて……そうじゃないんだけど」
「だったら何なの?」
「……な、何でもない」
「クスッ、変な久美。服を脱ぐから扉、閉めてくれない?」
「えっ。あ……ご、ごめん」

久美は慌てて扉を閉め、脱衣室を出た。

た、琢次郎……まだお姉ちゃんに乗り移ってないの?

そう思いながら脱衣室を後にした久美。
その頃、脱衣室では普段着の上を脱ぎ、ブラジャーを着けた上半身を鏡越しに見る一美がいた。

「……クスッ」

一美はニタニタといやらしい笑いを浮かべていた――

復讐の幽霊(8)

「もうご飯食べたの?お母さんから連絡があったでしょ」
「うん。お姉ちゃんは?」
「友達と食べてきた。今日は早く寝るからお風呂のスイッチ、入れたわよ」
「うん……ねえ、お姉ちゃん」
「何?」
「……私の周りに何か見えない?」
「え?何かって?」
「だからその……」
「……また幽霊とか?」

一美は「ふぅ〜」とため息をつくと、部屋の中をグルリと見渡した。

「あのねぇ〜。全然見えないんだけど」
「そ、そうなんだ」
「いるの?幽霊が」
「う、ううん。多分いないと思うけど」
「何それ。久美に見えないものが私に見えるわけ無いじゃないの」
「そ、それもそうだね」
「変な久美。じゃあお風呂入れるね」
「うん」

茶色の長い髪を掻き上げた一美は、そのまま隣にある自分の部屋に戻っていった。

「俺のこと、全然見えてなかったみたいだな」
「うん。元々お姉ちゃんには霊感なんてないから」
「ふ〜ん。それにしても……綺麗な人だった」
「……うん。私には全然似てなかったでしょ」
「う〜ん、そうだなぁ……」

基本的に顔の骨格が違うような気がする。
少し丸みを帯びた久美に対し、姉の一美は面長だ。
その顔は大人の女という雰囲気を漂わせていた。
もちろん、体の線を強調する白い長袖Tシャツにスリムタイプのブーツカットジーンズという服装も、
彼女のプロポーションのよさを強調してとてもセクシーに見えた。
目が悪いのか、コンタクトレンズをしているようだ。
それは普通のコンタクトレンズではなく、おしゃれな茶色いカラーコンタクト。
そのコンタクトが、一美を少し日本人から遠ざけているような感じ。

「だってお姉ちゃん……私の本当のお姉ちゃんじゃないもの」
「えっ……そ、それって……」
「うん。お母さんが違うんだ」
「……そ、そうなんだ」
「私のお父さんは一度離婚してるんだ。で、お姉ちゃんを引き取ったの。その後、二度目の結婚で今のお母さんが私を生んだの」
「なるほど。じゃあお父さんとお母さんは久美ちゃんの本当の親なんだね」
「うん。だからお姉ちゃんと血が繋がっているのはお父さんだけ」
「ふ〜ん……」
「でも、みんな家族として仲良く生活してるよ。時々喧嘩もするけれど、私の大事なお姉ちゃんなの」
「……そっか」
「うん。でもね、結構お姉ちゃんって秘密主義なんだ」
「秘密主義?」
「うん。私、まだ一度もお姉ちゃんの部屋に入った事ないし」
「え〜?そうなの。だって、隣の部屋なのに?」
「お姉ちゃんが絶対に入らないでっていうから。お母さんも入ってないんじゃないかな」
「ふ〜ん。でも、さっき入って来たけど別段変わった様子は無かったけどな」
「だと思うよ。単に自分の物を勝手に見られたり触られるのが嫌いなだけみたいだから」
「潔癖症とか?」
「じゃないと思う。だって共通で使う物は使ってるし、結構大雑把なところもあるし」
「ふ〜ん。後でもう一度見てこようかな」
「あまり見ない方がいいよ」
「大丈夫だって。俺のこと、全然気づいてないし」
「それはそうだけど……」
「久美ちゃんも気になるんじゃないの?一美さんの部屋」
「気にはなるけど、別に……」
「俺が一美さんに乗り移れば自由に見ることが出来るけどな」

