「仁伍って……」
「ああ、信じられないかもしれないけどさ。俺、姉貴の体を乗っ取っているんだ。さっき部屋から持って出た薬があっただろ。アレって幽体離脱できる薬なんだ。で、魂の状態になって姉貴の体に入り込んだ訳。すごいだろ」
「マ、マジで……吉沢なのか?」
「証拠を見せてやろうか? 俺の体、姉貴の部屋に置いたままなんだ」
 吉沢の姉ちゃんは体にバスタオルを巻いたまま、自分の部屋に案内してくれた。女性らしく、お洒落で整頓された部屋。可愛らしいピンクの布団が敷かれたベッドに吉沢の体が横たわっているのには違和感を覚える。死んでいるのかと思うほど生気が感じられない。でも、近づいてみると微かに息をしているように思えた。

「魂が入っていないからな。いくら体を叩いても目を覚まさないぞ」

 そう言われ、吉沢の肩を大きく揺すってみたが、全く反応が無い。これが魂の抜けた体なのか――って事は、やっぱり姉ちゃんには吉沢の魂が入っているんだ。

「信じたか?」
「……嘘みたいな状況だけどな」
「俺も半信半疑だったけど、こうして姉貴の体を自由に操れるんだ。信じるしかないだろ!」
「ああ。でも……すごいな。他人の体を乗っ取って操るなんて……。お前の姉ちゃん、意識は無いのか?」
「無いみたいだな」
「じゃあさ、お前の姉ちゃんの魂は体からはじき出されて何処かに行ってしまったのか?」
「いや、体の中にある。俺の魂が強引に姉貴の魂を封じ込めているっていうか、そうなっちゃったっていうか……。多分、俺が抜け出たら元に戻るんじゃないかな」
「へ、へぇ〜。あ、あのさ。俺もお前の姉ちゃんに乗り移れるのか?」
「薬を飲めばな。でも、お前が買える様な安いもんじゃないよ」
「そ、そうなんだ。そ、それより吉沢。どうしてお前、姉ちゃんの体を乗っ取ったんだよ」
「なあ加藤。何かさっきから俺の姉ちゃん姉ちゃんって、回りくどい言い方をするよな。面倒だから名前で呼べよ。敏美だから」
「いくらお前の姉ちゃんだからって、呼び捨てなんて出来る訳無いじゃないか」
「じゃあ、【さん】付けでいいんじゃね?」
「……殆ど面識ないのに」

 とはいえ、敏美さんと呼べるのはちょっと嬉しかった。吉沢は、敏美さんが彼氏と一緒に映っている写真を手に取ると、「こいつが姉貴の彼氏か。冴えない顔してるよな」と言い、指で軽く弾いた。

「お前、彼氏に敏美さんを取られるのが嫌なのか?」
「何だそれ。俺はシスコンじゃないって。姉貴ならもっとイケメンな奴と付き合っているのかと思っただけさ。俺の部屋に戻ろうぜ」
「あ、ああ……」

 本当は、ちょっとシスコンが入っているんじゃないだろうか。俺はそう思いながら、吉沢が操る敏美さんの後ろを付いていった。それにしても、バスタオル一枚で歩く女性ってとてもそそられるよな。腰の括れや、揺れる尻がたまらない。こんな姉ちゃんがいたらいいよなぁ――俺は本気で思った。

「なあ加藤。お前、さっき質問したよな。どうして俺が姉貴の体に乗り移ったのかって」「ああ」
「実はさ。俺、女の体にすごく興味があったんだ」
「……そりゃ男なら誰だってあるだろ。俺もそうだし」
「じゃなくてさ。女の体になりたいって思ってたんだ」
「女の体に? お前が?」
「ああ。女の体って、男よりも気持ちがいいって聞くからさ。で、実際に風呂に入っている姉貴に乗り移ってオナニーしたんだけど、さっき言ったように最高に気持ち良かったんだ」
「へぇ〜、吉沢がそんな風に思っていたなんで驚いたな。じゃあ、目的は達成出来たって事か」
「半分は……な!」
「半分」
「まだオナニーしただけだから」
「それってまさか……」
「そういう事。実は、今日お前を呼んだのはこのためだったんだ」
「ま、待てよ。そんな事したら敏美さんが何ていうか」
「姉貴の意識は無いんだって。お前の童貞、姉貴の体で奪ってやるよ。姉貴の事、好みのタイプだって言っただろ」
「だからさっき聞いたのか」
「ああ。さすがに知らない奴とセックスするのは嫌だからな。姉貴の彼氏も考えたけど、言動が普段の姉貴とは違うだろうから変に勘繰られるのも面倒だと思ってさ」
「俺が……その……敏美さんとやるって事か」
「へへ、したいだろ」
「そりゃそうだけどさ……」

 まさか敏美さんとセックスするなんて――。
 でも、中身は俺が知っている吉沢なんだ。体は違えど、これって男同士って事じゃないか?

「何、躊躇してるんだよ」
「だってさ。体は敏美さんだけど、お前はお前じゃないか。男同士って考えたらやっぱり……」
「へぇ〜。この体を見て、そんな事が言えるのかなぁ」
「なっ!」
ツレの姉1-3

 吉沢は、敏美さんの手でバスタオルを解くと、何も身に着けていない女性の体を露にした。理想的な胸、そしてバスタオルを巻いていた時よりも更に括れが強調されたウェスト。更には滑らかな曲線を描く下半身と、薄っすらと茂った何も付いていない股間が女性の体であることを強調していた。
 理性が働き、咄嗟に目を逸らそうとしたが、それよりも強い欲望が視線を支配し、敏美さんの体をマジマジと見つめてしまった。

「下半身は素直のなのにな。大人しく俺とセックスしろよ。姉貴の体、好きにさせてやるからさ」

 敏美さんの声で吉沢が喋っている。これが本当の敏美さんなら、何の躊躇も無く飛びついているのに。どうして吉沢が乗り移っているんだよ――そう思っていると、敏美さんの体がゆっくりとベッドに上がり、大きく足を開いて仰向けに寝転がった。そして、俺の気持ちを大きく揺さぶる言葉を口にした。
ツレの姉2-1

「俺とやるのが嫌なら……私が代わりに喋ってあげる。ねえ加藤君、これならいい? 私とセックスする気になった?」

 その、敏美さんとしか思えない喋り方に、ぞわっと寒気が走った。