琢次郎は、ちょっといやらしい目つきで笑いながら久美を見た。

「そ、そんな事しなくてもいいよ。そこまで見たいと思わないし。それに琢次郎、もしかしてお姉ちゃんの体を狙ってるんじゃないでしょうね」
「ちょっとね。一美さんって美人だし、一度乗り移ってみたいな」
「ダメよ。私のお姉ちゃんなんだから」
「悪戯しなければいい?」
「そ、それでもダメよ……」
「どうして?」
「だ、だって……勝手にそんな事しちゃ、いけないんだから……」
「じゃあ交換条件って事でどう?」
「交換条件?」
「久美ちゃん、明日はソフトボール部の練習試合があるんだろ」
「そ、そうだけど」
「さっきも話したけど、俺も大学の野球部で久美ちゃんと同じセカンドを守ってたんだ。ライバルと競っていた事もあって、結構練習してたんだよ。で、自分で言うのもなんだけど、かなり上手いと思う」
「……で」
「でさ、明日試合に勝てるように……」
「私に乗り移って代わりにセカンドを守ってあげると」
「その通り」
「私、自分で言うのもなんだけど、結構上手いと思うんだけどな」
「……そ、そうなんだ」
「……琢次郎ほどじゃないかもしれないけど」
「そ、そっか……じゃ、じゃあそんな事、無理にしなくてもいいよな」
「そう。でも……」
「でも?」
「明日対戦するのは、まだ一度も勝った事ない高校なのよねぇ」
「……なるほど。じゃあ俺が別のやり方で手を貸してあげるよ」
「別のやり方?」
「そう。例えば……」

琢次郎は久美のベッドに胡坐をかいて座ると、嬉しそうに自分の考えを話した。
それを聞いた久美は、ちょっと顔を赤らめながらも――コクンと頷いたのだった。
ちょっと卑怯な――というか、反則だけどそうしなければ勝てないくらい強い相手。
後ろめたい気持ちを感じながらも、勝ちたいという願望に推されたようだ。
まあ――練習試合だし。

「じゃあ明日の試合、久美ちゃんの手助けをするということで!」
「……お、お姉ちゃんに変な事、しないでよ」
「分かってるって!」

言うのが先か、琢次郎は久美の目の前からスッと消えてしまった。

「あっ!た、琢次郎!?」

そう叫んだ声は、久美しかいない部屋に微かに響いただけだった――

復讐の幽霊(7)

「ただいま」

と言っても、誰も返事をしてくれない。
やはりまだ両親は帰ってきていないようだ。
なので、「おかえり」と琢次郎が後ろから返事をした。
廊下の電気をつけてキッチンに向かった久美は、冷蔵庫に入っていた牛乳を飲むと二階にある自分の部屋へ上がった。

「へぇ。綺麗に片付いてるね」
「もちろん。だって私、片付けるの好きだもの」
「ふ〜ん。俺は片付けるの、すごく嫌いだったな。大学の寮に入ってたんだけどさ。あそこは酷かったよ。俺の部屋だけじゃなくて、どの部屋も」
「男臭くてやな感じね」
「まあ、それが良かったんだけどさ。仲のいいヤツが女を連れ込んだ事があって、寮長にえらく叱られていたこともあったなぁ。あの頃が懐かしいよ」
「ふ〜ん」

久美から離れた琢次郎が、部屋の中をグルグルと見回っている。

「ねえ。私、今から着替えるから外に出ていてくれない」
「え、ああ。そうだね、幽霊と言っても男だし」
「当たり前じゃない。電車の中であんないやらしい事して」
「まあまあ」

琢次郎は両手を前で振ったあと、すぅ〜っと壁の中に消えていった。

「ふぅ〜。そうだ、琢次郎は男なんだ。男を簡単に部屋に入れても良かったんだろうか……」

今更そんな事を呟いた久美は、セーラー服を脱いで下着姿になると、タンスの引き出しから部屋着を取り出した。
白いスウェットの上下。
そのズボンを穿こうとしたとき、股間に少しの湿り気を感じた。

「…………」

きっと、琢次郎が電車の中で女性にしていた悪戯に体が反応してしまったのだろう。
その事実を隠すように、久美は急いでスウェットのパンツを引き上げた。
そしてトップを着込むと、少し身なりと整えた。

「……いいわよ」

その言葉に、また壁からヌッと琢次郎があわられる。

「ねえ、隣の部屋って誰の?」
「お姉ちゃんの部屋」
「へぇ〜。お姉さんがいるんだ」
「うん」
「何歳?」
「私の4つ上。21歳だけど」
「じゃあ俺と同い年なんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。琢次郎って21歳かぁ」
「そうだよ。それよりもお姉さん、久美ちゃんに似てるの?」
「えっ……。ううん、似てないよ。似てるって言われたことはあるけど、多分気を使ってるんだ」
「そうなんだ。名前は?」
「一美」
「一美さんかぁ」
「どうして私は【ちゃん】付けで、お姉ちゃんは【さん】付けなのよ」
「だって俺と同い年だろ」
「幽霊で1年過ごしたんだから、本当は22歳なんじゃないの?」
「……そ、そうか。そうかもしれない」
「幽霊になって、頭のネジが緩んでるんじゃない?」
「う〜ん、そうかもなぁ……って、久美ちゃんに言われたくないな。これでも俺は、某有名大学生だったんだから」
「うそ……そ、そうなの?じゃあ頭いいんだ」
「まあな。そうだ、俺がとり憑いている間は勉強教えてあげるよ。高校生の勉強ぐらい朝飯前だからさ」
「ほんと!それってすごくラッキ〜!」

こういう形でいい事があるとは思っていなかった久美は、結構嬉しそうだ。
実は久美、学校では成績のよい方ではない。
部活に熱心なせいか、勉強にまで手が回らないのだ。
いや、きちんと勉強している生徒だっているのだから、きっと久美の努力が足りないだけ――だろう。

「じゃ、じゃあ早速……」

久美はそそくさと勉強道具を机に並べると、今日先生に言われた宿題を琢次郎に見せた。

「これなんだけど」
「どれどれ」

琢次郎は久美の横に立って、じっと問題を見つめた。

「ふ〜ん、こんな問題が出るんだ。結構難しいなぁ」
「出来ない?無理?」
「いや、簡単」

にっこり笑いながら、久美にも分かるように問題を解いてゆく。
まるで家庭教師がついている感じ。
その分かりやすい説明に感心しながら、久美は問題を解いていった。

「すご〜い、もう出来ちゃった」
「良かったね、久美ちゃん」
「うん、ありがとう琢次郎。やっぱり大学に行っていただけの事はあるね」
「まあね」
「琢次郎が一緒にいてくれたら、学校のテストも勉強しなくてもいいって事よね。これは楽勝楽勝!」
「でも俺は恨みをはらしたらいなくなるんだ。やっぱり自分で勉強した方がいいんじゃないか?」
「それはそうだけど……」
「俺がいる間、色々と教えてあげるよ」
「……うん」

その後、久美が勉強道具を片付けいると、玄関の扉を開ける音がした。

「あ、お姉ちゃんが帰ってきたんだ」
「そうなの?」
「うん。多分」

その会話の後、階段を上ってくる足音がして――
コンコンと久美の部屋の扉をノックする音がした。

「久美?帰ってるの?」
「うん。開いてるよ」

久美が返事をすると、扉を開いて姉の一美が入ってきた――

復讐の幽霊(6)

琢次郎の体が女性の中に消えた。
ビクッ、ビクッと体を震わせて硬直していた彼女だが、すぐに体の力が抜けたようだ。
そして、「ふぅ〜」と大きく息を吐いた後、くるりと体を反転させて久美に座っている前に歩いてきた。

「も、もしかして……琢次郎?」

目の前に立っている女性を見上げて、久美は呟いた。
すると女性はにっこりと笑って、コクンと頷いたのだ。

「……憑依……したんだ」
「うん。今は彼女の体、完全に俺が支配してる。やっぱり彼女、すごく感じてたみたいだな。下半身が熱くなって疼いている」

そう言って、タイトスカートの上から下腹部を撫でた。
その左手の薬指には、プラチナの指輪が光っていた。

「……信じられない……」
「誰も信じてくれなかったよ。俺がこうやって他人の体に憑依して話しかけても。幽霊の状態だと逃げてゆくし、こうやって生身の人間に憑依して話しかけたところで、俺の存在を信じてくれない。とても寂しかったよ」
「…………」

琢次郎に憑依された女性は、本当に寂しそうな表情で話している。

「……あ、あの。今ってその女性の意識って……」
「ああ、俺が無理矢理眠らせてる。別に眠せないで体を共有する事も出来るけどね。と言っても、俺が体を動かすのを見ているだけなんだけど」
「ふ、ふ〜ん」
「俺、もし新井川かほりに憑依できたら、あいつの意識を残したまま階段から落ちてやろうと思ってるんだ。体を勝手に動かされて、自ら階段を転げ落ちる恐怖を味あわせてやるために」
「…………」

久美はその言葉に、どう返事をすればよいか戸惑った。
しばらく会話の無い時間が過ぎ、到着した駅。
数人の乗客が降りると、久美の隣が空いた。
その席に無言で座り、ショルダーバッグをタイトスカートの上に乗せた琢次郎。
部活帰りの久美とは違い、琢次郎が憑依している女性からは香水か、あるいはシャンプーの香りがほのかに漂ってくる。

「ごめんな久美ちゃん。嬉しくてちょっと調子に乗りすぎたな。それに嫌な話もしたし」

琢次郎は女性の顔で、そして女性の声で話しかけてきた。

「……ううん。琢次郎が寂しかったの、分かるから。色々な幽霊、見てきてるし」
「……ありがとう。俺、今日みたいな日が訪れるの、ずっと待ってたんだ」
「…………」
「久美ちゃん」
「……何?」
「しばらくの間、久美ちゃんにとり憑いてもいいかな?」
「…………」
「俺が新井川かほりに復讐できるまで。それまでの間だけ」
「……いつ復讐するの?」
「……分からない。でも出来るだけ早く」
「……そっか……うん。いいよ」
「え?」
「いいよ、私にとり憑いても」
「ほ、ほんとに?ほんとにいいのかい?」

女性の表情がパッと明るくなる。
そして、琢次郎は久美の手を取ると、何度も何度も握り締めた。

「ありがとう、久美ちゃん!」
「は、恥ずかしいじゃないの」
「えっ。あ……ご、ごめん」

傍からは、女性が嬉しそうに久美の手を握り締めてお礼を言っているように見える。
女性のまま、コホンと軽く咳払いをした琢次郎は、「じゃあこの女性から離れるよ」
そう言って、ヌッと女性の体から出てきた。
ピクンと震えて目を覚ました女性は琢次郎が憑依していた間の記憶が無い様で、どうして席に座っているのか分からない様子。

(あまり恥ずかしい事はしないでよ)
「ああ。極力そうするよ」

琢次郎はにっこり笑うと、座っている久美の後ろに背後霊の様に漂った――

復讐の幽霊(5)

「だって俺、久美ちゃんがいないと誰にも相手されないしさ」
(そんな事言われたって困るよ)
「そんな事言わないでさ、お願いだよ」
(だってぇ)
「……あ、そうだ。それなら面白いもの、見せてあげるよ」
(お、面白いものって?)
「まあ見ててよ」

琢次郎はニヤニヤしながら、久美の前に座っているおじさんの横に立った。
そして、琢次郎が人差し指でおじさんの鼻を上に向けたのだ。
すると、おじさんはブタの顔みたく面白くなった。

「プッ!」

思わず噴出してしまった久美。
何が起きたのか分からないおじさんは困惑している様子。

「どう?面白いだろ」
(そんな事も出来るんだ)
「1年間、寂しかったから……幽霊になってどんな事が出来るのか色々試していたんだ。俺って結構怨念強いみたいだから実際に人に触れる事が出来るみたい」

そう言って、久美の肩をポンポンと叩いた。
確かに、肩には叩かれた感触がある。

(ふ〜ん)
「結構思ったように出来るんだ。それで色々悪戯もしたけどね」
(悪戯?今みたいに?)
「そう。でさ、俺も男だから……」
(……いやらしい事もしたんだ。信じられない)
「誰も相手にしてくれないんだ。それくらいの特権はあってもいいと思うんだけどな」

笑いながら、今度は久美の斜め前に立っている若い後姿の女性に近づいた琢次郎。
肩からショルダーバッグを提げてグレーのスーツを着ている彼女は、まだ高校生の久美にとってはうらやましいプロポーションだ。
膝上のタイトスカートから伸びる足が細くて嫉妬する。
黒くて長い髪も素敵だし、スカートが模る丸いお尻もセクシーだ。
そんな彼女の後ろに立った琢次郎は、何やら悪戯を始めたようだ。

「わ!」

久美はビックリした。
琢次郎の両腕が、女性のスーツの背中にめり込んでいるからだ。
しかし、よくよく考えてみると琢次郎は幽霊。
実体の無い幽霊の腕が突き抜けているのは不思議ではない――のだが――
彼女はビクン、ビクンと体を震わせると、体を丸めるようにして両腕を胸の前でクロスした。

(何……してるの?)

久美が尋ねると、

「うん。今、後ろから彼女の乳首触ってるんだ」

とあっさり答えた。

(えっ?)
「俺の腕は彼女の体を突き抜けたあと、指先だけ実体化してるんだよ。直接ブラジャーの中にある乳首を触ってるんだ」
(なっ……)

し、信じられない事を!

「もう硬くなってる」
(や、やめなさいよっ!そんな事したら……)

久美は真っ赤な顔をしながら心の中で叫んだ。

「でも彼女も気持ちよさそうだから」
(そんな事無いってっ!)
「そうかな?」

乳首を弄られている彼女の表情は見えないが、ギュッと体を抱きしめている仕草は――確かに感じているように見える。

(やだ……ちょ、ちょっと。そんな事……)

琢次郎は久美を見てクスッと笑うと、背中から右腕を引き抜いた。
そして――

(なっ!)

事もあろうか、タイトスカートのお尻に腕をめり込ませたのだ。

「ああっ!」

彼女は周りの人に聞こえるくらいの喘ぎ声にも似た声を出すと、ギュッと足を閉じて顎を突き出した。
周りの乗客が一瞬彼女に視線を集めたが、彼女はグッと何かを我慢するように平静を装った。

「や……ぁ……だ……」

ビクビクッと体が震えて、硬直しているようだ。

「今、後ろからクリトリスを触って膣の中に指を入れてるんだ」
(…………)

久美はあまりの光景に、ただ見つめている事しか出来なかった。
電車の中で幽霊の琢次郎に悪戯されている女性。
しかも、素直に痴漢されているのではない。
周りの人が気づかないのを良いことに、直接感じるところを弄られているのだ。

「ぁっ、あっ……やっ……んっ」
「すごく感じてるよ。パンティの中、グチョグチョになっている」
(……はっ!だ、だからもうやめなさいって!)

あっけに取られて見ていた久美は、ハッと我に返ると悪戯している琢次郎に言った。

「もうちょっとだけ。彼女、気持ちよさそうな顔している」
(だから……えっ!?)

琢次郎が――琢次郎の体が女性の体にめり込んでゆく。

(ちょ……)

そして――

復讐の幽霊(4)

彼は大学3年生で、学生野球をしていた。
そして彼も久美と同じくポジションはセカンドだったが、セカンドにはもう一人ライバルがいて、そのライバルとは仲が良くなかったらしい。
ただ、琢次郎の方が少し能力が上だったようで、監督は琢次郎をレギュラーとして選んだ。
それが悔しかったのか、ライバルは琢次郎に罠を仕掛けた。
ライバルは、ライバルの彼女『新井川かほり』という女性を使って琢次郎を陥れたのだ。
琢次郎は、かほりがライバルの彼女だったとは知らなかった。
だから、その美貌を武器に迫ってきた彼女を拒む事が出来なかったのだ。
そして卑劣な事に、かほりは琢次郎を公園に誘い出し、長い階段の上から突き落としたのだった。
腕を骨折するくらいだろう――そう思っていたらしい。
しかし琢次郎は頭の打ち所が悪く、その後、二度と起き上がることはなかった。
事の重大さに驚いたライバルは、警察沙汰になる事を恐れて何も言わなかったが、
ずっと琢次郎へのお詫びの気持ちを抱いて生きている。
もちろん大学野球もやめた。
それに比べて、殺人を犯した彼女は――

「私知らないわよ。それに彼は運が悪かっただけじゃない。あんなくらいで死ぬ方がバカなんじゃない。
まったく……ひ弱だからこんな事になっちゃうのよ。逆にムカつくわ!」

と言う感じで、まったく反省の色がなかった。
琢次郎自身、ライバルについては、もう何とも思っていない。
でも、こんな事をほざく彼女、新井川かほりは何とかして呪い殺してやりたい。
そう思うのだが、代々伝わる霊媒師の家柄。
近づいて呪ってやろうと思っても近づく事さえ出来ないのだ。
家には絶対に入れないから、せめて彼女が密かに持ち歩いている呪布などを手放させる事が出来れば。
それを手伝ってくれる人が現れれば。
彼は彼女を呪い――いや、正確には彼女に憑依して、彼と同じ運命、すなわち階段から落として殺す事が出来るのに。

――そういう考えらしい。

「だからさ。俺に協力して欲しいんだ。彼女を、彼女を俺と同じ目に合わせたい」
(だからってねぇ。私が人殺しに手伝いをするなんて)
「……それは分かってる。でも、呪い殺すのは俺だし、直接久美ちゃんが手を汚す事も無いんだ」
(そうは言ってもねぇ……って、どこまで付いてくる気?)

すでに食べ終わり、電車の中。
琢次郎は長椅子の端に座っている久美の横にしっかりと立っていた――

復讐の幽霊(3)

「こうやって話が出来る人っていうか、聞いてくれる人って俺が死んでから一年間、全然いなかったんだ。俺の事を見える人は何人かいたけど、皆怖がって逃げるし」
「……そりゃあんな顔して睨みつけられたら誰だって逃げたくなるわよ」

無視していようと思ったが、とりあえず少しの会話くらいならしてやろうと思ったようだ。

「違うよ。最初はもっと優しい顔してたんだ。でも、ずっと逃げられ続けているうちに悔しくなって……何時しか恨めしいと感じるようになったんだ」
「ふ〜ん」
「でも、君は違ったね。僕を怖いと思わなかったし……睨み返してきた。あまりに違う対応されたから、思わず笑っちゃったよ。あははははっ」

よほど話せたのが嬉しかったのだろうか、琢次郎の声はとても弾んでいた。
この世に留まり、誰にも相手にされなかった1年間。
きっと彼にとっては辛くて長い時間だったのだろう。
それは17歳の久美にも分かった。
ふと顔を上げると――

「…………」

こうして近くでじっくり見ると、ちょっとカッコいいかもしれない。
久美よりも少し年上、大学生くらいだろうか?
あっさりした顔立ちでスポーツ狩り。
きちんと椅子に座っていると仮定すると、座高の高さから考えて身長は180センチ以上あるだろう。
視線を合わせてくれたのが嬉しいのだろうか、琢次郎はニコッと笑うと、

「久美ちゃんってすごく可愛いよね」

と言ってテーブルに両肘をつき、掌に顎を乗せた。
幽霊なのに器用だ。

「ゆ、幽霊に可愛いって言われてもねぇ」

顔を紅くした久美。

「そうやって照れるところが特に可愛いな」
「も、もう。からかわないでよ」

膨れっ面で視線を反らせると、周りにいる客達がじっと久美を見ていた。
他人には琢次郎の姿が見えない訳で――
どうやら久美はハンバーガーを食べながら独り言を呟いている、変な女の子に見えているらしい。

「あ……」
「声を出してしゃべらなくてもいいよ。俺と久美ちゃんは心の中で会話する事が出来るから」
(それならそうと初めから言ってよっ!私、変な女だって思われちゃったじゃないのっ)
「ごめんごめん、そういうのも別に気にしないのかと思って」
(気にするわよっ!)

更に赤面して俯いた彼女に、また琢次郎が微笑んだ。

「俺、久美ちゃんの事がほんとに好きになっちゃった」
(勝手に好きにならないで)
「ねえ、俺の怨念、はらさせてよ」
(はぁ?どうして私が)
「だって、こうやって話が出来るのは久美ちゃんだけだし」
(怨念って、誰かを恨んでるんでしょ)
「そう」
(じゃあその人を呪い殺せばいいじゃないの)
「う〜ん。実はそうしたいんだけど……彼女は霊媒師なんだ」
(霊媒師?……じゃあお払いされて成仏させられるって事?)
「うん。まあ、成仏させてくれるから嬉しいんだけど……やっぱりほら、怨念はらさず成仏するってのもね、何か悔いが残るでしょ。しかもそれが怨念を抱いている相手なら尚更」
(……さあ)
「残るんだよ。実はさ……」

琢次郎が言うには、こうだった―――

復讐の幽霊(2)

久美には少し霊感があり、小さい時から幽霊などが見えていた。
中には、今見つめられているよりも恐ろしい幽霊に遭遇した事もある。
そんな久美にとっては、このくらいの事、何とも思わないのであった。
とはいえ、幽霊に睨みつけられながら食べるのもあまり嬉しくない。

久美は食べるのをやめると、じっとその睨みつけている幽霊を逆に睨みつけてやった。
別に幽霊と睨めっこしたかったわけではない。
睨み返せば何処かに消えてくれるかな、そんな安易な考えだった。
そして10秒ほど睨みつけていただろうか?
睨みつけていた幽霊はスッと姿を消した――訳ではない。
眉がピクッ、ピクッと動き出すと、急に表情が変化した。
あの恐ろしい顔つきがウソだったかの様に陽気な表情になり、ケラケラと笑い始めたのだ。

「はぁ?」

訳の分からない久美に、幽霊はしばらく笑い続けていた。
そして、笑い疲れたのか、はぁはぁと苦しそうに息をしながら彼女に近づいてきた。
そこには、おぞましいオーラは微塵も感じられない。

「君、面白いね」
「……はぁ?」
「名前、何ていうの?」
「……み、水原……久美」
「久美ちゃんか、可愛い名前だね」
「……あなたは?」
「俺は石峰琢次郎(いしみね たくじろう)。ここ、座ってもいいか?」
「……うん」

石峰琢次郎と名乗った幽霊は、スポーツバッグの置いてある席に座った。
正確には、スポーツバッグに腰までめり込んでいる状態。
まあ、幽霊だから実態はないので当たり前か。
それにしては、椅子にはちゃんと座っている様子。

「食べなよ。冷めるから」
「……言われなくても食べるわよ」
「クスッ。君ってほんとに面白いね」
「幽霊に面白いって言われてもね……」
「俺のこと、怖くないの?」
「別に。幽霊なんて慣れっこだし」
「だろうね。君って結構霊感ありそうだから」
「…………」

久美は目の前にいる琢次郎と視線を合わさないようにハンバーガーを食べた。
大きなガラス窓が映し出す街道の景色は既に暗く、蛍光灯の白い光を受けた店内が薄っすらと映し出されている。
久美が座っているテーブルも映っているが、琢次郎の姿は映っていない。

「俺、君となら話せると思ったよ」

会話を始めた琢次郎だが、久美は黙々とハンバーガーを食べている。

「うん、食べながらでいいから聞いて欲しいんだ。俺さ……」

別に聞きたいと思っていない久美は無視しているつもりだったが、琢次郎は嬉しそうに身の上話を始めた――

復讐の幽霊(1)

「ハンバーガーセットください」
「お持ち帰りですか?」
「いえ」
「お飲み物は?」
「アップルジュース」
「かしこまりました。会計480円になります」

随分と暗くなった部活帰りの道、水原久美(みなはら ひさみ)はハンバーガー屋によった。
同じ女子ソフトボール部の友達は先に帰り、久美一人。
今日は母親の帰りが遅いという事で、ハンバーガーセットが彼女の夕食だ。
親の都合上、たまにこういう日があるが、久美にとっては慣れっこなので何とも思わない。
夕食まではまだ少し早い時間。店内には久美が座って食べる席の余裕があった。

「ありがとうございました」

店員からトレーに乗ったハンバーガーセットを手渡されると、肩から抱えたスポーツバッグを揺らしながら空いている二人席へ移動した。
トレーをテーブルに置き、空いている席にスポーツバッグを乗せる。
この大きな群青色のスポーツバッグは部活で皆が使っている学校指定の物だ。
明日は土曜日。
学校は休みだが、別の高校に練習試合に行くので自分の荷物は持って帰らなければならなかった。
ユニフォームにグローブ。スパイクにヘルメットなど。
椅子の面積には入りきらないスポーツバッグは、左右に少し垂れている感じ。
まあ、他の客が横を通るには問題ないだろう。

「はぁ……」

部活ではセカンドを守る久美、今日は先輩のノックに体中の筋肉を使い果たした感じだった。
体が重いというのはこの事だろう。
男子ならこれくらいなんてこと無いんだろうか?
それとも、動きが大雑把だから余計に疲れるのか?
そんな事を思いながらジュースのカップに突き刺したストローを咥えたあと、ポテトを食べ始めた。
身長164cm。体重は――46キロだから別に恥ずかしく思わない。
本当は髪を伸ばしたいけれど、ソフトボールをするには邪魔なので男子のように短く切っている。
それでも友達から小顔だと言われている点は素直に嬉しい。
毎日の様に運動しているせいか、こうやってカロリーの高いものを食べていても太らない。
というか、服の上から見ると、脂肪よりも筋肉が付いて骨太な感じがする。
だから、顔立ちはいいのにあまり男子生徒に声を掛けられない。

私だって、脱いだらすごいんだから。

それが彼女の本心だった。
いや、実際にはしっかりと女子高生の曲線を描く体なのだ。
まだ異性の前で見せた事は無いけれど。

「…………」

無言で食べる久美。
一人なので、別に独り言をいう事もないのだが、彼女が黙っているのにはもう一つ理由があった。
彼女の席から少し離れた窓際。
そこからじっと久美を見つめている視線があった。
その視線は、久美が店に入ってきた時から注がれている。

「はぁ……」

そんなに見つめられたら、美味しく食べられない。
その視線がかっこいい男性からなら良かったのだが――いや、確かに男性なのだが――

彼女を見つめていたのは、眉間に皺を寄せ怨念を抱いた目つきをしている恐ろしい幽霊だったからだ――
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